がんサバイバーを名乗れない
がんサバイバーという言葉は癌になる前から聞いたことはあった。
がんに罹患して、根治した人のことかなと漠然と思っていた。
しかし、実際にがんになってから調べてみると、治療中の人も診断されたばかりの人も含まれていて"がん経験者"って意味で使われているよう。
かくいう私も、"がんサバイバー"なのだが、自分ががんサバイバーを名乗るのはなんとなく躊躇いがある。
(もちろん、がんサバイバーと名乗っている人のことを否定する気持ちはこれっぽっちもない。)
その理由は大きく2つある。
一つ目
"survive"は生き延びる、という意味である。
なんとなく、ある日突然漂流して無人島に流されて、それでも生きるために狩りをしたり、いかだを作って海に出たり、そうやって「自分の力で困難に打ち勝って生き延びた」とかなんだかそういうイメージがある。
積極的に生を掴みにいった、という感じ。
今の私が消極的かといわれると、そうではないけれど、積極的ではないと思う。
強いから頑張っているわけでも、進んで生を掴みにいっているわけでもない。
やらなければ仕方ないからやっているのだ。
こんな人生のスパイスなんていらないのに、自伝が書けるようなネタなんていらないのに。
ただ、平凡な毎日を過ごしていたかっただけなのに。
やらなければ、ただの毎日が脅かされるから、やっているだけなのだ。
やらなければ、しょうがないから。
サバイバーというような立派なものではない。
診断されステージ分類されたら、あとはガイドラインにのっとって、治療のベルトコンベアにのるだけ。
自動的に、流れるようにここまできたのだ。
頑張っていないか、と聞かれるとものすごく頑張っている。
でも、「自分の力で生き抜いた」というよりは、「医学の力をかりて、命をのばしてもらっている」という感覚のほうが近い。
二つ目
これもなんとなくなのだが、サバイバーというのが「無人島から脱出して普通の社会に戻ってこられた状態」のイメージなのだ。
(無人島好きすぎるでしょ、というツッコミは置いておいてほしい。)
あるいは戦争からのサバイバーなどもそういうイメージ。
無事に生還した人。
もう大丈夫、もう衣食住が脅かされることはない。安心していい。
私は今生きているんだけれど、再発するかもしれないし、リンパ浮腫を発症するかもしれない。
この先、生が脅かされる可能性もまだある。
1年後、2年後が保証されていない。
もう大丈夫、と思えるまでは、サバイバーを堂々と名乗れない気がする。
もう大丈夫って思えることがない病気だから、私がサバイバーを名乗ることは一生ないのかもしれないけれど、それはそれで仕方ない。
二つ理由を書き連ねたが、1番の原因は私がまだ自分が「がん」だということを認めたくないからかもしれない。
いつか、「わたし、がんサバイバーなんだよね」と誇らしく笑って話せる日が来ることを願う。
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