FF11(オンラインゲーム)で出会って、結婚した話。
ヴァナ婚という言葉をご存じだろうか?
えっ? ご存じない?(誰と話しているんだ)
大丈夫、私もつい最近、この言葉を思い出したばかりだ。
今日は比較的、まじめにエッセイを書いてみようと思う。
エッセイというか、実体験を。
私が、ゲーム(FF11)で夫と知り合い、結婚をした話を。
冒頭のヴァナ婚というのは、ヴァナ・ディールで結婚する、という意味だ。
ヴァナ・ディールとは、ファイナルファンタジー11の世界。
通称、FF11。
つまり、ヴァナ・ディールとは、オンラインゲームの世界のことである。
FF11が発売された当初、「ゴブリンに絡まれた新婦をチョコボに乗った新郎が助けたことがきっかけで~」と、披露宴でふたりのなれそめを話すCMがあった。
「FF11で出会って結婚……そんなことあるのかなあ」
ゲームをプレイ始めた当初、私はそのCMを見てそんな感想を抱いた。
まさか、その1年半後に自分が、FF11で結婚相手を見つけるとは……。
人生わからないものである。
私は22歳の頃に、FF11というゲームに出会った。
ちなみに、FFシリーズは10から入った新参者である。
ゲームは好きだけど、にわかオタクですらない、ただゲームを好んでちょっとやる、ぐらいの人間だ。
それがいきなり、オンラインゲームである。
人生初のオンラインゲームだ。
なぜFF11なのか。
キャラクターがかわいかったから。
タルタルというキャラクターが、とにかくかわいくて、「これプレイしたい」と思えた。
幼児のような愛らしい体型で、ちんまりしたキャラが大好きな私、大歓喜。
さっそく色々とそろえて、FF11を始めた。
Hanachoco(読みは、はなちょこ)、ジョブ赤魔導士、種族タルタル(♀)、爆誕!
FF11には、LSというものがある。
ギルド……いわゆるサークルみたいなものだ。
FF11の世界でキャラを作ったからには、LSには入りたい。
そんなわけで、ワーカーズというLSに入れてもらった。
ワーカーズには、おじさ……いや、私より年上のお兄さんばかりだった。
女子は私含め4人ぐらいで、あと30人ぐらいは男性。
最初はぜんぜん、なじめなかった。
基本的にFF11は、プレイヤースキルが大事だ。
それなのに不器用でゲームも下手なので、プレイヤースキルなんてあるわけがない。
おまけに当時の私は、キーボードで文字を打つのもかなり遅かった。
LSでのチャットもなかなか混ざれない。
そんな私を見かねて、LSメンたちはレベル上げに付き合ってくれたり、野良PT(見知らぬプレイヤーとパーティーを組んでレベル上げをすること)でうまくやるコツなんかを教えてくれたりした。
最初は、本当に戸惑いが多かったなあ。
だって、ゲーム内にいるキャラクター(NPC以外)は、生身の人間が操作している。
しかもリアルタイムで。
だから最初はおっかなびっくりだった。
プレイするうちに、楽しい出来事がどんどん増えていった。
故郷・ウィンダスから初めてジュノという大都市に向かった時。
チョコボで移動するのだけど、私はめちゃめちゃ方向音痴なんだ。
何度、道を間違えたことか。
でも、これぞ冒険って感じで楽しかった。
初めて見た海。
初めて乗った飛空艇。
なにもかもにワクワクできた。
ゲームに慣れてくると、チャットも少しずつ速度が上がった。
そして、LSのメンバーともぽつぽつと話せるようになった。
LSのメンバーといっしょにPTするのは面白かったなあ。
だって、LSのメンバーは、私が失敗しても、「はなちゃんだからしょうがない」で許してくれたのだ。心が広い。
とはいえ、なるべく迷惑をかけないように生きていましたよ。
というか、野良PTでも「この役立たず!」とか、こそこそ悪口言われることなんてなかったけどね。
みんな良い人ばかりだった。
だからこそ、自分のプレイヤースキルが低いことが申し訳なかった。
もっと上手だったら、役に立つことができるのに。
そんなこんなで大冒険を繰り広げている中。
LS内でこんな話題が出た。
オフ会である。
LSでオフ会の話が出たのは、11月くらいのことだった。
1月に、東京で焼肉とカラオケをしよう、とLSリーダーが参加者を募集していたのだ。
