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現役外資マーケターが分析する「ハンドボールが人気になれない理由」| 今すぐ彗星ジャパンを変えよ(約20,000字 全無料公開)

「ハンドボールがメジャースポーツになる」ということは、ハンドボールに携わってきた人全員が一度は見る夢です。
直近、ハンドボール日本代表はアジアNo.1の実力をつけ、自力では36年ぶりとなるパリオリンピック出場決定、東京オリンピックでも男女ともに33/45年ぶりとなる勝利を果たすなどの快挙を成し遂げています。

日韓定期戦2022にて(筆者撮影)

一方、周りの友人に「ハンドボールって知ってる?」と聞いてみれば
「聞いたことがあるような…」
「なんかボール使うよね(そりゃそうだ)」
「宮崎なんちゃら選手っていたよね?(レジェンドスターです)」
「中東の笛のニュースで見たかも(それはもう15年も前のことなんです)」
「体育でやったことあったかな」
などそもそもどのような競技かも認知されていないのが、快挙の裏で依然としてマイナースポーツとして留まる現状ではないでしょうか。

このnoteでは、いつかハンドボールをメジャースポーツにしたいという夢を抱えながら、外資企業で現役マーケターとして働いている私が、あくまで一個人の見解として「ハンドボールが人気になれない理由」をマーケティングの観点から分析し、そして「ハンドボールをメジャースポーツに変えるリブランディングの提案」をまとめました。約2万字、魂を込めて書きましたので、是非最後まで読んでいただけますと幸いです。

少し挑戦的にも聞こえるタイトルとなっていますが、すみません、なるべく多くの人に読んでほしいと思ってつけてしまっただけです…。
特別誰かを否定したいわけでもありませんし、普及活動は綺麗事だけではなく選手・指導者の努力や環境の整備あってのものだとも重々理解しているつもりです。また私自身、消費財のマーケティング経験のみしかないため、スポーツマーケティング・クラブ運営などはまったくの素人であることはご容赦ください。

本noteの内容に少しでも共感できるところがあれば、読んでいただいた後に是非こちらの別アンケートリンク(https://forms.gle/YHKjgEGBVxeNkotW9より、ご意見をいただけると幸いです。それでは本内容に移りましょう。

そもそも「マーケティング」とはなにか、皆さんご存知でしょうか。
よく「TVCMや広告を作る仕事」と思われることが多いですがそれは一部分に過ぎず、実際には
「消費者に選ばれる確率を上げ、使い続けてもらえる”ブランド(商品・サービス)”を育て、継続的に売上・利益を伸ばす仕組みづくり」
という幅広い領域に取り組んでいます。

ハンドボールを競技としてプレーするのも、ハンドボール観戦にいくのも、数多くの選択肢がある中で消費者から選んでいただく必要があり、その仕組みとしてはマーケティングと共通する部分があります。
私は日本のハンドボールを1つの”ブランド”として考えて、より消費者の方から選んでもらえるよう、一貫性のあるマーケティング戦略を通じて育てることで、ハンドボールをメジャースポーツに変えられる可能性があると信じています。

「ハンドボールが人気になれない理由」

ずばり結論から始めると、マーケティング視点から考えるハンドボールが人気になれない理由は下の大きく3つです。
1. WHO: ハンドボール協会が狙いとする”ターゲット消費者”が間違っている。
2. WHAT: ハンドボールが消費者にもたらす”価値・本当の強み”を見出だせていない。
3. HOW: 男子日本代表の名称である”彗星ジャパン”じゃ何も伝わらない。

ハンドボールに携わる全ての人がハンドボールを人気にさせるための何らかの役割を担っていると思いますが、ハンドボール競技界の普及ならびに日本代表の運営を担う日本ハンドボール協会の責任が最も大きいと感じるところです。
ネット上で公開されている協会の過去事業計画書等を拝読するに、普及活動施策1つ1つは真っ当・決して間違っていないと思いますが、全体を通してみたときに私個人としてどうも違和感を覚え、せっかく日本代表の強化がうまくいっている中でもったいなさを感じます。
それはどこからなのか、言語化していきたいと思います。

簡単に日本ハンドボール協会の方針を過去3年分の事業計画・事業成果報告書を抜粋する形で次にまとめてみました(万が一、優先順位や内容の欠落があれば申し訳ないです)。

【ビジョン】
ハンドボールを通じてスポーツの未来を創造し続けます
【ミッション】
- ハンドボールが日常にある環境をつくることで、すべての人の中にハンドボールを醸成します
- 全ての人々に感動と希望を与え、皆が誇れるハンドボール日本代表チームになります
- 持続的成長を実現できる、透明性とリスペクトあふれる組織になります
【市場課題】
ハンドボールの国内競技人口10万人のうち75%ほどが中高生で占める。逆に言えば高校卒業時で競技をやめてしまう人が8割程おり、各年代ピーク約1万5千人が競技者だったとして、少なくとも20歳から39歳までの20年分、約30万人が競技をやめてしまっている。
【消費者ターゲット】
競技をやめた休眠層(30万人)
【具体的施策・取り組み】
1. 魅力ある日本代表・ハンドボールリーグ
・ SNS での積極的な発信
・試合動画配信/ハイライト/プロモーション
2. 生涯にわたる楽しみの提供
・自分の試合記録をまとめた”MyHandBall”システムでモチベーション維持
・社会人の大会の整理・仕組みの整理

