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活き活きと使われるののしりの言葉

英語圏の映画やドラマで、よく「シット」とか「ファック」とか、怒りや苛立ちを表現する場面で耳にすることがあります。

テレビ番組だと「ピー」となっていて、あぁあんなにどこでも聞く言葉なのに、公共放送ではまずいんだなぁ、みんながよく使うからといって、それでも社会的に受け入れられる言葉では無いのだなぁ、と感慨深くピーを聞いたりします。

以前、アイルランド出身の女性と話していた時、何か彼女にとって不都合なことがあったばかりで、はらわた煮えたぎっている様子でした。

彼女は教職についている30代くらいの女性です。丸く大きな目には漆黒のマスカラ、表現豊かに大きく動くリップはあざやかな赤い色が塗られ、暑い日に着るロングワンピースからは肩や背中が見え、直毛のロングヘアは頭頂部にまとめられていました。彼女ははっきりと自分の言葉で思いを言い放つことができる芯のある性格の人です。

いらだちにより沸騰した感情をなんとか処理しようとしている彼女は、私に「ファックユーって、日本語でなんて言うの?サンオブアビッチでもいいけど、なんて言うの?」と質問しました。

え、ファックユーとサンオブアビッチを日本語でどう言うか?頭の中で、日本語で直訳してみましたが、全く一般的に聞かれる表現ではありません。そうですよね?

ちなみにGoogle翻訳にサンオブアビッチを入れると、「畜生め」と出てきました。意図はわかりますが、あまり親しみがない表現だと思います。ファックユーはGoogle翻訳に入れてもカタカナで「ファックユー」そのままでした。ほら、世界のGoogleさんだってサジを投げています。

「うーん、日本語でその表現に当たるものはないなぁ」と私は言いましたが、しかし、彼女は怒りや不満を発散するために、誰かをののしる、大声で罵倒する言葉を必要としているのであって、正論は必要ないのです。そんな彼女を失望させるわけにはいきませんから、私は最も社会的に受け入れられない日本語を、絞り出して彼女に提供しました。

彼女はすぐにそれを気に入り、「クソバカシネー!」と嬉しそうに叫んでいました。お役に立ててよかったです。

似たようなことを聞かれた日本人の友人は、日本語で何か相手を侮辱する言葉を教えてくれ、というリクエストに「タコヤロウ」と伝えて、それを教えてもらった人は嬉しそうに「タコヤロウ〜」と言っていました。

私は、そんなの誰も使わないじゃないか、と言いながら、でも、タコヤロウと外国人がののしる姿は微笑ましいかもしれない、と思い直しました。

タコヤロウを教えてもらった人が、言葉の意味を質問したので、私たちは「タコはオクトパスだよ」と伝えると、「でも、オクトパスはとても賢い動物なのに、なんでそれが侮辱になるの?」と聞かれました。そう言われると、なんでタコが相手に失礼な言葉になるのか、困ってしまいます。むしろ、タコ呼ばりされて光栄だなと思って、ののしりになりませんね。

英語ではののしりの言葉が鮮度よく使われているなと感心するのですが、私が感慨深いなと思う表現は「ア・ピース・オブ・シット」です。Weblio辞書によると「最低、ポンコツ、くそったれ」となっていて、まだそんなに違和感なく入ってくる和訳だと思います。

私は何かつまらない失態をやらかして自分に腹が立つ時に、自分はピースオブシットだ、と使うと感情的にピッタリくるなと感じています。だって、ウンチのひとかけら、ということは、ウンチ全体の価値もないわけで、心底しょうもなくて、自暴自棄、やけくそな心情をうまく表してくれるような気がします。

今現代の日本でも、活き活きと使われているののしりの言葉は何なのでしょうか?社会的に許されない言葉だけど頻度高く使われているものを知っている方は、私の貧しい語彙力を増やすために、こっそり教えてください。ただし、単語だけ教えてもらうと、私がののしられたのかと驚いてしまうので、一言説明付きで教えてもらえるとガラスのハートにひびが入らずに済みます。

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