私は10月にLSに入ったばかりなので、オフ会に行くつもりはなかった。
新参者ですし、というよりは……。
ぶっちゃけ、LSのリーダーが苦手だった。
理由はちゃんとある。
LSに入った当初、ムッとするような発言をされたからだ。
まだLSどころか、ゲームにも慣れていない頃。
必死だった自分に投げかけられた言葉を、ついついマイナスに受け取ってしまっていた。
私は心が狭かった。
そんなわけで、オフ会に行く気はなかったのだ。
だって幹事はLSリーダーだし。
そんな気持ちが変わったのは、12月、つまりオフ会1カ月前くらい。
理由は、その間にすっかりLSに打ち解け(私がコミュ力が高かったのではない。みんな良い人だったのだ)
みんながLSのチャットでオフ会の話をする中、自分も行きたいなあと思うようになったから。
あと、東京行きたい。
ちなみに、私は結婚するまで愛知に住んでいた。
そんなわけで、私はオフ会に参加することに。
実は、オフ会というもの自体が生まれて初めての経験だった。
だから、当日はとにかくドキドキしたなあ。
オフ会は、30人くらい参加していたと思う。
貸し切った焼肉屋のお座敷にずらっと並ぶ生身の人間たち(言い方……)
ゲームのキャラじゃない状態で見るのって、すごく新鮮だった。
そして、みんな良い人だった。
初めて会ったと思えないのは、やっぱりゲームで何度も遊んでいるせいだろう。チャットはみんなでほぼ毎日してるし。
リーダーは幹事をしていて忙しそうだった。
気を利かせてリーダーから、ちょこっと話しかけてくれたぐらい。
ちなみにリーダーは、私より12歳年上の独身男性だった。
もう読んでいる方は分かると思うのだど。
私はこのあと、リーダーと結婚する。
当時はそんなこと私も、そしてリーダーも夢にも思っていなかった。
そして東京オフ会でリーダーと急接近!
……なんてことはない。
本当に普通にみんなで焼肉とカラオケしただけだ。
カラオケで大塚愛ちゃんの「さくらんぼ」を歌ったのは、良い思い出だ。
はしゃいだなあ。素面なのに。
とにもかくにも、生まれて初めて参加したオフ会は、とても楽しかった。
それ以降、リーダーは苦手な人から、気さくな人に印象が変わったのだ。
もともとリーダーのことは、面白い人だなあと思ってはいた。
だから、実際に会って良い人そうでホッとしたっけ。
オフ会から数カ月後。
LSのメンバーで、ゲーム内のプロミヴォンという場所に行った。
当時、ここは「LSクラッシャー」とか「絆クラッシャー」など言われていた。
ボスが強くて大体、クリアできず、そのせいでギスギスしてLSが解散するなんてことも、あったとかなかったとか。
私は、基本的にゆるっとプレイしていた人間である。
楽しければOK!
そんなスタンスだったので、なかなかレベルも上がらず、プレイヤースキルも上がらなかったわけだが……。
私はプロミヴォンに、赤魔導士で参加した。
白魔導士は超うまいガチ勢のSさんがいるので、もう安心。
リーダーはメインジョブが私と同じ赤魔導士だったが、その時は黒魔導士だったかも。とにかく前衛ジョブだった。
プロミヴォンのボス戦は苦戦した。
めっちゃ強い!
でも、あと少しのところまでいったんだよなー。
私以外みんな強いからね。
だけど、ボスの全体攻撃で死んだ。
死んだ状態だと何もできない。
チャットしかできない。
リーダーが、「LSの人に救出に来てもらう? それとも通りすがりの人にレイズ(生き返りの魔法)頼む?」
そんなことを言った時だった。
Sさんが急に謝罪をした。
自分の回復が遅れた、というのだ。
ボスもクリア目前というところでの全滅。
みんな疲れていたし、全滅したのもちょっとショックだった。
楽しかったからOKじゃんのスタイルはあくまで私の都合で、他の人のことは分からないのだ。
前衛の人たちはみんな黙り込んでしまった。
LSのチャットの空気が重いのは、ここが闇の世界だからだろうか。
いや、実際にみんな、やるせない気持ちになっていたのだ。
誰が悪いわけでもない。
すると、リーダーがこう言った。
「いやー、実は俺、連携失敗しちゃった」
その発言に前衛メンバーが、「あっ、だから手ごたえなかったのか」とか、「確かに失敗してたよね」と発言する。
「ごめんごめん」
冗談っぽく言うリーダーに、その場が和んだ。