3. 中学・高校カテゴリーの充実

2021・2022・2023年度 日本ハンドボール協会 事業計画より一部引用・要約
2023年度 日本ハンドボール協会 事業計画より引用

事実、SNS発信での日韓戦チケット完売・#彗星ジャパンのトレンド入りなどの実績も確かに残しており、またYoutube日本ハンドボールリーグ公式チャンネルなどで高い質の試合を簡単に見られるように大きく改善しました(私も1消費者として感謝の気持ちでいっぱい)が、皆さんは上記の施策を続けていればハンドボールが近くメジャースポーツの仲間入りできると思われますか?
残念ながら私は現状の施策では、可能性をあまり感じません(感謝の気持ちは何処へ)。

ここで1点目の理由「WHO: ハンドボール協会が狙いとする”ターゲット消費者”が間違っている。」について説明しましょう。
たしかに80%の高校生が進学を機に競技をやめてしまっていることは大きな課題です。ハンドボールをやめた休眠層が全国30万人いて、もし彼ら・彼女らが1000円でもお金を落としてくれたら約3億円の収支と、予算が少なく懐事情が厳しいハンドボール業界からしたらLow hanging fruit (簡単に手に入る成果) に見えるのもおかしくはないでしょう。ただ「ハンドボールをメジャーに変える」という視点では、この30万人という層は十分であると本当にいえるのでしょうか

ハンドボールが伸び悩む原因の1つとして、ハンドボールの競技内容・大まかなルールを認知している人自体が、基本的に競技者(とその家族・周りの友人)に限られてしまうことが挙げられます。各年代1万5千人という競技人口も、中高生1学年約100万人の中で極端に言えば各年代の1.5%にしか競技性が認知されていないことになりますし、30万人という人数も日本国民からすれば0.3%前後に過ぎません。

認知率が1%前後しかないもの、世の中で言えば…昔発売されたキュウリ味のペプシとか、ドラえもんののび太くんのお母さんの名前が「玉子さん」というらしいとか、そのあたりでしょうか(全国の玉子さんファンの方々すみません)。

その程度の認知率ままで、メジャースポーツと呼べる未来はくるでしょうか。ハンドボールを1度やめた休眠層を呼び戻すことに施策を注目させることは一定の効果がもちろんあるでしょうが、水漏れするバケツの穴を防いでいるに過ぎず、ハンドボールのそもそもの認知率自体を劇的に上げることには貢献できていません。

ちなみに日本ハンドボール協会資料でも過去引用していましたが、高校生の部活の競技登録者数の最新データを見ると、依然としてハンドボールは11位であり(思ったより高いような全然低いような)、Top3に構えるサッカー・野球・バスケと比較すると1/3 ~ 1/4程度、バレーや陸上と比較すると約半分程度の規模のようです。

令和4年度 高体連・高野連 統計資料より作成

実際の競技認知度はどうなのか、私個人で400人を対象に定量アンケート調査を実施してみました(3万円強かかりました)。
競技経験率・認知率についてまず見ていきましょう。

19歳~54歳の男女計400人回答 (Freeasyパネリスト アンケート調査)

アンケート上ですと80%以上の人がハンドボールがどんな競技かをそもそもわかっておらず(競技未認知層)、メジャースポーツとなるまでの道のりはやはり長そうです。
競技経験者も前述の想定に近い1%ですが、ハンドボール協会がターゲットとしている「以前競技を経験してやめてしまった休眠層」はここに当たります。すなわち今の施策は1%の層のみをメインターゲットにしたものということになりますが、その施策は未認知層80%に届くものなのでしょうか。
1つ別の新たな発見としては、競技認知層(18%)のうちの大部分(14%)は実は体育などでプレーしたことがきっかけであることが今回のアンケートよりわかりました。

さらに詳しく見ていきましょう。西口一希氏の「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」という書籍で紹介されている”9セグマップ”を用いて、消費者分布を分析していきます。”9セグマップ”とはなにかを触りだけ説明すると、

顧客を9つのセグメントに分解して分析することで、ビジネスを成長させる顧客戦略を導くフレームワーク。
最初に消費者顧客を購買頻度をもとにして、シンプルな分類として5つのセグメントに分ける。
・ロイヤル顧客: 頻度高く利用している顧客
・一般顧客: 今も利用している顧客
・離反顧客: 以前ユーザーだったが利用を辞めてしまった顧客
・認知・未購買顧客: 知ってはいるが、まだ利用したことのない顧客
・未認知顧客: 自社のブランドを知らない顧客

さらに「次回も同じブランドを買いたいか」という質問でブランドに対して積極的か消極的かブランド選好をベースに計9つのセグメントを作ったものを指す。

「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」より引用

9セグマップにもとづくと
どんなアイデアが販売促進において効果的か(9セグマップにおいて左から右に遷移させ、「未認知顧客」→「認知・未購買顧客」→「離反顧客」→「一般顧客」→「ロイヤル顧客」に引き上げていく施策)、
また「消極顧客」→「積極顧客」に変えていくブランディング施策が効果的か(下から上への遷移)、
マーケティングのアプローチが目的によって異なるため、それぞれを分けて考えることができる。

これをハンドボール版で作成してみると次のようになります
(ちなみにこのセグメントだと、私個人は3の積極一般顧客にあたります)。

19歳~54歳の男女計400人回答 (Freeasyパネリスト アンケート調査)

