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【メンバーシップ】「遺伝」した才能を伸ばす「環境」の力

人間の「その人らしさ」いわゆる「パーソナリティ」は、遺伝と環境によってつくられると言われています。

気になるのは、その割合。

どうやら、遺伝と環境が50%ずつと見られています。

このような話を聞くと、「あーやっぱり、環境って大切なのね」となるのですが、気になるのは、「環境って何?」という話じゃないですか。

もちろん、人によって与えられた環境が違うので、「これが私の環境だ!」と言われたらそれまでなのですが、もうちょっと踏み込むのであれば、環境には「共有環境」と「非共有環境」の2種類があるのです。

乱暴に説明するのならば、「共有環境」というのは「家庭環境」のこと。

パーソナリティの研究は、多くの場合「双子」を対象として行われていますから、その双子ちゃんが同じ家庭で育てられてるのなら、それが「共有環境」となる訳です。

一方「非共有環境」というのは、「家庭以外」の環境のこと。

双子ちゃんが小学校に通い始めたら、違うクラスに所属して違う先生、友達と環境を共にする。

もしかしたら、放課後の習い事は別々の教室に通うかもしれない。

このような共有していない環境のことを「非共有環境」としています。

さて、それらの環境の違いがパーソナリティにどれくらい影響をするのでしょうか。

驚くことに行動遺伝学の知見では、

「共有環境が5%で、非共有環境が45%である」

と見られているとか。

ということはですよ、「子どものパーソナリティにおいて学校ってめちゃくちゃ大切な役割じゃん!」ということになってしまう。

もっと言えば、「家庭の育て方が云々」というのは、子どものパーソナリティには、ほぼほぼ影響を与えないということになる。

確かに、ぼくが収集してきた情報にも、

就学前の子どもがいる家族をサポートしても、子どもがよりよく育っていくという効果があったのは、極端に厳しい環境に置かれていた家族だった。

早期教育にどれだけ力を入れたとしても、中学生頃になるとその効果はなくなった。

というような研究結果がばしばし出ています。

もちろん、「最終的には、何を信じてどのように行動するか」という個人の判断なので決めつけはできませんが、「子どものために…」と頑張る親心は感情としては大切なんだけれど、自己犠牲をして無理する位ならもっと力を抜いてもいいんじゃない。と言えそうです。

▼おそるべき「環境」の力

「だったら、私たちは子どもに何ができるのさ?」ということがぼくも気になりました。

結論は、これまでもずっと主張し続けてきましたが、「環境を整えてあげること」しかできないのでしょう。

本記事では、その「環境を整えること」についてさらに一歩踏み込んで書いてみます。

例えば、こんな研究があります。

アメリカの各地に住む4600家族を対象にして行われた実験です。

対象となった家族に対してランダムに、「家賃補助券」を配りました。

どういうことかというと、「家賃補助券をもらったら、今住んでいる地域よりももう少し裕福な人たちが住む地区に引っ越してくださいね!」と条件を出したのです。
一方、別のグループの家族には、「家賃補助券をあげますが、引っ越しはしなくてもOKです。」としました。

その結果がおもしろい。

「裕福な地域に引っ越した家族の子どもが20代半ばに達したとき。大学進学率や収入が引っ越さなかった家族の子どもを上回った!」

というのです。

「環境を変えたことにより生涯年収でいうと3000万円以上の違いが出た」というから、環境の力恐るべしというところでしょうか。

ちなみに、「環境の力がどのように働くかと?」いうことも、過去記事で触れました。

さらに、こんな調査でも分かります。

ニューヨークの中でも治安の悪さで有名なサウスブロンクスに住む16歳の黒人高校生、ラリー・アユソさんは、バスケットチームに入りたかったものの成績不振で入部を断られ、高校を中退してしまいました。

このままいったら負の連鎖に巻き込まれ…と心配になりますが、アユソさんは幸運なことにスラム街の子どもたちを違う土地に転居させるプログラムに選ばれ、ニューメキシコ州の小さな街に転居できたのです。

そして、中流階級の白人家庭の子どもたちが通う高校へ通い始め、バスケットの才能を生かして活躍するだけでなく、ブレザーの前ボタンまできちんと閉めて登校する、成績優秀な生徒へと変貌を遂げました。

この事例を紹介した心理学者であるジョディス・リッチ・ハリスさんは、

「私たちは、遺伝を手がかりとして、友だち集団の中でキャラを形成していく」

という主張をしたのです。

これも過去記事で紹介したのでさくっとまとめますが、

「別々の環境で育てられた双子の一方だけがピアニストになった!」

なんて事例もあります。

双子ですから遺伝子は共通。

しかし、音楽的才能を手がかりとしてピアニストになったのは、一方の子どもだけでした。

「さぞ、素晴らしいピアノの先生に出会ったことでしょう」と思うのですが、なんと、ピアニストになった子どもは、

『「ピアノの先生に育てられた子ども」ではなく、「譜面も読めない音楽には縁のない親」に育てられていた。』

なんて驚きの結果が出ているのです。

ここで気になるのは「なぜ、同じ遺伝子をもっているのに才能が開花する子どもと開花しない子どもに違いが出るのか?」というところ。

それを次章で紹介しますね。

▼「才能」が開花するしくみ

改めてここまで書いてきた内容をまとめると、「才能が開花するかどうかという違いは、その子どもがおかれた環境による!」という結論に達します。

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