見出し画像

【映画】陰陽師0(2024年)

山崎賢人さん主演
映画「陰陽師0」を観ました。

言わずと知れた夢枕獏さん原作の小説
「陰陽師」の安倍晴明と源博雅の物語ですが
今回は陰陽寮で学ぶ若き日の安倍晴明が描かれているオリジナルストーリーとのことで
賢人さんが清明をどう演じるのかとても興味がありました。

〈物語〉

時は平安時代、呪いや祟りから都を守る「陰陽寮」は陰陽師の学び舎であり
行政機関として政治の中心でもありました。
若き日の青年・安倍晴明は変わり者とされつつも天才と呼ばれるほどの呪術の才能をもっており
ある日、貴族の源博雅から皇族の徽子女王を襲う怪奇現象の解明を頼まれ真相を追うことになるも
やがてふたりは凶悪で壮大な陰謀に巻き込まれてゆく…という物語でした。

〈慕われ続ける安倍晴明〉

朝廷に仕え宮廷の儀式を司るほか
占いや暦作りなどを行う陰陽師は公務員のような職業のようですが
獏さんの描く清明は式神を操り、呪を唱え博雅とともに人間の怨念が生み出す「鬼」の呪いを鎮めていきます。
人間に興味はないけれど博雅の人間味に惹かれ、彼とともに鬼から平安の世を守ろうと奔走する清明。
獏さんの描く清明はとても魅力的です。
38年続く小説の主人公はこれまでに何度も映像化されています。

人間の心の不安が闇に変わり人間の恐怖を煽り「鬼」を生んだ平安の世。
現代のニホンにも鬼とは言わずとも
株価は上がっても円安・物価高とまだまだ経済の低迷が続き明日への不安がネットの炎上騒動、いじめ、事件や事故、政治不信に繋がり、形のない恐怖を生んでいます。
だからこそ鬼や不安、恐怖を鎮める物語に想いを馳せ清明のような人物とその強さが慕われ続けているのかもしれません。

〈瞳で演ずる〉

今回、山崎賢人さんが演じた清明は陰陽寮で学んでいる若き清明。
襲いかかるモノと闘うアクションシーンは期待通りでしたが
自身に絶対的な自信があると同時にどこか諦めてもいる清明を
表情や声色をあまり変えず
瞳の動きで心の移り変わりを表現していた賢人さんはとても素晴らしかったですね。

博雅を演じた染谷将太さんも清明に
「良い漢だ」
と言わせてしまうほどの情を持つ博雅を
そして愛しい人を想い続ける優しい博雅を愛らしい瞳の動きで見せてくれました。

他のキャストの皆さんも実力派揃いで見応えあるエンターテイメント作品になっていたと思います。

〈「ザ・日本映画」だとするなら〉

実は私は
2001年の映画「陰陽師」の
「野村萬斎版安倍晴明」にハマって
夢枕獏さんの小説に流れ着きました。

なので私の晴明像はもう、なんというか、
アレなんです笑(色々なご意見はあると思いますが)。
そのためどうしても比べてしまいますが…
萬斎さんの演じた清明の流れるような所作
鬼と敵対するアクションシーン
会話と呪を唱えるときの声のトーンの使い分けなどはどれも素晴らしいと思いました。
さらに
座って酒を飲む場面や走る場面
ただ立っている場面でさえ
着ている着物、衣装がとても美しく映っていました。
もちろん狂言師である萬斎さんが計算し尽くしていたと思いますがそれには世界観を確定しイメージを深める大きな説得力もありました。

山崎版清明では
着物が美しく見えるような所作は少なく
立ち姿はとても美しいのに
歩くときの肩の動きや酒の飲み方など
若い清明という設定はあるにしても…

つまり
平安時代の人には見えなかった。

当時の人の動きや
衣装の細かな映りなんて別にいいじゃん

という声も聞こえてきそうですが
この「陰陽師0」は「ザ・日本映画」としておそらく
Netflixなど海外視聴者を意識して制作されたのでしょうし、佐藤嗣麻子監督は資料研究もされたとは思いますが
平安時代の日本人を世界に届けるのだとしたら
細かな所作の美しさや魅せ方をより考慮しても良かったのではと思います。

〈存在が伝わらない〉

清明をはじめ多くの学生陰陽師が陰陽道を学んでいるシーンは
やや「ハリーポッター」感が強く
人間の深層心理こそ闇であるという視点は獏さんの小説と同じに感じましたが

映画冒頭の丁寧な語りで陰陽師の生業と平安の時代を説明していたにもかかわらず
清明は何のために存在しているのかあまり伝わってきませんでした。

それはやはり今回の物語は
陰陽師同士の話のみで
清明と庶民とのエピソードがなかったこと
清明の屋敷の場面がなかったこと
そして何より
「鬼」が出なかったことが
清明の存在をボンヤリとさせてしまったかもしれません。
オリジナルストーリーのためかエピソードは、少なかったですね。。

〈特撮技術を使いたいだけ?だとしても〉

佐藤監督、そして獏さんの映像化への熱い想いはインタビューで伝わり
実際に劇場で観てとても大切に作り上げられた作品だと感じました。

しかし
私は劇場の最後尾のシートに座っていたのですが
前半は清明が抱える苦しみを抽象的に描かれたシーンも多くそれがやや退屈だったのか?
途中で席を立つ方(10名くらい)も見られたので
欲を言えば作品展開の「動」と「静」のバランスにもう少し工夫が欲しかったですね。

また、
映画が終わってエンドクレジットに流れるBUMP OF CHICKENのメロディで一気に世界観が変わりました。
BUMPの力強いメロディは新たな陰陽師の世界を作り上げるきっかけになるかもしれません。

けれどやっぱり
余韻を味わう間も無く平安時代から現代に強制的に連れ戻された感じでしたね笑(早かった〜)
私は鑑賞後の余韻もまた作品だと思うので
もう少し源博雅の笛の音を味わいたかったですね。

さらに厳しい言い方をするなら
この映画企画は
ホントは映像特撮技術使用が優先で
「陰陽師」や「安倍晴明」はただ利用されただけなんじゃなかろか…という疑問も残りました(失礼)。
そう思ってしまったのは
繰り返しますがそれだけ清明の存在が伝わらなかった…ということになるかと思います。

〈シリーズ化を期待して〉

しかしながら
獏さんも企画に協力されたとのこと
さらに「0」とあるのでおそらく、間違いなく
今後シリーズ化して賢人さんの清明が観られると思います。
エンタメ性を保ちながら
さらにより深く、鬼をそして鬼の顔をした人間たちと対峙する安倍晴明を纏った賢人さんが観られることを今後も期待して続編を待ちたいと思います。



最後に余談ですが…

2024年現在
日本の30代の男性俳優では
私は山崎賢人さんはルックスも演技も美しい俳優のひとりだと思っています。

賢人さんには今後もより多くの作品にチャレンジしていただきたいですね。
ちなみに賢人さんの作品で一番好きな作品はTBSドラマ「アトムの童」です。
特撮無しのドラマ。とても良かったですね。


#創作大賞2024
#映画感想文
#私の推しキャラ

この記事が参加している募集

私の推しキャラ

映画感想文

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

サポートいただけましたら詩(エッセイ)作品集の出版費用の一部として使用させていただきます★ どうぞよろしくお願いします。