今回ハンドボールにおけるセグメントを決める上での分類定義は以下の通り。
購買経験:ハンドボールリーグや日本代表への観戦経験(実際にお金を落としたことがあるか否か)
購買頻度:1年に複数回以上の観戦を購買頻度"高"、1年に1度を購買頻度"低"、過去1度しか見たことがない人を"離反とする
ブランド選好:次回観戦したくない・友人に誘われたらいくかもしれないと回答した層を、ブランド選好”低”とする

ハンドボールを観戦したけどやめてしまった・ハンドボール競技を部活でしたことがあるけど観戦したことはない、そんなハンドボール協会がターゲットとする休眠層はここでいうと6や7のセグメント(計4%)にあたるでしょうか。
もちろんこの層を右に遷移させる施策も必要ですが、それがもし理想通り全て完了したとしても (何年かかるのでしょうか)、未認知顧客(9)と消極認知・未購買顧客(8)の計92%は置いてきぼりのままです。
この大部分が置いてきぼりの状況では、ハンドボールのスポンサーを買って出る企業も出てきません。スポンサーは広告宣伝効果を期待しているわけであって、限られた同じ少数層にしかリーチしていないハンドボールの現状はあまり魅力がないでしょう。

「WHO: ハンドボール協会が狙いとする”ターゲット消費者”が間違っている」、これが私の感じた違和感の正体であり、ハンドボールがメジャーになれない1つ目かつ最大の理由です。
ここがずれると今ハンドボール協会が行っているそれぞれの施策も、”消費者視点”が欠落した、効果の低いものとなってしまいます。

目的の設定

ここで根本に立ち返って、目的(OBJECTIVE)について改めて考えてみましょう。「ハンドボールをメジャーにする」といっても、具体的にどうなっていたら達成できたと言えるでしょうか。
例えば女子サッカー(なでしこジャパン)やラグビーはメジャースポーツと呼べるでしょうか。W杯シーズンの盛り上がりやメディアでの取り上げられ方を見れば十分メジャースポーツとも思えますが、一方で未だ一時的な流行・ブームとして捉えられている側面もあり、通常シーズンでの観客動員や競技人口の減少など、実は”持続性”に課題があります(事実、ハンドボールの方がラグビーより高校生の競技人口も多いですし)。

この「目的の設定」を明確に行うことは全てのプロジェクトにおいて最重要であり、決して軽んじてはいけません。設定した目的を出発点・合言葉としながら、勝つための戦略・戦術を選んでいくわけであって(迷路もゴールから解いた方が圧倒的に早い)、目的が不明瞭だとその後のアクションが非効率になったり、今何のためにこれをやっているのか方向性を失ってしまうことも多々あります(迷路内での迷子状態)。
しかしながら世の中には目的と謳いながら目的になり得ていないものも多いのが実情です(そもそもハンドボール協会の目的が「ハンドボールを人気にすること」ではなく、「協会運営を成り立たせること」に重きを置いているのであれば、その目的の相違が、私が施策に対してズレを感じる原因かもしれません)。

優れた目的を見定めるチェックポイントの考え方の1つとして”SMAC”というフレームをご紹介します。(先程ご紹介した、ハンドボール協会の定めたビジョン・ミッションはSMACと言えるでしょうか。)

・Specific (具体的な)
・Measurable (測定可能な)
・Achievable (達成可能な)
・Consistent (より上位の目的と一貫している)
例:新規ユーザー数を半年後に2倍にする。

この中でも、Achievableについてはバランスを取る難しさがあり、目標が高すぎて到達不可能だと容易に諦めてしまうようなものでもなく、かといって簡単に達成できてしまうようなものではチームのモチベーションの低下に繋がってしまうので、注意が必要です。
また個人的な経験としては、目的を設定しても毎回きちんと達成することは少なく、たいてい目的よりも少し下回った結果となってしまう(途中でここができない、ということがいずれにしろ起きる)ことが多いので、リーダーとしては少々ストレッチなターゲットを掲げて、それを達成可能だと思わせるような戦略と、チームの士気をあげる熱意とを伝える必要があります。

そしてその目的をどのように決めるのか、ちょうどいいAchievableかどうかを判断するのは、定量的な理論に十分基づいた上で(今回は詳細省略)最終的にはガッツ(勘)です。なので私もガッツで目的を作成してみます。

ハンドボールをメジャースポーツにするを言い換えた目標はずばり、

「5年後(2029年)までに、中高生の競技人口を2倍にし、部活ランキングTop4に入る」

です。サッカー・野球・バスケのTop3の次点となる競技人口を達成できればメジャースポーツと呼べるのではないでしょうか。SMACに基づいて、あとは私がガッツで決めたのでもし反対意見が出ても「すいません(苦笑、けど意見を変えずにそっと目的をそのまま押し付ける)」以外に反応は難しいです…。
別案として、現在日本ハンドボールの観客最多動員数は日本代表とパリSGの対戦で記録した1万801人のようですが、トップの人気を誇る欧州だと2-3万人動員する(つい先日5万越えの最高記録まで樹立)ようなので、どこで開催するかは置いておいて「4年後(2028年)までに、最多観客動員数記録を2万人にする」を目的として据えるのも良いでしょう。何故良いと感じるか、それはガッツです。

