見出し画像

映画『くるりのえいが』をおうちで鑑賞した話

結婚するまで、初めて出会う人に好きなバンドは誰? と尋ねられた場合、私は「くるり」と答えていた。
(いまだったらスピッツになる。)

くるりとの出会いはセカンドシングル「青い空」のMVから。
時代はインディーズバンドブームが到来した1998年~2002年くらい。
当時の私は音楽の専門学校へ入ったころで、クラスのみんながジャンヌダルクやルナシーを好きな中、私は一足お先にV系を卒業して、下北系ロックバンドに傾倒していた。(友達になった子はゴスペラーズの追っかけのさんだった)
いちばん好きなバンドはグレイプバイン。よくライブに行っていた。
そのころ出会ったのがくるりだ。(この頃、スピッツはもう雲の上の人気だったのでCDのみ追っかけていた)

なんだ、なんだ、めちゃ好きな感じのロックやってるバンドじゃないか。
とすぐにデビューアルバム「さよならストレンジャー」を買った記憶がある。

最新アルバム「感覚は道標」は「さよならストレンジャー」のジャケットをおそらくリバイバルしているのかな。

くるりはボーカル&ギターの岸田繁(写真左)とベースの佐藤征史(写真右)は固定メンバーなのだが、ドラムの森信行(黄色トレーナー)が抜けてからは様々な人々が加入しては去っていった。
そして音楽も基本の岸田メロディーというのは存在しているものの、アルバムごとに新しい要素が取り入れられていて、常に斬新な音楽を提供してきたバンドだ。

今回、なんとデビュー時のオリジナルメンバーで新しいアルバムを制作して、そのドキュメンタリー映画が10月13日から公開されている。

映画館でも見られるし、おうちでも配信(有料)で見ることができたので、私は家でのんびり見ることにした。

私も7枚目のアルバム「ワルツを踊れ Tanz Walzer」までは熱心にCDを買ったりライブに行ったが、その後は他の推しごとにも出かけていたので、なんとなくでしか追ってなかった。

今回、森くんが戻ってくるということで新アルバムと映画を楽しみにしていた。
アルバムと映画の感想としては、やっぱりくるり好きだな、となった。
あと岸田くんと佐藤くんの絆の深さをまじまじと見られたのは貴重だった。

いままで、くるりというのは岸田くんの天才ぶりが発揮されているバンドだと思っていたのだけれど、その彼の発想にひと手間加えているのが佐藤くんだということを知った。
映画のなかだと「ドライブ」という仮タイトルで録っていた曲、出来上がりは「In Your Life」という曲になった。
このボーカル録りが映画にあったのだけれど、岸田くんが迷いながら歌っている姿に佐藤くんが「繁くんのなかで人物が決まれば、良くなると思う(ニュアンス)」というシーンがあった。

へぇ、繁くんって呼んでるのか。

じゃなくて、

佐藤くんって岸田くんの頭のなかをサポートしてくるりを作り上げてゆく指南役なのか!と胸が鳴りました。
(こういうバディ風いいですよね?)
そして全部録り終わり、ミックスダウン(合ってるかな?けんちゃんって人の作業したあとのシーンです)後、メンバー・スタッフで出来上がった「In Your Life」を聴き、曲が終わった瞬間に「おぉ~! えぇんちゃう?」みたいな雰囲気が流れて、なんかこっちまで泣きそうになった。(結構こねくり回して大変だった感じだったので)

そのときの岸田くんの満足そうな笑顔が映画イチ素敵な表情だった。
忘れられない。よい作品ができたときの恍惚感で溢れてた。

今回アルバムのリード曲だと思われる「California Coconuts」。
なんとデビュー曲「東京」みたいなものを作りたいという目標を掲げて作られたと知ってひっくり返った。
いやいや、それ以上になっちゃってるよ。と思っていたんだけれど、京都拾得の50周年ライブで歌った「東京」聴いたら、やっぱり若い頃にしか出てこない不安定な気持ちが込められていて、超えるとか超えないとかは難しいなと思った。

「California Coconuts」には年を重ねたテクニックで涙が溢れるし。
「東京」にはこれからこのバンドで生活をしていくぞ、という勢いとか不安とか入り混じってて、泣ける。
久々に聴いたけど、なんか苦しいんだよな「東京」って。

この映画はデビュー当時にくるりいいなって思っていた人にも見てもらいたいし、森くん時代を知らない方にも見て欲しい。
バンドっていいよな、って始めた彼らが原点に戻って楽しんでいる感じが詰まってて、見ていて心がほっこりする。

原点を楽しんだ彼らが、また次の境地に向かうはず。
どんな音楽が届くか楽しみである。
そのときは少しだけ私の視点も変わっているだろう。

あぁ、きっと佐藤くんの検閲と許可が取れた素晴らしい音楽なんだな、と。


ドライブだけど、ふつうに新幹線の車窓とも合ってた。
京都行きたいし、伊豆の大室山にも行ってみたくなったな。

CMにも使われたみたいで、突然テレビから流れて振り返る現象が起きている。

マサムネさんはくるりのことを羨ましいと言ってたな。
好きな音楽をそのままやっていて、と。
ただ今回、岸田くんが語っていたなかで、森くんとの別れは「三人の冒険」ではこの先やっていけないかもしれないという商業的な考えがあったようだ。

なんか、そういうのってアマチュアで小説書いてる私らにも通ずる気がして。
商業作家になるなら、捨てなければならないものとか覚悟が作品に必要なんだよな、と思った。
ある一定の「好き」を獲得するには、商業的テンプレートが存在する。
それに自分の「好き」を当てはめられるか。
そして客観的に検閲してくれるバディを獲得できるか。
(佐藤くんみたいな存在。ふつうは編集者になるのか? 村上春樹さんは奥さんらしいが)

いやー、ますます岸田くんと佐藤くんの関係性が尊く見えて、眩しいな。

おわり。

この記事が参加している募集

映画感想文

最後まで記事を読んでくださってありがとうございます。 読んでくださった方の心に少しでも響いていたら幸いです。