3月15日

 短期の仕事が決まったところから、一度職場へ来るように言われたので渋々出掛ける。本来の出不精に、コロナが作用して更に拍車がかかり、一度の外出でより多くの用事を済ませようとするケチ根性が定着してしまった。
 今月に入って、何度か携帯に着信があった。留守番メッセージはなく、複数の番号の所在は、全て同じだと調べてわかった。
 ただでさえ携帯を携帯しない。自宅にいれば尚更で、そもそも電話嫌いなのと、電話を自主的にかける機会がほぼ皆無なので、料金設定も通話に有利になっていない。以前かけ直したものの、担当者が不在で結局連絡が取れず、赫々然々で自宅へかけてもらうよう伝えたのだが、結局携帯にかかってくる。着信に気付くのが深夜になり、流石にかけ直すことも出来ないのでメールで同じことを伝えるが、見ていないのかどうなのか、相変わらず携帯に着信履歴が並んだ。
 去年の半ばに登録した行政の仕事に関することだとわかっていたので、短期の仕事を受けたものの、話次第では断ってこちらを選択しようと考えていた。前者を受けると伝えたが、不採用になっている過去と、厄介な上乗せ業務がネックであり、モヤモヤは相変わらず消えていない。将来的に、自分がしたい仕事が後者である…ということも、迷う原因であった。
 一旦仕事に就けば、全身全霊を注ぐ癖がある。代わりなんていくらでもいるのに、自己責任に捕らわれて、情に絆されて、何度もチャンスを失ってきた気がしている。その時は迷わず決断したが、結果的に自分の首を絞めることになったのは一度や二度では無かった。仕事というものを…もっと利用しても良いのかも知れないと思い始めている。
 繋がった行政の電話は、当初希望した職種とは違った。資格や免許の関係で、現在その仕事を受けることが困難であると伝えると、翌日、希望職種に空きが出そうなので一度来庁するようにという電話がかかってきた。ちゃんと自宅に…。
 短期の職場と同一方向にある庁舎と、何度目かで期限切れになった求職者マイページの再開手続きをとるため、ハローワークを含めた3軒を、この日は梯子することにした。
 最寄り駅から歩かなければならない短期の職場へのルートを確認するため、駅周辺のコインパーキングを探し、グーグルマップを頼りに歩いて向かうと、迷子になって15分遅刻した。
 ハローワークの駐車場が大渋滞で入れず、しかも入場方向が制限されて、道を探しているうちに迷子になって、何度も同じ道をぐるぐる回る羽目になった。
 最後の庁舎に辿り着いたときには黄昏時で、職員の対応は悪くなかったが、結局聞き取りされただけで、求人の有無は不明のまま。一件決まりかけ(ほぼ決定)の仕事がある…と伝えたところ、「今日中に調べて電話します」と、慌てていた。あれ?希望職種に空きが出そうだったのではないのか?
 やっと帰れる…と母にラインを送った直後、図書館の本の返却と、レッスンのために借りているホールの支払いに行かなければならなかったことを思い出して落胆した。
 久々の好天で、朝から布団を干して行ったことを、帰ってから思い出し、花粉対策の布団掃除機の手間も、帰って初めて思い出した。
 くたくたになり、無職になって以来、一日か二日委ねただけの夕食の準備を母に任せ、久々に夕方、犬と爆睡した。
「今日中に調べて電話します」の電話がないまま、気付けば20時を過ぎていた。先に目覚めた犬が、無言で何度か起こしに来たが、人間の方がしぶとく寝ていたのだった。
 食事のために階下へ下りると、30分前に携帯に着信を示す履歴があった。
「電話は自宅にお願いします」と再三伝えたが、一体何処まで有効なのかわからない。放置したまま食事を取り、間もなく終わる…という頃、携帯が鳴ったので出た途端、何が悪かったのか電話は切れた。

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