肌感としては、今の競技人口・観客動員数を2~3倍以上の規模にすることでメジャースポーツの仲間入りと呼べるほどの認知率・メディアの注目度・ビジネス規模に並べるような気がします。好きなスポーツ選手Top5にハンドボール選手が入る、そんな未来がきてほしいですね。
(なお、以前ハンドボール協会では賛助組織として、”がんばれハンドボール10万人会”、”がんばれハンドボール20万人会”というファンクラブを過去作って応援・寄付を募っていたのですが、残念ながらその呼称はやめてしまったようです。今のミッションよりはよっぽどSMACだと思いますが…。)

戦略:WHO・WHAT

目的を設定した後に、戦略について考えましょう。ここでの戦略の定義とは「目的を達成するために資源を配分する"選択"」のことを指します。目的を達成するために、こんなことをやりたい・あんなことをしたらどうだろうと考えるのは自由かつ無限ですが、「お金・人・時間」といった資源は有限であり、どれにするか選択し、集中して投資する、戦略を作る必要があります。

例えば皆さんも焼肉食べ放題にいった際には、「とにかく満足したい」という目的に対して、有限な時間制限と自分の胃袋という「資源」を気にしながら、どのメニューを攻めるか・逆に攻めないのか、「選択と集中」をしたことがありますよね。これも身近な「戦略的思考」と言えるでしょう。

特にお金・資源が少ないときこそ、より「選択と集中」をしなければ効果は発揮できません。「ターゲット消費者(WHO)を決める」というのは、限られた資源を薄く全員に投下するのではなく、目的に達するために資源を有効活用できる層が誰なのかを選択する戦略、を指します。

前述した通り、ハンドボール協会の「WHO:ターゲット消費者」は一度ハンドボールをやめた30万人の休眠層(大学生・社会人)ですが、私の掲げた目的は「5年後(2029年)までに、中高生の競技人口を2倍にし、部活ランキングTop4に入る」なので、それに対しては有効なWHOであるとは言えません。
注目すべきは、そもそもハンドボールをやめた休眠層ではなく、ハンドボール未経験者の方であるというのはおわかりいただけるかと思います。
ただ一方で、ハンドボール未経験者というのは日本国民の99%を指すので、ここからさらに絞っていく・選択していく余地があります。

WHOをよりシャープにしていくために、ここでハンドボールが人気になれない2つ目の理由の「2. WHAT:ハンドボールが消費者にもたらす”価値・本当の強み”を見出だせていない。」について触れましょう。
なぜWHOの途中でWHAT(存在意義・提供価値)の話に移るか。一般的なマーケティング書では、まずターゲットWHOをきちんと定めて、その層で満たされていない潜在的なニーズを見抜き、その後コンセプト・商品開発を決めるようなケースがお手本としてよく紹介されます。
ただハンドボールというそもそもの競技が変わらない際に、まず改めてその存在理由・付加価値を考え直したり、隠れた強みを見出しながら (WHAT)、それが刺さるターゲット消費者 (WHO)を再定義するといった、ポジショニング戦略の見直しをするアプローチを取ることもあります。
何度も「WHO:ターゲット消費者」と「WHAT:存在理由となる提供価値」を行ったり来たり繰り返し考え抜いていく中で、これだったらいけそうだという勝ち筋となる戦略が見えてくるのが個人的によくやる思考プロセスです。

みなさんはハンドボールだからこそできる価値ってなんだと思われますか?もちろん日本代表やハンドボールリーグの活動はファンに生きる勇気や希望を与えてくれるものだと思いますが、それはハンドボール独自のもの・ユニークな強みではありません。
この独自性・ユニークさという視点は、世の中に娯楽や選択肢がありふれた中で、消費者に興味を持ってもらって手にとってもらうための武器として最重要で、ここが尖った強み(POD: Point of Difference)であればあるほど、目的を達成できるチャンスが大きくなります。
ハンドボールを知っているみなさんも一度スクロールを止めて考えてみてください。


私の結論はずばり、

「誰でも運動能力全般を向上できる」というのがハンドボール最大の強みであり存在意義になり得る

です。

ハンドボールのユニークな特徴としては、
- 「走」「跳」「投」の三要素が揃っている
- ポジションが複数あり体格に制限されることなく誰もが活躍できる
- 最低ボールだけあれば始められる(初期投資が少なくすむ)
- 中高生から始める人が現状多いので、途中からでも始めやすい
- ヨーロッパではサッカーに並ぶほどの人気がある
- 各チーム20, 30点ずつ取るスピード感のある試合展開で飽きない
- 空中の格闘技と呼ばれるような迫力・ハードな接触がある
- 筋肉や体つきがちょうどいい感じのモテボディになる(アメフト部よりは)
などが挙げられるでしょうか。

特にこの中で私が尖った強み(POD)としてのポテンシャルが高いと思ったのは1・2点目です。その理由として、近年の小・中学生の運動能力の低下が背景にあります。全国体力テストの合計点は過去最低を更新し続けており、子供の生活習慣・環境の変化に加えてコロナによる運動機会の減少が拍車をかけました。

スポーツ庁 令和4年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果概要より引用

子供の身体活動・スポーツの意義としては、身体の発達・体力の向上・健康の維持に加え、意欲的な心の育成・社会適応力や認知機能などの心身の発達にも繋がります。そのため最低を記録した体力テストの現状は、大人になってからの社会活動にも悪く影響するであろう、未来の日本にとって由々しき事態です。そこで「走」「跳」「投」の三要素が揃っており、どんな体格な子でも活躍できるハンドボールは、小・中学生の体力低下に歯止めをかける最も効率的な解決策の1つであると言えるのではないでしょうか。

