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【人事向けお役立ちコラム】退職代行業者から連絡が来たらどうすればいい?

ゴールデンウィークに入りましたが、ニュースでは、新入社員が早くも退職した、という話題が出ています。

SNSでは当事者らしき人が発信したり、人事が嘆いていたりと、新入社員を受け入れている会社の人事の方は、他人ごとではないと危機感を感じられているのではないでしょうか。

社会人経験の浅い新入社員ほど、退職は言い出しづらいものでしょう。本日は、自分への教訓を含めて、退職代行業者から連絡が来た時の対応について考えてみたいと思います。新入社員がゴールデンウイークに退職代行業者に相談し、休み明けに電話がかかってくることもあると想定し、しっかりポイントを押さえておきましょう。


退職代行業者とは

退職代行とは、従業員本人に代わり、勤務先に退職の意向を伝えるサービスのことです。エン・ジャパンの調査※1によると、退職代行サービスの認知度は72%。20代は8割以上が「知っている」と回答。若い世代ほど、認知度が高い結果になっていますが、昨今の報道で、全世代へ知名度が上がっていると思われます。
退職代行を使う理由は、退職を言い出しにくかったから、すぐに退職したかったから、人間関係が悪かったから、パワハラやセクハラの被害に遭っていたから、など多岐に渡ります。引き留められる煩わしさなどを、金銭で解決し、即日退職したいという気持ちがあるように感じました。

「退職代行サービスを利用したことがある」と回答した方に伺います。退職代行を利用した理由を教えてください。(年代別/複数回答可)

資料出所:エン・ジャパン株式会社."7700人に聞いた「退職代行」ー『エン転職』ユーザーアンケートー".2023/10/31

※1:エン・ジャパン株式会社."7700人に聞いた「退職代行」ー『エン転職』ユーザーアンケートー".2023/10/31

退職代行業者からどのような手段でどのような連絡が来るか

ある日突然、会社の電話に連絡が入ります。
「お世話になっております。退職代行サービス●●の△△と申します。御社の××部に在籍されている****さんより、退職の意志があり、ご連絡させていただきました。つきましては、有給消化後、●月●日を持って退職希望の旨、お伝えいただいております」
不運にも電話を取った人は、とても驚くかと思います。

取るべき手続きについて

あわてずに連絡先を確認、折返し対応とする

その場で回答するのではなく、「確認して折返しをさせていただきますので、会社名とご連絡先、ご担当者名を教えていただけますでしょうか。」と折返し対応です。代表電話にかかってくるケースもあれば、人事部に直接かかってくることもあります。これだけ話題になっていることから、退職代行業者からの連絡があるかもしれないことは、事前に電話を取る部署に周知しておく必要があると思います。

退職代行業者の属性を確認する

退職代行サービスを提供しているのは「弁護士事務所」「退職代行ユニオン」「民間の退職代行サービス」に分けられます。連絡先を聞いて電話を切ったら、まずその退職代行業者についてインターネットなどで調べ、どのカテゴリーであるかを確認します。近年は、サービスニーズの高まりや料金体系(一般的には3~5万円程度)を含めた依頼のしやすさから、民間の業者の参入が増えています。一方で、弁護士事務所の場合は、本人に代わって代理人として意思表示と交渉ができるため、かなり強い法的効果を持っていると思われます。その分、依頼する料金なども高くなります。

労務関連の専門家や法務部との連携

契約している社労士や弁護士がいる場合、退職代行業者から連絡が入ったことを連絡することが望ましいと思います。特に相手が、弁護士事務所だった場合、こちらも法的交渉を対等にできる状態を整えます。法務部との連携、顧問弁護士との連携が必要です。

本人の意思表示であるかどうかを確認する

社員と退職代行業者との間に契約関係があるのか、委任状や契約書の提示を求めます。エビデンスのないまま、こちらがそのまま動くことは危険です。また、どこまで委任されているのか(意思表示だけなのか、条件交渉を含むのか)の確認も大切です。民間の退職代行業者の場合、法的な代理人資格を得ることはできません。有給消化などの退職条件交渉や申入れがあったとしても、応じる必要はないです。

