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2023 広島東洋カープのベストゲーム

 下馬評をことごとく覆し、ペナントレース2位。
 今年のカープはまだ試合がある!
 と、幸せな気持ちのにわかカープファンに対して、我が家の生粋のカープファンはまだまだ厳しい。
 特に、自力でクライマックスシリーズ本拠地開催を勝ち取れなかったことには、なかなかご立腹の様子でありました。私は素直に2位おめでとう、クライマックスシリーズももちろん応援します。

 閑話休題。

 今季も、楽しませていただきましたが、個人的なベストゲームについて。

 今季、私の広島東洋カープのベストゲームは交流戦の中の一戦。
「鬼門の交流戦」と言われ続けたカープが、なんと勝率は五割で、交流戦七位。今年は優勝だ! と思った鯉党も少なくないはず。もちろん私も、ちょっとばかり期待した。

 その中で私のベストゲームは、三連勝した日ハム戦ではなく、各カードでほぼ一勝二敗した中の勝ち試合でもない。

 6月11日千葉ロッテマリーンズ戦。
 一勝一敗で迎える相手先発は佐々木朗希投手。なんとか勝ち越してほしいと思いながらも、厳しいだろうなと試合前からあきらめは入っていた。

 この三連戦、ほかの球場と明らかに違うと感じたのはロッテファンの応援。スタンドを真っ赤に染めるカープファンの応援と、ロッテファンの黒白の対比はテレビで観戦していても見事で、両ファンの熱い応援が画面越しにもうかがえた。

 最終戦、序盤に満塁弾をあびて早々に厳しい展開となった。
 佐々木投手はやっぱりすごいなあ、もしかして完全試合を食らってしまうのではないか。そんな弱気も出始めた5回表、松山選手の貴重な内野安打からぎりぎりつないで、つないで、二死満塁。

 バッターは9番羽月選手。主力と呼ばれる選手ではない。
 もしかしなくても、ロッテファンの方々ははじめて名前を聞いたのではないかと思う。

 3年前のデビュー戦では2安打3打点の活躍でお立ち台にのぼり、ガチガチに緊張してマイクを握りしめる姿に、思わずがんばれ! とテレビの前で声をかけた。一緒にヒーローインタビューを受けていた松山選手がまるでお父さんのようだった、とカープファンなら記憶しているだろう。

 しかし、彼の守備位置は二塁。カープには菊池選手という高い高い壁が存在する。羽月選手も守備は上手いが、菊池選手と比べられるはずもなく、出場機会は未だ代走や守備固めが多い。

 この日も菊池選手の休養のための先発起用だった。
 満塁とはいえ、二死、そして9番バッター。佐々木投手が油断したとは思わないが、ここで抑える、との気持ちはあっただろう。
 だが、その羽月選手が、この日一番の歓声をあびた。チャンステーマにのせた「羽月」コール。マツダスタジアムでの試合か、と思うほどの圧が生じていた。

 初球のボールを見送ると、そこから空振りを挟んで5球、羽月選手は粘った。佐々木投手はあきらかにギアを上げて160キロ代の剛速球を連投する。
 4球目は日本球界最速タイの165キロのストレート、これを羽月選手がファウルにしたときの佐々木投手の表情は焦っているようにも見えた。
 続くフォーク2球を見送り、ファウルにして2-2。9球目のストレートを、三遊間を抜く左翼へのタイムリーにしてみせた。今季初ヒット。

 カープファンは大歓声をあげ、監督を含むベンチは皆、拳を突き上げた。
 この一打が、佐々木投手の今季本拠地での初失点となったそうだ。

 試合は8回9回にも追加点を入れたが、もう一息で敗れた。
 しかし、羽月選手のあの打席を見られただけで、この日は充分だった。

 この試合の後の羽月選手は、昨年までと同じ代走、守備固めの起用が多かったが、14盗塁はチーム内1位、守備でも要所で活躍した。けれど、やはり打席での活躍は少なかった。

 短期決戦のクライマックスシリーズで、羽月選手の出番はあるかどうかわからない。

 来季以降になるかもしれないけれど、羽月選手の打席での活躍が見たい。
 あの佐々木朗希投手に自己最速を投げさせ、あのストレートを打った彼なら、これからもなにかを起こしてくれると思う。

 今後羽月選手が活躍するたびに、きっとこの打席を思い出すだろう。
 だから、この試合を今季のベストゲームにあげたい。

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