これがハンドボールが持っている、消費者にもたらす”価値・本当の強み”だと私は考えます。私は「ハンドボールをメジャーにしたい」という目的の延長線上に、「日本の子供の運動力の低下を止めることで日本の未来の国力を向上させたい」という真の目的・ミッションを見据えることができれば、それに共感してくれるより多くの協力者・仲間を新たに集めることができるのでは、という点においても資源を最大化させるポテンシャルを感じています。
いろんなハンドボールと教育関連のインタビューなどを見ると、ハンドボールが運動能力を向上させる価値があると気づかれて言及されている方が何人かいらっしゃいます。是非ここが最大のチャンス・強みだと、声を大にして共に伝えましょう。

またハンドボールの知名度の火付け役として大活躍された宮崎大輔選手も、そのきっかけは2006年の「スポーツマンNo.1決定戦」で見事No.1に輝き、ハンドボールをしている人は運動能力が高そう・かっこいいというポジティブな印象を残せたことにはじまります。


それでは「WHAT:存在価値」について一度考えた上で、再び「WHO:ターゲット消費者」の話に戻りましょう。日本国民の99%を指すハンドボール未経験者からどのような層にさらに絞っていけば、目的の達成の可能性が高められそうでしょうか。先程見出した「誰でも運動能力全般を向上できる」というハンドボール独自の強みは、どんな層により刺さって、より効果を発揮できるでしょうか。
ここでも皆さんスクロールを止めて改めて考えてみてください。


ずばり私のおすすめする、

WHO:ターゲット消費者は「中学1年生」

です。兎にも角にも全国に100万人いる「中学1年生」に全ての資源を集中し、その年代の中で認知率100%そして部活ランキングTop4を目指しましょう。

なぜ「中学1年生」をWHOとして選んだのか、その理由として、「5年後までに中高生の競技人口を2倍にし、部活ランキングTop4に入る」という目的に向けて、資源をより有効活用できる環境がある・条件が適しているからです。
具体的に挙げると、
- 中学1年生が部活動を本格的にはじめるタイミングであること
- ハンドボール部・クラブ数が小学生が400程度に対して中学生だと約750と倍近くあること
- ハンドボールは身体への負荷が比較的大きいので、ある程度の怪我への耐性が必要なこと(体格・判断力・運動神経含め)
- 他競技から転向しても活躍している日本代表選手が多くいること(ハンドボール協会の”攻めの広報”と共通)

さらに活用できる無料・フリーの資源がもし存在していることがあれば、使わない理由はありません。私がハンドボールを普及させる上で一番ラッキーだと感じた”フリーの資源”は、「全国体力テストのハンドボール投げ」です。中学生ほぼ全員が、ハンドボールを知らなくても、「ハンドボール」投げをするのです。投動作の測定として採用されているのが、野球ボールでもなく、何故か「ハンドボール」投げなのです(理由は存じ上げませんが、採用してくれた方・推奨していただいた方ありがとうございます)。
この最大の資源・強みを普及活動に活かすほかありません(ちなみに小学生は大変残念ながらソフトボール投げです)。

もともとハンドボール協会は2000年代の普及戦略として「学校体育および学校部活動によってハンドボール愛好者を増やすこと」と定め、学習指導要領にハンドボールを入れて授業でハンドボールが出来るようにし、かつ指導できる教員、ハンドボール部を増やしてきました。
ハンドボールをメジャーにする目的に対して、素晴らしい戦略だと思います。私も小学校高学年の体育の授業でハンドボールを知り、その時の経験からなんとなく中学1年生でハンドボールを部活に選んでしまった一人です。

一度ハマった戦略があれば、徹底的に、徹底的にそこをやりきる継続性が重要です。なんとなく停滞してきた、他にも可能性がありそう、といって他の施策に移行することは、「選択と集中」とは真逆の行動であり、期待するような効果を得ることは難しいです。

それでは次にWHO:ターゲット消費者として定めた「中学1年生」のインサイトについて考えてみましょう。インサイトというのは簡単に説明すれば消費者の「自分ですら気づいていない、潜在的なニーズ」のことであり、このインサイトをコミュニケーションのきっかけとして訴求することで、消費者の感情が動いたり、欲しくなったりします。

さきほどの体力テストの結果であった通りに、中学1年生が「俺最近運動不足で、体力テストの結果もよくないから、どこかほどよく運動できる部活ないかな」とどこかの健康診断結果が気になるおっちゃんのようなインサイトを実際に持っているわけではありません笑。

中学校の部活選びの際には、一般的に何度か体験入部・仮入部を経てどの部にするか決めるでしょうが、選ぶ基準やきっかけとしては、
- 部の雰囲気
- 活躍できそう・試合に出れそう
- 一度やったら楽しかった
- かっこいい・憧れる
- 友達・家族がやっていた
- 習い事以外の新しいことを始めてみたい
などが挙げられますでしょうか。

インサイトを考える際に個人的によくやるアプローチとしては、ターゲット消費者の商品・サービスに出会う前後での認識の変化(Perception Change)を、当人の心の声でまとめることをインサイトの整理としてやります。
今回のケースでまとめてみるに