もともとリーダーはこういう人だ。
その場を和ませ、笑わせ、みんなを楽しませる。
そして、リーダーは通りかかった見知らぬ人に話しかけ、全員レイズしてもらうことに成功。
全員、生き返った。
「本当に助かりました。ありがとうございました」
そんなふうに命の恩人に、頭を下げるリーダー。
大人だなあと思った。
そこから、私はリーダーのことが気になるようになった。
だからと言って、リーダーにどんどん話しかけるわけではない。
そもそも、自分の気持ちがただの興味本位なのか、恋心なのかわからない。
それにしたってゲームで恋とはこれいかに。
当時フリーターだった私は、バイトを終えるとすぐにFF11にログインした。
FF11にどんどんハマっていったのだ。
平日は21頃にログインし、0時ぐらいまでプレイ。
休日はほぼ家にこもってプレイ。
当時は私も22歳女子なので、買い物とかにも週1~2ぐらいで出かけた。
でも、「FF11でイベントあるから早く帰らなきゃ」とかいってFF11を優先していたっけ。
とにかく毎日が楽しかった。
バイトで嫌なことがあっても、FF11でLSメンとレベル上げをしたり、イベントをしたり、一人で冒険したり、野良PTしたりするうちに、楽しくて笑っている。
一番、笑わせてくれたのは、リーダーだった。
リーダーは、いつもみんなを笑わせてくれる。
だから他のLSメンは、リーダーをいじるし、冗談も言う。
そしてリーダーを頼る。
彼は人気者だった。
リーダーは、私が今まで出会ったどんな人よりも、面白い人だと思った。
実は私は、高校生の頃にこう悟った。
「男性の魅力は、面白さ」だと。
さらに、FF11をプレイしていた当時。
大好きで読んでいたブログがあった。
そのブログは、いわゆる面白い夫婦の日常をつづっていた。
私はそのブログの影響を強く受けていた。
「面白い人と結婚したい」という願望まで抱くほどになっていたのだ。
もしかしたら、リーダーこそが私の理想の結婚相手かもしれない。
だけど、付き合ってもいないのに結婚したいってなんやねん(似非関西弁)
いやいや、何を考えているんだ私。
こんなことを思われて、リーダーだって迷惑だろう。
そもそも付き合ってもいない人との結婚を考えるだなんて、どれだけ飛躍しているんだ。
冷静になれ、私。
リーダーを本当に好きなのかよくわからないまま、日々を過ごした。
ある日、友人の知り合い男性に会った。
その男性は、私より12歳年上の35歳だという。
リーダーと同じ歳である。
その男性と色々と話したが、ジェネレーションギャップがすごくて話がかみ合わなかった。
そこで私は思った。
リーダーとは話していて面白いのに……。
不思議だなあ。
私はゲーム以外の日常生活の中でも、リーダーのことを無意識のうちに考えるようになっていた。
FF11の中では、リーダーと二人で遊ぶことも増えた。
リーダーがひとりでレベル上げをしているところへ私が邪魔……いや、仲間に入れてもらいにいっただけなのだけど。
私が周りをちょろちょろし出して、明らかにリーダーは戸惑っているようだった。
態度にこそ出さなかったが、最初はリーダーを避け気味だったメンバー(私)が、よく遊びにくるようになったらそりゃあ、戸惑うよねえ。
リーダーとゲーム内で遊ぶようになり、やっぱり面白い人だな、と思うようになった。
そして、私がたまたまLSチャットで発言した日常の疑問をきっかけに、リーダーとリアルでも連絡をとるようになったのだ。
とはいえ、パソコンのメールだけど。
最初はたわいもないやりとりだったし、頻繁に連絡を取り合うわけではない。
だけど、リーダーはやっぱりメールでも面白い人だったし、優しいなあと感じることが多かった。
いつしかパソコンのメールから、携帯のメールで連絡を取り合うようになった。
そうなると、プライベートなことも聞いちゃう私。
リーダーに彼女いるの? とかメールで聞いちゃう私。
すると、リーダーはこう返事をしてきた。
今までたくさんお見合いしたけど全然うまくいかなくて。
もう結婚とかあきらめてるし、恋愛とかは遠い世界の出来事みたいだなあ。
ううん……。
これは、恋愛興味なし?
私、告白しても断られちゃうパターン?
そんなことをうだうだ悩んでいる間に、なんと!
