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かんちがいじゃないサンダル

「ねえ、アンタ」と言われて驚く。
「これ、さっき履いてたやつ?」

 食事をしたあと、友達がうちに寄ってくれた。
 せっかくだからバルコニーを見てゆくかと誘って、サンダルを渡したところだった。

「そ、そうだけど……」

 ま、まさかわたしが履いてた汚いサンダルを履きたくないとか?
 アンタ、そういうことなんにも気にしないタイプのはずじゃ……
 何を言われるかと驚きながら、視線を上げる。

「これ、めっちゃ履きやすいね!!」
「……だよね!?」

 もちろん、汚いから文句だとかそういうわけもなく(わたしの友達は基本的にみんな、なにも気にしないから心地がいいんだと思う。無責任なくらいに)
 けれどもやっぱり、驚いてしまった。

「そ〜〜〜なんだよ!! わたしも履きやすいと思ってたんだけどサ!」

 去年、ZOZOTOWNで買ったサンダル。
 定価が3,000円くらいで、セールで1,000円になってて、お得だと思って買っちゃったんだけど。ごくごく普通のつっかけで、
 でも、妙に心地が良くて、やわらかくて、すうっと足に馴染むような感じがして……そのへんで気楽に履くように買ったのに、このサンダルでずいぶん遠くまで出掛けた。何度も。

「でも、気のせいかと思って……」

 そうは言っても効果なものじゃないし、形状も靴底にベルトが2本の構造で、サンダルだけでそんなに歩きやすさ変わるか!? って、なんだか疑っちゃってさ。だって、ゾゾで1,000円だよ?
 そんな気がするサンダル。気のせいのサンダルだと思ってたワケ。

「気のせいって……そんなわけないでしょ」

 よく晴れた、5月の午後の空だった。
 友達は、ごくごくふつうに言っただけだったのに、なんだかスコーンと抜けるようなさわやかさだった。
 そうか、気のせいじゃない。
 わたしは心地よさを感じてよかったのだし、自分の心地よさを信じてよかった。
 そういえばひとつひとつのあれやこれを「気のせい」という言葉で、わたしは疑いすぎてはいなかっただろうか。疲れているのも、やる気が出ないのも、全部気のせいだって。自分の心身や感覚を、ずいぶん無視してここまで辿り着いてしまったような気がする。

「どこで買ったの?」
「ゾゾで。1,000円だった」
「マジで? わたしも買うわ」

 そっか、買っちゃうに値するくらい良かったのか。1,000円だしね、と思ったらなんだか嬉しくなった。
 これから、このサンダルはあなたとお揃いになるかもしれない。
 心の中では、もうお揃いだった。

 いやでも、セールで1,000円って去年の話だったしなァ。と思ってゾゾを見たら、いまもまだ1,000円で、うれしい反面わらってしまった。定価の意味よ……

 歩き方が上手くないせいか、去年買ったサンダルは、爪先がだいぶボロボロになってしまった。
 古いほうをベランダ用にして、今年も新しいサンダルを買い足すことにした。
 色は、やっぱり悩んで白。

 今年も、このサンダルでたくさん歩いて、遠くまで行こうと思う。
 そしてそれは去年より勇敢で、穏やかで、足元から守られているような気持ちが、約束されているのだった。


▼勘違いじゃないサンダル

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