From (ハンドボールと出会う前):
なにか新しいこと始めたいけど、どの部活にしようか迷うな
To (ハンドボールと出会った後):
ハンドボールってなんかかっこよかったし、みんな同じタイミングではじめるから試合で活躍できそうだし良いかも

というのが理想のPerception Changeになるでしょうか。
短絡的に聞こえるかもしれませんが、運動部を選ぶ際の中学1年生のインサイトとしては「時間を犠牲にして1つの部活に打ち込むのであれば、試合に出てレギュラーでかっこよく活躍したい(そう当時中1の私もモテたかったんです、男子校なのに)」というのが代表的と言えるかもしれません。

このPerception Changeを促すものが、ハンドボールの魅力であり、ハンドボールをやってみようと思うきっかけ(Trigger)になるのですが、さて「ハンドボールってなんかかっこいいかも」と中学1年生の気持ちになったときに惹きつけられるものはなんでしょうか。


色々候補はあるとは思いますが、一番多いのは
「ジャンプシュート」
じゃないでしょうか。迫力のあるロングシュートや滞空時間の長いサイドシュート、DFを切り開くカットインシュート。空中の格闘技とも称されるほど迫力があり、

ハンドボールの象徴的なかっこよさ・魅力は
「ジャンプシュート」に詰まっている

と思います。

今中学1年生に絞った話をしていますが、いつか一般の人に
「ハンドボールって知ってる?」
と聞いた時に
「”ジャンプシュート”のやつ?かっこいいよね」
とまで返してもらえる
日がくれば、それはメジャースポーツとしてぐっと近づいた状況であると言えるかもしれません。
ジャンプシュートをハンドボールのアイコニックアセット(長期的に認知や親しみを醸成する、象徴的なもの)として取り扱うことで、消費者から選んでもらえる確率を挙げていけるのではと考えます。

ここまでを一度まとめましょう。
ハンドボールをメジャースポーツに変えるために、まずはSMACな「5年後(2029年)までに、中高生の競技人口を2倍にし、部活ランキングTop4に入る」という目的を設定しました。
その次にハンドボールの存在意義・付加価値として「誰でも運動能力全般を向上できる」可能性を見出しました。
そしてターゲット消費者として、ハンドボール未経験者の方に再注目し、中でも戦略的なWHOとして、部活選びかつハンドボール投げをする機会のある「中学1年生」を選択しました。
ハンドボールを選んでもらうきっかけとして、かっこいい「ジャンプシュート」が鍵となるアイコニックアセットだとまとめました。

HOW: 一貫性のある戦術

それではハンドボールが人気になれない最後の理由、「HOW: 男子日本代表の名称である”彗星ジャパン”じゃ何も伝わらない。」について解説していきましょう。皆さんは率直にはじめて”彗星ジャパン”と聞いたときどう思われましたか?

日本代表は、いわばその競技の顔です。次の例で考えてみてください。
あなたはレンタルDVD(Amazon Primeのメニュー画面でもいいです)で、今から3時間かけて見るものを1つ選びます。ジャンルとしてSFやアニメ、ホラー映画に加えて、音楽ライブなんかもあり、他にもスポーツドキュメンタリーもサッカー・野球などは特集コーナーが組まれています。
その中で本当に端っこの方にあったDVDがたまたま偶然目に入り、そこには「彗星ジャパン!」と書いてあり見知らぬ代表選手が笑顔で載っているパッケージだったとします。あなたはそれを手に取りますか?それとも戻して他のDVDを探しますか?

ハンドボール経験者でさえも、その状況でそのDVDを手に取ることは少ないかもしれません。であったときにハンドボールを知らない、未経験者の人が気づいて、興味をもってくれるでしょうか。DVD探しという例を用いましたが、何年ものの時間をコミットする部活選びや、大人になってから数多くの娯楽がある中であえてハンドボールを選んでお金と時間をかける、という意味では似たような状況選択だと言えます。

私が初めて"彗星ジャパン"という名称を聞いたときには、正直「え?」と思いました。その当時の違和感を今言語化するならば「ただでさえ認知度が低いハンドボールで、”彗星”というわかりにくい名前をさらにかぶせてどうすんねん」です。未知なものに未知な名前をつけてさらにハンドボールを知らない人を遠ざけてしまっている、意図的ではないと思いますがハンドボール経験者にさえ伝わればいいというバイアス・考え方が見てとれてしまい、”消費者視点”が欠落してると感じます。なお前半で説明した独自アンケート調査内で追加で聞いた、彗星ジャパンの認知度は6%でした。

この彗星ジャパンは当時スポンサーの広告代理店を担当していたD通が裏で主体となって、2018年にハンドボール協会が公募、1000通の応募の中から選ばれたようで、
<選定理由としては「男子ハンドボールのスピーディーな動きと、選手の放った力強いシュートの軌道が、彗星に合致すると判断しました。コートの中を縦横無尽に駆け巡り、力強いシュートを颯爽と決めて、勝利をつかみ取る」。そして「ご声援いただいたすべてのみなさまを魅了するような光り輝くチームとなる」という決意を込めています。(スポーツイベント・ハンドボール記事内インタビューより引用)>
とのことですが

うーん、むずい!

その一足先の2013年に同じく公募で決まった女子日本代表のおりひめジャパンですが(なでしこジャパンの影響で、名前をつけるのが当時の流行でした)、名前の由来はハンドボールをプレーする人数の7人と、7月7日の七夕をかけているようです。

うーん、むずい!!!!!