高校時代からの友人が結婚した。
私は生まれて初めて結婚式に出席。
友人はめちゃくちゃきれいだった。
高校時代から美少女だったが、ウェディングドレスを着た彼女は、天使のように見えたのだ。
良い結婚式だった。
式を終えて帰る途中、ふと友人が遠い世界へ行ってしまう気がした。
もちろん、結婚は喜ばしいことだが。
なんだろう、この取り残される感覚……。
さらに、それからすぐに別の友人も結婚。
彼女は結婚式を挙げず、その代わり海外へ新婚旅行に行くのだと嬉しそうに報告してくれた。
身近な人が次々と結婚していく。
そうなると、「結婚」という二文字が、どんどん現実味を帯びていく。
私は20歳ぐらいまで結婚願望がそもそもなかった。
結婚に対して、あまり前向きな印象を持っていなかったのだ。
だけど、仲良し夫婦の面白いブログを読んで、「結婚ていいな」と思い始めた。
そして、結婚するならリーダーみたいな人がいいのかなあと、何度も考えるようになっていたのだ。
ようやく結婚願望が芽生えた時期に、立て続けに友人が結婚。
いずれできたらいいな、ぐらいのふんわりとした感覚だったのに。
結婚という名の現実のほうから、どんどん迫ってくるようだ。
おまけに、母までこんなことを言い出す。
「千世子が結婚する時は、ちゃんと披露宴してね。お色直しは和装してほしいなあ」
当時は地味婚が流行しだしていて、披露宴をやらない人も増えていた。
母としては、親せきを呼んで盛大にやってくれ、ということだった。
そんな話、今まで母としたことがなかったな。
ってゆーか、相手がいないんだが……。
その時ふと思う。
リーダーなら、母も……いや、私の家族も気に入ってくれるんだろうか。
きっと、「むしろ千世子をもらってやってくれ!」とか言うだろう。
……って、私は何を考えているんだ。
私はあれこれと悩むようになった。
もともと、好きになったら玉砕覚悟で告白するタイプなのに。
だが、今回はなかなか告白への一歩がなかなか踏み出せない。
悩んでいる間も、年賀状で結婚報告がぽつぽつ出始める。
同級生のだれそれちゃんが結婚したんだって、と母が話題に出すようになる。
私自身はまだまだ子ども気分でいたし、精神年齢も低かったが。
みんな結婚をする年齢になったのか、大人になったんだよな、としみじみと思った。
今年で私も23歳。
そろそろ次の恋愛は結婚を考えたほうがいいんだろうか?
リーダーは35歳。
お見合いはたくさんして結婚はあきらめたと言っている。
でも、良い人がいれば結婚したいのだろう、たぶん。
私は、リーダーと結婚したいのか?
結婚はしたい。
でも、リーダーと結婚すると、栃木にお嫁に行くことになる。
栃木って遠いなあ。
まあ、そんなの結婚してからいくらでも愛知に帰れるじゃん?
ってゆーか、告白してみないと何も分からないし。
その時、ちょうど某市のイオンに来ていたのだけど。
夜に車から見えた夜景は、すごくきれいだった。
昔は、地元の夜景ってしょぼいなー、東京行きたいなあと思っていた。
都会へのあこがれが強かったのだ。
だけど、今はこの夜景を見ながら故郷を好きだと思えた。
23年住み慣れた愛知を離れ、見知らぬ土地へ嫁に行く。
その覚悟が私にはあるのだろうか……。
めっちゃある。
だって地元を一度は出たいと思ってたし!
よし、リーダーに告白しよ!
断られたら、まあ、その時はその時!
OKもらえたら、結婚前提で付き合いたいなあ。
23歳の私、なんだか非常に軽いノリである。
これでも真剣に考えていたんだけどね。
ほら、結婚ってノリと勢いも大事だっていうし。
そんなわけで、私は勇気を出してリーダーに告白。
OKをもらえた。
(リーダーは非常に戸惑っていたが)
色々と話した結果。
結婚前提で付き合うことになった。
付き合ってからも、LSでのオフ会はあった。
大阪オフ会や愛知でのオフ会もあったなあ。
リーダーがいたから、オフ会は楽しかった。
でもオフ会の醍醐味は、いつもゲーム内でいっしょに遊んでいる仲間と実際に会って話せる新鮮さと面白さだろうか。
私とリーダーが結婚前提で付き合っている、ということはLSメンにも伝えた。
みんな驚いていたが、一部の人は、「はなちゃんがリーダーと遊ぶ頻度が多かったから、そうかなあと思った」と。
バレていたか!
もちろん、LSメンは祝福してくれたし、ヴァナ婚の申し込みもしてくれた。
ヴァナ婚は、ちゃんと結婚式用のウェディングドレスもあって。
それをキャラクターが着たのだ。
私より先に、Hanachocoがウェディングドレスを着て、夫に愛を誓ったのは感慨深い。
ヴァナ婚当日は、すべてが輝いていた。
ヴァージンロードを歩く前に朝日が昇る演出。
hanachocoと同じタルタル種族の愉快でかわいい新父さま(中の人はGM)
LSメンたち、それからFFプレイブログ間で仲良くなった別サーバーの仲間たち。
大好きな人たちが、私とリーダーの結婚を祝福してくれた。
あの日のことは、一生忘れない。
本当に、良い結婚式だったと思う。
そして、2006年11月18日。
私と夫は現実で結婚式を挙げ、正式に夫婦になった。
披露宴では、夫が持参のテレビでFF11につなぎ、LSメンがお祝いの言葉をくれた。
あれからもう1〇年が過ぎた(まだ年齢をぼかすのかw)
今はもう、私も夫もFF11はプレイしていない。
それどころか、オンラインゲームはドラクエ10をプレイしたあとずっとやっていないのだ。
またいつか、夫婦でのんびりオンラインゲームでもできたらいいなあと思う。
もし、ゲーム内で見かけたら遊んでやってくださいな。
/wave
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