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snow sonnet(セルフライナーノーツ)

12月21日にリリースした「snow sonnet」

ドイツ、ベルリンの映像作品の第二弾という事で、タイミング的には、冬のこの季節にぴったりの曲だったと感じています。

個人的には、ようやくこの曲をリリースすることが出来たのは、とても感慨深いものがありますね。何せ、20年越しですから 笑

過去の作品で言えば、「Rain」と同じように、20代の頃のHANCEが作った曲に、今のHANCEが新たに歌詞を書き、一つの作品として成立させました。

20年間、日の目を浴びる事の無かった曲を、一つの映像作品として蘇らせる事が出来た喜びは、中々言葉で言い表す事が出来ないものがあります。関わって下さった方には本当に感謝の言葉もありません。

また、「sonnet」とは日本では馴染みのない言葉かもしれませんが、4行から成るヨーロッパの定型詩(十四行詩)で、プロヴァンス語のsonetとイタリア語のsonettoに由来し、ともに「小さな歌」という意味があります。

「snow sonnet」のメロディを作った当時、僕はエリオット・スミス、ブライトアイズ、ロンセクスミスのような、「オルタナティブ・フォークミュージック」に傾倒していました。

意外に思われるかもしれませんが、僕は元々フォーク少年で、ボブディラン、サイモンアンドガーファンクル、ピーターポールアンドマリーなど、さらに前の時代のフォークソングをたくさん聴いていました。

今でもそのあたりの音楽は大好きなのですが、リアルタイム世代ではなかったためなのか、どこか、ノスタルジーの域を越えない、感情にフィット仕切れないもどかしさがあり、その隙間を埋めるような形で、90年代の退廃した空気感を持った、アコースティックサウンドに魅力を感じるようになっていました。

当時、レディオヘッドが名盤「OKコンピューター」を出したばかりで、音楽シーン全体がシニカルな方向へシフトしていたのは、恐らく同世代の方ならわかると思います。

オルタナティブな空気感を持った、アコースティックサウンドを、華やかなショービズの世界とはかけ離れたポジションから、スタジアムバンドではない、こじんまりとしたソロシンガー達が、ベッドルームから発信している姿は、当時の僕にはとても「新鮮」で「リアル」な「救い」の音楽に聴こえました。

話を元に戻すと、この曲をなぜ、僕がリリースしたかったのか?それは、その当時の自分の感情を「整理」するためにどうしても必要なプロセスだったからです。

「リアルタイムで」紡いだメロディーではないため、当然ながら、今の僕とは違った「感覚」があるのは否めません。今の僕からは絶対に出てこないようなアプローチをしているのも事実です。

しかしながら、「若気の至り」のような感覚がありながらも、昔の自分を包み込んであげるような、その当時の想いを「解放」してあげたいような、男性である僕が「母性」のような感覚で、この曲を、一つの形として、世に出してみたいという想いがありました。

表現が正しいのかわかりませんが、それをする事で初めて、「弔うこと」が出来るような気がしました。現に、まだリリースしてからそれ程経ってはいませんが、ファンの皆様からいただくメッセージに、僕は救われたような気もしているのです。

わざわざ飛行機に乗って、ベルリンまで行って、映像作品を作ったのも、その当時、頭の中にイメージしていた、「心象世界」に極力、近づけたかったのが理由です。

そんな自分のエゴとも取れる「想い」を汲み取って、わざわざドイツまで重たい機材を持って、一緒に撮影場所を転々としながら、同行してくれた映像監督の奥村さんには本当に感謝の言葉もありません。

「sonnet」=「小さな歌」

雪の降るこの季節に。

この曲がみなさんの心の奥底で。

かすかな温度をもって、寄り添う事を願っています。HANCE


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