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トイレットペーパーへの疑念

 私は今、疑念に駆られている。

 最近、お店に行くと、様々なトイレットペーパーを見かけることがある。昔はトイレットペーパーといえば、シングルかダブルくらいしか選択肢がなかったが、最近は本当に種類が多い。

 どこぞのお姫様が使うのか、と思わせるような、花柄プリントのものや、フローラルなどの香り付きのもの。ウォシュレット用の破けない丈夫なものまで、使う人に合わせたラインナップが豊富だ。

 私は実家ではダブルを使っていたのだが、結婚してからはシングル一辺倒になった。シングルの方が《もちがいい》気がするからだ。

 やはり消耗品は、見た目や香りよりも《もちのよさ》が選ぶ最大の決め手となる。トイレットペーパーなどの紙類はかさばるので、買って帰るのが面倒。できれば買う回数は少ないほうがありがたい。

 先日、ドラッグストアに出掛けて行き、トイレットペーパーを眺めていた。私が若い頃は、トイレットペーパーも12ロール198円で買えたものだが、今ではそんな値段を見かけることは少なくなった。

 数ある種類の中から、適正価格のトイレットペーパーを選ばなければならない。

 ここで、暗算が壊滅的に苦手な私は大変な苦労を強いられる。
 近頃、12ロールで24ロール分、12ロールで36ロール分使えます。
 
などと謳う、2倍巻き、3倍巻きといわれるタイプのトイレットペーパーが売られている。

 これが通常の12ロールのぴったり倍の値段で売られているならわかりやすいのだが、これまた微妙な値段をつけてくるのである。

 メートルで換算すると、特売の通常の12ロールの価格より、2倍巻きの12ロールのほうが安い。でもこちらは特売ではなく、通常価格なのだ。
 と、いうことは、36ロール分の3倍巻きが一番割安なのかと思いきや、特売の通常の12ロールを3つ買うよりも高かったりする。

特売の通常の12ロール×2(高い)>2倍巻きの12ロール×1
特売の通常の12ロール×3(安い)<3倍巻きの12ロール×1

正直、自分で書いていて頭がこんがらがっている。


 こうなると、もう何を選んだらいいのかわからない。

 私の最大の疑問は、通常のトイレットペーパー2ロールと、2倍巻きのトイレットペーパー1ロールは、《もちが同じなのか》ということだ。圧縮されたことで薄手になり、通常のトイレットペーパーよりも減りが早くなるなら、2倍巻きを買うのは損になってしまう。

「2倍使えるらしいけれど、ホントかなぁ」

 私の疑念は深まるばかりだ。
 しかしドラッグストアで通常タイプと2倍巻き3倍巻きタイプを持ち比べてみたら、明らかに後者のほうが重たい。3倍巻きになると、もはやトイレットペーパーとは思えないような重さがある。

 私は思い切って特売の通常タイプの購入をやめ、2倍巻きタイプを買ってみた。

 しかし実際手に取ると、通常タイプに比べ、2倍巻きは薄く感じる。ペーパーを巻き取るとき、力加減を間違えると途中で切れてしまうし、使用感もやや心許ない。2倍巻きのトイレットペーパーを、損することなく使うには、巻き取るときに少々コツが必要な気がする。

 長年親しんできた通常タイプと同じ感覚でペーパーを巻き取ると、使い過ぎになってしまう。コロコロコロと巻き取っていたものを、コロコで止めないといけない。でもなかなかコロコで手を止めることは難しい。

 実際、2倍巻きタイプを使ってみたところ、体感的には通常タイプの1.5倍近くは長持ちしたと思う。
 しかし、毎回コロコで済んでいたわけではない。時には興に乗って、コロコロコロコロのときもあったかもしれない。

 そんなことを考えているうちに、何だか虚しくなってきた。

 多少価格に差があっても、せいぜい、ウン十円単位の話である。どっちが得なのか考えている時間のほうがもったいない。その時間で、トイレ掃除でもしたほうがいい。

 そうは思っていても、いざトイレットペーパー売り場の前に立つと、どうしたって眉間に皺を寄せて腕組みをしてしまうのだ。
 う〜ん、と小さくうなりを上げ、
 通常ロール。
 2倍巻きロール。
 3倍巻きロール。
 どれが本当にお得なのか、毎回考え込んでは、頭の中で苦手な暗算をし始めるのである。




2倍巻き

3倍巻き



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