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小説OJTポリス(警察学校編06)

 英梨学級の助教である巡査部長の浦賀好子、拝命から5年で警察学校勤務となっている。警察学校に異動する前の所属は久松警察署の地域課、すなわち「ハコヅメ」の女性警察官であった。浦賀は学生時代からミスコンなどにも応募するなど自己顕示性、自己主張の強い女性であった。ミスコンに応募するだけあって、その存在は周囲から注目されていた。「ハコ」つまり交番で立番勤務というシフトがあるが彼女が立番する時には、必要以上に通行人が交番の前を通るという現象が度々起きていたことからもその人気のほどが窺える。

 浦賀巡査部長がこのハコヅメ時代に上司として勤務していたのが英梨警部補だったのだ。この二人の確執は浦賀巡査部長が当務(24時間勤務)の時に発生した浦賀が被害者となり得る公務執行妨害容疑事件が契機だった。事案の詳細は紙面の都合で割愛させていただくが、要は当然事件として立件されるべき事案であったにも拘らず、事件当時宿直長をしていた英梨の独自判断により本件は闇から闇へと葬られたことに対して浦賀は英梨に対して恨みにも似た言いようのない怒りを覚えていた。

 「縁は異なもの味なもの」「呉越同舟」とはよく言ったものである。まさかこの二人が警察学校という同一の職場で、なおかつ担任教官と助教という立場で再び相勤となろうなどとはお互い夢にも思わなかった。

 ここで「警察手帳紛失事件」について簡単におさらいしておこう。これまで登場してきたプレーヤーは

  ◆ 被害者・・英梨学級の某初任科生

  ◆ 警察手帳の貸与・保管に携わった関係者・・被害者と同じ学級の多田総代、同然副総代。助教の浦賀巡査部長

 の4人である。なお、警察手帳が紛失したと判明するまでどれくらいかかったのか?という話であるが前回の点検・教練授業から紛失が明らかになった時点まで7日間が経過している。 

 言い忘れたが、警察学校では入校している初任科生に第一線での勤務を模擬体験させるために宿直勤務を命じている。この宿直勤務は当番制で、概ね月に2回程度が当たるようシフトが組まれている。また、初任科生オンリーで夜間勤務させるわけにはいかないので、教官も当直勤務を行い学生を指導する。こちらは夜間勤務手当が支給されるのだが、第一線でそれこそ「生き馬の目を抜く」ような業務に忙殺されても、警察学校教官として学生相手に「ままごと」勤務しても同額の宿直手当が支給されるので、公務員はホント恵まれているとしか言いようがない。

 話がそれたが、警察手帳が紛失するまでの7日間に警察学校を場とする宿直(夜間)勤務した人物、すなわち警察手帳が保管されている金庫にアクセスしようと思えば出来た人物は当直教官だけでも14名、当直学生を入れると90名弱が存在することがおわかりいただけたかと思う。

(つづく)


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