回答書を作成する

退職代行業者を介在したやり取りになるため、回答書として書面を準備します。できるだけ早いタイミングで人事担当者から連絡するのがよいでしょう。

即日退職は認められるか

多くの退職代行業者は、ユーザーに向けて「即日退職可能」とPRしています。しかし、民法では期間の定めのない雇用契約の解約について、「雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と規定されており、社員から退職の申し入れがあった場合、2週間後に退職することになります。したがって、退職代行業者より「今日退職します」と連絡があっても法的に応じる必要はありません。また、就業規則で退職は1か月前申入れるなど、期間を定めている場合はそちらが優先します。

引継ぎのために出社してもらいたい場合

上記民法の規定から、即日退職を認める必要はないため、引継ぎのために出社を要求することは問題ありません。しかし、退職代行業者を使っている以上、本人が出社して対応してもらえる可能性は極めて低いでしょう。強引に引継ぎを求めることは、SNSで悪口を書かれるなど、会社のレピュテーションリスクにも繋がりかねないため、退職代行業者をうまく使って、円満な解決をしていくことが良いのではないかと思います。

社内のルールに沿って、退職手続きを行う

退職が決まったら、退職届の提出を依頼します。本来的には、当事者へ依頼し、当事者から直接提出してもらうのが望ましいです。どうしても難しい場合は、退職代行業者を経由して連絡し、提出は本人からという形が良いと思います。(想像するに、退職代行業者は退職届作成や提出のサポートなどを行っているはずです)また、PCや社用携帯電話など、貸与品の返却、保険証の返却、各種アカウントの有効期間の通知など、通常の退職手続きを進めていきます。基本的に、退職代行業者は退職の意思表示に関する代行業務をしていると考えられるため、離職票や源泉徴収票の送付は、やはり本人に直接送ることが望ましいです。

リファレンスチェックが来たらどうするか

本人が退職後、転職先からリファレンスチェック(バックグラウンドチェックともいう)が来ることもあるでしょう。これは人事として応じないという判断をすればいいのではないでしょうか。退職代行業者のサイトでは、リピート率の高さをPRしているところもあります。ニーズに伴い、競合も増えているため、私は価格競争になっているように見えました。業界最安値とうたい、そのままLINEで相談に移行するフローになっており、ユーザーから見ると気軽に使えるサービス設計になっています。もちろん、人それぞれの事情はあるものの、退職代行を活用する人は、次の会社でも同じように退職代行を繰り返す可能性もある、と考えるべきです。

退職代行に至る前に手を打つべし

来てしまったものは仕方ありませんが、なぜ本人が退職代行業者を使わざるを得なかったのか、会社は深刻に受け止める必要があります。採用選考時のやり取りや、配属希望とその結果、配属先での様子、1on1で話していたことなどから、ミスマッチの原因をはっきりさせることが重要です。パワハラや上司からの強い引き留めなどが理由になっているケースもあり、会社側の意図と本人の受け止め方に乖離がある事例もありそうです。また、何か不安に感じた時の相談先が不十分だったことも考えられます。
特に日本の企業では、採用の責任の所在が不明瞭です。入社後は育成を基本的に現場に任せる方針の会社も多く、力を発揮できていない様子を人事がキャッチアップするのに時間がかかることもあります。また、新入社員にとってはファーストキャリアとして初期配属がかなり重要となりますが、上司との相性が悪かった、未来の成長のため希望と異なる領域へ配属した、という事象については避けられるのではないかと思います。

近年、日本でもジョブ型雇用が普及してきました。そして、それに呼応するように「配属ガチャ」という言葉も若手から嫌われる概念として浮かび上がっています。専門性を高めていくことが良しとされる風潮の中、キャリアオーナーシップは自分で持つことが当たり前の時代です。若手の頃から、自己選択性のあるキャリアプランを用意すべく、人事は力を試されていると思います。

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