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芝々さんの記事で、ヴァロットンの版画が装丁に使われている本を知りました。ヴァロットン展のミュージアムショップにあったようで、気づかないなんて私のバカバカ!と思いましたが、それはともかくまず読んでみましょう。

ちなみに、『ヴァロットン-黒と白』の展覧会を検索した時に芝々さんの記事を見つけたので、勝手ながらヴァロッ友ではないかと思っております。

【内容】
第一次大戦後の英国。国民を知力でランク分けするという大胆な政策を打ち出す脳務省に務めるキティは、脳務大臣のニコラスと密かに愛を育んでいたが、脳務省の権力が増大していく中、二人の愛は迷走する……。
ハクスリー、オーウェルの先駆をなすフェミニスト・ディストピア小説の古典、百年の時を経て蘇る!

作品社サイトより

まず『脳務省』ってナニ!?と思います(原語は"the Ministry of Brains")。
知力があればあんな戦争はなかったのでは、という強烈な皮肉も感じます。
結婚や子供を持てるかどうかが、A~Cランクで決まり、C3未満は結婚もできません。正しい組合せで子供が生まれると賞賜金が与えられ、誤った組合せだと重税が課せられます。

ちょっと優しいなと思ったのが、B2やB3(十分に知的なレベル)の人は、トップクラスのAと結婚して知能の底上げをすればOKというところ。むしろA同士やAとB1ですと知力の無駄遣いとみなされ、子供が生まれても賞賜金が減額されます。

天才を生み出したいわけではなく、国民全体の知力を上げたいわけですね。
キティはAランクですが、一方の脳務大臣は本人はAながらちょっと事情があって……というところで二人の愛の迷走が始まります。

🎬

この設定で思い出したのが、映画『ガタカ(GATTACA)』です。
こちらは近未来。DNA操作で負の可能性を排除した”適正者”と、自然出産で生まれた”不適正者”とでは、就ける仕事すら違ってきます。

イーサン・ホーク演じる主人公は”不適正者”。”適正者”として生まれた弟とは小さい頃から明らかに能力の差があります。希望する仕事には就けずに羨ましそうに見上げるばかりでしたが、転機が訪れ……しかし上手くいくのでしょうか!?

でも、辛いのは”不適正者”だけでもないんですよね。その辺りは、ジュード・ロウが魅せてくれます。

脳務省の世界にしろ、ガタカの世界にしろ、全員が同じ想いでいるのは難しいものです。結局、一枚岩でない部分からもろもろと崩れてくるのかもしれません。理解する人しない人、協力する人しない人、そこに多様性があって良かった、と少し安心しました。

ヴァロットンの版画を用いた装丁は、怪しげというか只事ではないというか、ミステリアスな雰囲気が合っていますね。さすがにこんなに ↑ あからさまにオフィスでイチャイチャはしていませんでしたが。

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