そう説明されたらハンドボール経験者だとそれぞれ意味は伝わる、言われてようやくなるほどと理解できると思いますが、説明なしだと未経験者からすればポカンでしょう。ハンドボール経験者をターゲットWHOとした当時の戦略の一貫性を、この名称においても悪い意味で感じますが、、、これではハンドボールはメジャースポーツになれません。
代表活動そのものとしては素晴らしい成績を残しているばっかりに、もったいないと個人的には思います(決して今までの代表活動・応援そのものを否定しているわけではなく、名称1つでメディア露出の機会損失が出てしまう畏れがあることに言及しています)。
ではどう変えたらより良くなるでしょうか。

どういった名称が適切なのか、こういったクリエイティブなものには正解・不正解があるわけではないので、ここも判断軸は目的と戦略に沿っているか、そして最終的は「ガッツ」です。検討すべき条件・チェックポイントを列挙すると、
- 誰から(未経験者や中学1年生で)も直感的に理解できて、シンプルなもの
- メディアから取り上げてもらいやすい・きっかけをつくれるもの
- ハンドボールの魅力=ジャンプシュートにできれば繋がる
- もしかしたら欧州のハンドボール人気の高さを活かして逆輸入できるかも


そんな事を考えながらの私のおすすめはずばり、

「忍JAPAN」

です。女子日本代表の名称をくノ一(くのいち)JAPANにすることもできますが、ジェンダーレスな未来も考えて、男子代表・女子代表ともに「忍JAPAN」で是非いきましょう。ご採用のほど、よろしくお願いします。

今流行りの画像生成AIに作ってもらったハンドボール「忍ジャパン」

世界の中では小柄な体格である日本人選手が、縦横無尽に飛び回ってシュートを決める、まさにその動きこそ「忍」っぽくないでしょうか。
代表で司令塔にとどまらず点取り屋としても活躍される、安平選手、徳田選手、相澤選手。ナイスプレーのたびに、海外実況で「WOW! NINJA JAPAN!!」と絶叫される様子が目に浮かびます。ユニフォームも漆黒な唯一無二のものに変え、アクロバティックなジャンプシュートの場面を動画・写真で切り取り、全国的にプロモーション・グッズ展開を実施する。そうすればハンドボールを知らない人からも「なんかジャンプしてシュートしてるのかっこいいよね」といってもらえる、そんな未来もここまで読んでいただいたあなたの頭の中で一緒にご想像いただけるでしょうか。

そして認知獲得のためにも、何よりも重要なのがメディアからの取り上げ・露出です。取り上げてもらうきっかけをつくるために、そもそもの名称がシンプルでわかりやすいこと、そしてとにかく話題性に可能性が見込めそうなことなどが必要だとしたときに、「忍者」というアイデアは強いのではないんでしょうか。

外国人人気に強いのも「忍者」の特徴でしょう。NARUTOの世界的な人気はもちろん、Netflixでも「忍びの家 House of Ninjas」がグローバル視聴1位をつい先日達成したようです。集英社さん・Netflixさん、ぜひハンドボール一緒にプロモーションしましょう。お願いいたします。

以上が名称についての私のご提案でした。好きになっていただけそうですか?答えは1つではないので、もし他にいいアイデアを思いついた方がいらっしゃれば是非教えてください。商標登録一緒に申請しに行きましょう。


代表活動を”忍JAPAN”で席巻していくのに加えて、ターゲット消費者である「中学1年生」内での認知率・部活選択率を向上させていくHOW(戦略・具体的施策)についても最後に簡単に考えてみましょう。
あんまり運動してこなかった子たちに、「かっこいい・やってみたい」と思ってもらえるようなきっかけを作る施策として2つの方向性を提案します。

1. ハンドボール投げ教室として、4月に全国の中学1年生の授業を回ろう

体力テストの実施および部活を決めるタイミングである"4月"にのみ超一点集中して、ハンドボールリーグ選手+大学生ボランティア、7人1組でなるべく多くの中学校を一斉に周り、中学1年生にのみこちらも一点集中してハンドボールの普及活動を行うプランです。繰り返しになりますが、お金や資源がないからこそ、いろんな施策に手を出すのではなく、「選択と集中」が最重要です。
内容としては、
- ハンドボールをそもそも握ったことのない・投げたことのない中学1年生に正しいフォームを教える
- ジャンプシュートのデモンストレーションでかっこよさをアピール
- その学校の先輩ハンドボール部員との試合でゲームのスピード感を見せる
などでいかがでしょうか。

このようなプランはPOME (Point of Market Entry)と呼ばれるマーケティング施策の1つで、ハンドボールを認知するきっかけを作り、さらにはそのままハンドボール部に入ってもらうコンバージョンを直接促すという意味でも高い効果を見込めます。
さらにはその教室で、ハンドボールリーグの試合の宣伝や中学1年生対象のクーポンや無料券を配ることで、持続的な観客動員の増加も期待できるでしょう(そしてプロのプレーを見てさらにハンドボールという競技に憧れる・好きになってもらうという好循環を生むことを期待したいです)。ハマった戦略は効果を最大化できるようとにかく徹底的に、です。

2. 運動能力の高さをアピールできる番組にとにかく出よう(スポーツマンNo.1決定戦・SASUKE・逃走中など)

