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第26話 いらぬ説教とくれた安心

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中ちゃんが私の母の首を絞めたのを勘づいた私は、その日の睡眠時間に自分の体を抜け出します。

そうです、幽体離脱。
中ちゃんに会ったのです。あの世とこの世の中間へ行きました。

中ちゃんは背中を向け、座っていました。
「こらっ!」
と怒る私。
どれだけ中ちゃんが私のことを思ってした事でも、実際にしてはいけません。母には母の寿命があるはずです。

その寿命の間に、私と親との関係性も変わるかもしれません。一時の思いでしていいことではありません。
ですが中ちゃんは、きっとあちらの世界の人にも叱られたはず。余分な事だったかもしれません。

ですが、私はそれから透析後に帰宅する車内で、大泣きしながら帰る日が続くんです。目玉が溶けるんじゃないか!という泣き方で。
自分の病気で一晩中泣いた時でさえ、こんな泣き方はしてません。

どうしても、2時間だけ透析して一時帰宅し、お通夜に行くのがフラッシュバックします。

助けられなかった後悔や情けなさ、どうしようもない寂しさと辛さ。溢れて運転が危なくなります。

ニゲラ
英名はLove in a mist

ある日の睡眠中、私はまた体を抜け出します。
中ちゃんが私をドライブに連れ出してくれたんです。綺麗な並木道を高級そうな車で。笑顔で中ちゃんが何かを話しかけてくれています。でも、何を言っているのか分かりませんでした。

体に戻った私は、もう車内で泣かなくなりました。あの笑顔に癒され安心感をもらったのです。

中ちゃんは幸せを求めて死んだのに、私が泣いてばかりいたらいけませんよね。

あの頃の私は、自分を随分責めていました。男の子だと言わなければ、未来に絶望しなかったかもしれない。きっと中ちゃんは未来で男の子が出来ないように、連鎖を止める為に死を選んだのでは?

自分を責め続けていました。この思いは10年以上続きます。

彼の同級生であるタマちゃんと、LINE電話で話していくうちに、心の整理整頓が泣きながらやっと出来ていくのです。自分も苦しく、そんな念を送られていた中ちゃんも、苦しかったはずです。

もう止めよう。
中ちゃんは全てから楽になっていってるんだから。

来世は平和な一生か、それとも今度こそ乗り越えようと、似た道を頑張るかは彼次第です。
私はもう自分の人生を、幸せにしていく為に生きるだけでいいんです。きっと彼もそう願って見守ってくれてるはず。

もういいんだ。

辛くて怖くて、同窓会にも行けないまま年月が過ぎていました。次は行ってこようと思っています。
そして、中ちゃんがもたれてた学校の廊下の窓際や、体育館で後輩と手を繋ぎ舞台で演じてた姿を思い出しながら、写真を撮ってこようと思っています。

中ちゃんとのアルバムを閉じるのです。


もう大丈夫、出来るね。
大切に思ってくれてありがとう。
もうあんな泣き方しないよ。

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