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専門家目線になる漢方薬の使い分け⑩ダイエットに使える漢方薬〜防風通聖散

中医学で肥満を考える


中医学では、胃腸のはたらきが正常でないため、食べた飲食物が体の栄養素として利用されずに蓄積してしまうことが「肥満」となる原因だと考えています。



胃腸の働きが低下してしまう3つの要因


胃腸の働きが低下する原因には、大きく分けて次の3つのタイプがあります。

①食べ過ぎや食事のかたよりで飲食物がスムーズに栄養物質にならずにネバネバしたものとなって蓄積している  

②血のめぐりが悪いため、栄養素がスムーズに全身に運ばれず、局所に蓄積している

③食べる量は普通か少ないが、食べ物を消化し、栄養素を運ぶ力が不足しているために結果的に利用できない栄養素が蓄積してしまう


『痰湿内薀(たんしつないうん』タイプ


①のタイプは、中医学の専門用語で『痰湿内薀(たんしつないうん)』と言います。


この痰湿内薀タイプ食事の特徴としては、

●暴飲暴食・美食
●油っこいものや甘いものの摂り過ぎ 
●不規則な食事時間
●早食い

など、食事の内容に偏りがあったり、食事時間に問題があることが特徴です。


痰湿内薀タイプの方が太るメカニズム


食事の内容や食事時間の偏りで、慢性的に胃腸に負担がかかり、脾(胃腸)のはたらきが低下

飲食物がスムーズに水穀の精微(栄養素)に変化せず、『痰湿』となってからだの各部位に蓄積
*中医学では、脂肪も痰湿と考えます

痰湿の蓄積により、さらに代謝が悪くなり脂肪(痰湿)が蓄積するという悪循環に陥る


このタイプは、基本的には、「食べ過ぎ」と「食べ方」を見直す必要があります。特に、早食いは、満腹感を得られなくなり必要以上に食べてしまうことになるため、意識してゆっくりと食べる癖をつけましょう。

当てはまるものが多いと、痰湿内薀タイプかも!


✔︎  基本的にはよく食べる
✔︎  一日中身体が重だるい
✔︎  動くと疲れやすい
✔︎  頭がぼーっとしてすぐに眠くなる
✔︎ 暑がり
✔︎ 便秘気味
✔︎ 舌苔が厚い

痰湿内薀タイプの食生活の見直しと漢方薬


よく噛んで、時間をかけて食事をし、ビタミン・ミネラルをしっかりとり、胃腸が十分に力を発揮できる状況を作る事が大切です。


基本的には、食事の内容と食事の仕方を見直す必要があるのですが、このタイプをサポートする漢方薬があります!

それは、

防風通聖散


という漢方薬です。


防風通聖散が合うタイプは?


防風通聖散は、いわゆる「メタボ」体質に合う漢方薬です。

防風通聖散が合うタイプの方は、体格はがっしりしていて、お腹周りに脂肪がついているタイプで、体内に熱がこもりやすいため暑がりです。

また、頻繁にのどが渇いてお水やお茶、ジュースなどの冷たいものを飲みたがる傾向にあります。


胃に熱があるために食欲は旺盛で、食べ過ぎてしまうことも。ただ、熱が胃腸内にあることで便秘がちです。

このような方では、ふきでものや口内炎もできやすくなります。



防風通聖散は、太り気味で蕁麻疹やニキビができやすい方にも適しています。

血圧が高かったり、コレステロール値が高いと言われている方にも良いでしょう。


反対に、手足やお腹が冷えやすかったり、便が下痢っぽい人には不向きです。


防風通聖散を選ぶなら『便秘』であることが大前提



防風通聖散は『便秘があること』が使用する目安となります。
他の項目が当てはまるようでも、便秘がちでないなら使用しないで下さい。


防風通聖散には、18種類の生薬が入っています。一般的に、生薬の数が多いほど、急性症状ではなく体質改善的に使われることが多く、ダイエットで使う場合には、防風通聖散も1週間程度で何らかの効果があるというものではありません。


防風通聖散をダイエットのサポートとして飲む場合には、少なくとも、1ヶ月は服用して体調の変化をみる必要があります。

ただし、お通じは比較的早期に改善することがありますので、飲んでも便秘が改善しないという場合には、体に合っていない可能性があります。


ダイエットに漢方薬を使う上で最も大切なこと


漢方薬はあくまでサポート、体を変えるのは食事と運動です!

大切なことは、漢方薬を飲むだけで痩せるということはなく食事と運動をしっかりと見直した上で、漢方薬をサポートとして飲むということ。

食事や運動を全く変えずに、漢方薬だけを利用しても効果は出ません。

防風通聖散は【別名】でも広く販売されています!



防風通聖散は、小林製薬から「ナイシトール」クラシエ製薬株式会社から「コッコアポEX錠」などと別の名前でも販売されていている漢方薬です。


防風通聖散と薬剤性肝障害


ただし、体質に合わない方が漠然と服用すると、予期しない副作用が起こることもあります。

実は、薬剤性肝障害が報告されている漢方薬の中で防風通聖散が最も多く肝障害の報告があるのです。

肝障害は初期にはほとんど症状が現れません。

薬を飲み始めて、全身のだるさや皮膚のかゆみなどが出たらすぐに使用を中止しましょう。

また、服用する場合には、必ず薬剤師や登録販売者などの専門家にご相談の上、ご購入ください。

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