ハンドボールをすれば運動能力が高まる・クラスのヒーローになれるかもしれない、そう感じてもらえるためには、常にハンドボール外での広報活動が必要です。やはりレジェンド宮崎大輔選手が切り開いた道を、今一度徹底することで効果を見込めるのではないでしょうか。

各ハンドボールリーグのクラブも広報活動の一貫として、リーグ試合前後のハンドボール教室や、Youtubeでのコンテンツ発信をされていると思いますが、今いるファンやハンドボーラーを喜ばせることはもちろん、新規ファンの獲得という目線では「どうしたら体力テストの結果をよくできるか」「運動能力の高いハンドボーラーがこんなことに挑戦したらどうなるか」といった内容の方がより大衆ウケする可能性があるかもしれません。
ただし1クラブだけがやれば変わるのかという話ではなく、ハンドボール界全体が1つの方向性を向いて一斉にかつ地道に発信し続ける必要があります。

おわりに

以上が本noteで私が伝えたかった内容です。長文乱文にも関わらず、ここまで読んでいただいた方には感謝の気持ちでいっぱいです。

内容をまとめると、
「ハンドボールが人気になれない理由」をマーケティングの観点から以下の3つを指摘しました。

1. WHO: ハンドボール協会が狙いとする”ターゲット消費者”が間違っている。
2. WHAT: ハンドボールが消費者にもたらす”価値・本当の強み”を見出だせていない。
3. HOW: 男子日本代表の名称である”彗星ジャパン”じゃ何も伝わらない。

そして「ハンドボールをメジャースポーツに変えるリブランディングの提案」をさせていただきました。

目的「5年後(2029年)までに、中高生の競技人口を2倍にし、部活ランキングTop4に入る」
WHO: ハンドボール未経験者、中学1年生
WHAT: 誰でも運動能力全般を向上できる
アイコニックアセット: ジャンプシュート
HOW:
- 日本代表の名称を”忍JAPAN”にする
- 中学1年生を対象にハンドボール投げ教室を4月に全国で実施する
- 運動能力の高さをアピールする番組に出る

マーケティング戦略といっても、言っている内容そのものは大したことでもなければ魔法でもないかもしれません。ただし目的を曖昧にしたまま、選択と集中のない戦術をだらだらとやってしまっていても活路は見えてきません。それぞれの施策をバラバラにするのではなく、点と点をどう線で繋いでいくか。どのターゲット消費者に絞るかを定め(WHO)、自分の強みを理解し(WHAT)、それが伝わるように資源を配分して一貫性をもってやり抜くこと(HOW)がマーケティング戦略であり、そういった戦い方の方が目的を達成できる可能性が高いことはお約束できるかと思います。

たくさんの方に読んでいただくことを目的としておりますので、本noteは有料化せずに無料公開のままの予定です。コンテンツを無断で転載することは、原則としてお控えください。

ハンドボールを競技されている・応援されている皆様
本note内容に少しでも共感いただけましたら、周りの友人だけでも良いので是非拡散いただけると幸いです。皆様の行動1つ1つがハンドボールの未来の普及活動に繋がると思います。
ハンドボール界を動かすには、皆さんの力が必要です。

皆様からのご意見・ご質問あれば、こちらのアンケートリンク(https://forms.gle/YHKjgEGBVxeNkotW9)よりお気軽にご共有・お問い合わせください。

日本ハンドボール協会・地方協会・JHLの皆様、文部科学省スポーツ庁の皆様
少しでも内容にご興味がありましたら、是非私にお声掛けください。今回はマーケティング戦略の根幹についてまとめましたが、一貫性をもって具体的施策を実行し切るためにも細かいところを含めて、詰めなければならないところが山ほどございます。日本のハンドボール人気・そして子どもたちの運動能力の向上のお手伝いをさせていただけますと幸いです。

報道・メディアの皆様
ハンドボールの普及・発展のための、メディアの方々の取材依頼に積極的に対応させて頂きます。マーケティングに関する取材にも柔軟にお答えしますのでお問い合わせください。

本note投稿後、どのような反応をいただけるかまったく未知数ですが、私自身ハンドボールをメジャースポーツにする夢については、人生を通じて挑戦していく所存ですし、その大きな夢に向けて、これからも皆様のご協力をお願いすることが遅かれ早かれあるかもしれません。
まだまだマーケターとして修行を続けていく身ですが、もし何かお手伝いできることがどんなことでもお気軽にお問い合わせください。
メールアドレス: handballxmarketing@gmail.com


参考資料・引用元

公益財団法人 日本ハンドボール協会 業務・財務に関する資料(事業計画書)https://www.handball.or.jp/jha/business_doc.html

公益財団法人 日本ハンドボール協会 日本ハンドボール協会の戦略について(2020年3月) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/chusho/dai8/siryou5.pdf

公益財団法人 日本ハンドボール協会 中長期普及・マーケティング戦略 中央競技団体の経営力強化推進事業(中間報告)
https://www.mext.go.jp/sports/content/20210202-spt_sposeicy-00011081_6.pdf

全国高等学校体育連盟 令和4年度加盟登録状況
https://www.zen-koutairen.com/pdf/reg-reiwa04.pdf

スポーツ庁 令和4年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果概要
https://www.mext.go.jp/sports/content/20221223-spt_sseisaku02-000026462_2.pdf

JSPO日本スポーツ協会
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/jspo-acp/jspo-acp_chapter1.pdf

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