見出し画像

あいみょんという without you

 AIMYON 弾き語りTOUR 2021 “傷と悪魔と恋をした!”【岩手公演】

 2021年7月1日岩手県民会館。観客を迎え入れた曲はバッドフィンガーのアルバム【NO DICE】の曲達だった。ビートルズを彷彿とさせる彼らの楽曲がとても心地良かった。幾多のアーティストがカヴァーしてきた名曲のWITHOUT YOUが流れた瞬間に、自然とリズムを刻む自分がいた。
 自分が初めてこの曲をちゃんと聴いたのは20歳の頃。今は時代の流れとともに閉店となった横浜ビブレのHMVで、マライアキャリーのデビューから10年を詰め込んだベストアルバム【グレイテストヒッツ】を視聴していた時だ。今でも鮮明に覚えている。あなたなくしては・・・と歌い上げるマライアキャリーの歌声に魅了され、虜になった曲。


 インターネットを十分に使えるようになるのは、もうちょっと先の時代。聴いたことのある曲だが、誰のカヴァーなのか、そんな事は知らないまま。
 テレビの挿入歌や、ラジオで聞こえてくるWITHOUT YOUはハリー・ニルソンが歌っているものが多かった。

 ネットの普及と共に、WITHOUT YOUを作ったバンドに巡り合う。

 悲運のバンドと称されるバッドフィンガーである。

 ビートルズがバンドの基礎を作ったというならば、そんなビートルズに続くバンド創成期の音楽を愛する若者たちだ。
 時代の大きな波に導かれ、踊らされ、利権と金に振り回された若者たち。        
 メンバーの個性を掛け合わせて作り上げたWITHOUT YOUは、名曲ゆえに、争いの火種にもなってしまった。

 そんな事実を知り、当時の自分はバンドや曲の素晴らしさよりも、そういったものから目を背けたかったのか、受け止めきれなかったのか、いつの間にか聴かなくなり、語らなくなり、記憶から薄れていった曲でもある。

 どんな間違いを犯した人間であろうと、自分自身が支えられたり、感動した曲の良さは変わらないと熱く語っていた人の言葉が蘇る。長い間、バンドを、その人たちの曲を愛している人だ。

 そうか、こういうことか・・・。

 やっぱりこの曲が好きだ。とても、魅力的だ。

 そんな事を思いながら、開演を待つ。開演直前にフェードアウトした
WITHOUT YOUがちょっとだけ名残惜しかった。
 今もまた、音楽業界は悲運の時であることは間違いない。それでも音楽の素晴らしさは変わらない。良い曲はずっと鳴り止まない。

 ロックなんて聴かない君に聴かせた
埃まみれのドーナツ盤は
誇りに満ちたバッドフィンガーの

【NO DICE】なのかもしれない。

 会場の左側から聞こえてくるギターと右側から聞こえてくるドラムの音。
このステレオサウンドは、リマスター版だ。



 もう、あいみょんなくして
この曲は語れない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?