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夜のベランダで

最近の日課は、ベランダでお茶を飲むこと。
子どもたちが寝たことを確認して布団から抜け出し、マグカップ一杯のお茶をベランダでちびちびと飲む。

今日はとても寒かった。
居住地の現在気温は9℃。ラジオによると、県内では今朝0℃を観測したところもあるそう。
0℃って。冬じゃん。5月なのに冬じゃん。

子供達の眠っている暗闇からマフラーを引っ張り出し、ぐるぐると首に巻く。
あったかいミルクティーを淹れてベランダに出た。

ベランダで私は、だいたい目の前の田んぼを眺めてる。
水中生物の動きで水面は常に揺れていて、そこに街灯の光が反射しているのを見るのが好き。
今日は久しぶりに星が綺麗に見えた。
気温は冬だけど、星空は春だった。


大学生のころ、アパートのベランダに毎晩のように出ていた時期があった。
確か、大学3年の頃の、盛夏から夏の終わりにかけての2ヶ月くらいだったかな。

今思い返すと自分でも信じられないような話なのだが、その2ヶ月間、私は人知れずヘビースモーカーだった。

あはは、私がヘビースモーカーって!
アンバランスすぎて笑ってしまう。想像すると我ながら滑稽な姿だ。
私はどうみてもタバコが似合わない見て呉れなのだ。
でもその頃の私は、大真面目にベランダでタバコをふかしていた。


当時、学生活動に力を入れていた時期で、学内外を問わず毎日いろいろな人に会っていた。
行く先々で「立派な学生さんだね」みたいな扱いをしてもらっていたんだけど、なんだかそれに違和感で。

褒められれば褒められるほど、「いやそんな立派じゃないんですけど」って気持ちばかりが膨らんで、だけど周りの期待値は高まって、なんかその、自分の内面と外面とのバランスをとるみたいに、誰にも言わずに隠れて吸っていた。
あと単純に失恋して傷心気味だったのもある。

くはー、イタい。
思春期長引かせすぎた若者って感じ。

ちなみに、私がタバコを吸っていたのは、後にも先にもその2ヶ月間だけ。
夏の終わり、飛行機に乗る際にライターを処分したっきり、吸っていない。案外あっさり辞められた。
まあそもそも美味しいと思っていなかったし。



あの頃のような心のアンバランスさはずっと感じていなかったんだけど、最近はまた感じるようになってきた。
周りから見られる自分と、中の自分と、あともう1人くらい自分があって、どれがほんとかよくわからない感じ。
うまく説明できないけど、心だか脳だかがちょっと散らかってる感じ。

あの頃は美味しくもないタバコで心のバランスを取っていたけど、今は、一杯のミルクティーと水面の動きで心を整理できるようになった。
状況はあの頃の比ではないほどひどいけど、あの頃よりうんと上手く自分に向き合えてる気がする。
自分を傷つけずに。

うんうん、大人になった。とっくの昔に大人なんだけどさ。

こういう、自分との向き合い方とか、心の整理の仕方とか、自分のご機嫌の取り方とか、そういうのをうまくやる手段を一個一個増やしていくことが、大人になるってことなのかな。
だとしたら、大人になって本当に良かったと思うし、もっと大人になりたい。

とにかく、今日も1日うまくやり過ごせてよかった。

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