見出し画像

まちがいだらけのヘッドホン選び(4)~セットで買うかもしれないものと、Bluetoothのこと~

前回までのあらすじ

https://note.com/hamachiichiban/n/n44ef47472fae(注意書きをお読みください)

プレゼントに「いいヘッドホン」が欲しいと口をすべらせてしまったひろし君。
自分の好きな曲(リファレンス音源)を決め、ヘッドホンの使い場所を考え、再生機器との兼ね合いも条件に入れ、
ついに様々なヘッドホンの「スペック表」「仕様表」「機能表」という3枚を見比べたのでした。

はたして、ヘッドホンを買える日はくるのでしょうか・・?


第4章:僕らは関係性の中で生きているんだ、そう、ヘッドホンと周辺機器のようにね




4-0 ご一緒にポタオーはいかがですか


いよいよ、たかし君とおじさんはヘッドホン屋さんにやってきました。
店員さんがやさしく話しかけてくれます。

「いらっしゃいませ。お好きに試聴してくださいね」

「店員さん店員さん。この子に”いいヘッドホン”を見つくろってほしいんだ」

おじさんは、自分でも信じていない「いいヘッドホン」という言葉を、急に使いだすのでした。
これは店員さんへのマウントです。

「うーん。いいヘッドホンか・・むずかしいですね」
「むずかしいかい?」
「ええ。音の良さ、というのは人それぞれの感性でもありますから」
「そこは店員さん、うまいところを・・」
「お年頃になって
出口から攻めよう、というのはわかりますが、周辺機器も揃えて悪いことはありません。音圧はひとつの正義ですからね。スマホならポタアンを持ちましょう。DAP買うでも噛ませて、家用にはDACヘッドホンアンプがあると充実度爆上がりです。あ、無線ですか?コーデックに拘りなければですけど、ハイレゾ行きたかったらあれですよね、あとからドングルで拡張もできるとはいえ・・」
「君、いいねえ」


4-1 アンプの類│DAC/ヘッドホンアンプ/オーディオインターフェース(I/Oインターフェース)

ひろし君がとうとう一言も発しなくなってしまいました。


そして、ヘッドホンが欲しいといっているのに周辺機器の話をされてしまいました。とりあえず、それらを片づけなければいけません。


「音圧」の説明は難しいですが、まあ、ボリューム上げなくても音が大っきい。と思っておけばいいんじゃないでしょうか。
わあ、迫力がある。迫ってくる。音に押されるようだ。

これを稼ぐため、ミキシングやマスタリング作業では、曲の中の音量の上下幅を狭くするコンプレッサー、さらに、マキシマイザー、なるものを使ったりもするとか。説明しません。
そして、ヘッドホンに「インピーダンス」があるというのは、前回書きました。
これが高くて再生機器のパワーも足りないと、音が小さくなっちゃう。音源のポテンシャルとは別の要素で「音圧」が下がってしまうのですね。
M O T T A I N A I。

そこで。
ヘッドホンから音を十全に出すために、パワーアップが必要・・
アンプ(amplifier (アンプリファイア) の略…増幅器)が必要になるわけです。


そこで登場するのがDAC(ダック)
略さず言うとDigital to Analog Converter・・デジタルからアナログへの変換器。「DAコンバーター」と書く人もいます。


え? と思った方はするどい。
言葉を厳密にすれば、DACは、べつにアンプのことではありません。「デジタルデータの音源を、アナログに変換するもの」
だから、
そもそもCDプレーヤーの中にはDACが入っていますし、イヤホンジャックが付いている再生機器はそこにDACがある、と考えてよいし、ライトニング端子やUSB Type-Cに挿してイヤホンジャックに変える短い変換プラグも、DACのひとつといえる。

ただ
「DACだぞ!」とわざわざ名乗って売られているもの・・USB接続のUSB-DACなど・・にはアンプも付いているものが多いため、ざっくりアンプ周りのものとして、呼びます。
ちゃんと呼ぶなら、アンプ内蔵DAC、などがいいでしょう。

まとめると、
イヤホンジャックのある機器にはDACもアンプも付いている。
でも、もっと高品質でパワーある外部DAC&アンプを噛ますことで、さらに音源のポテンシャルを引き出せる
のだ。ということ。

ただ、中には本当にDAC機能しかない、別で再度アンプが必要なものもあるので気をつけましょう。

「ヘッドホンアンプ」というのは、すでにアナログ信号になってるものを増幅させる、アンプ単体(かつヘッドホン向け)のもの。
これも、DAC内蔵アンプ、がありますな。

定義の境界は、またがっていそうです。。。



余談
本当にね・・ヒット製品「ZEN DAC」(ゼン ダック)と「ZEN CAN」(ゼン カン)というのの紹介・評判を読んで、わけわかんなかったんですよね。

「ZEN DAC」を噛ますだけで、スマホ・パソコンからのヘッドホン出力が感動の変化を!するらしい。
でも、「ZEN CAN」と組み合わせるとさらに! 云々。

ZEN DACだけで「良い!」つってんのに、ZEN CANは何をするのか?

これがつまり「DAC」と「ヘッドホンアンプ」の2種だったのですね。
経路を追ってみましょう
(1)まずパソコンから、デジタルで(USB接続で)音源データが
  「ZEN DAC」に入る
(2)内部でデジタルからアナログに変換(DACの機能)しつつ、
  内蔵アンプで増幅
(3)「ZEN CAN」に入り(赤白のRCA=アナログ接続)、アナログのまま
  さらに増幅(ヘッドホンアンプの機能)
(4)イヤホンジャック(=アナログ接続)から、聴いて感動! 
  という経路らしい。

↑ 3番なしでも音は出せます。ZEN DACにヘッドホンを挿せばOK。
ZEN DACにもアンプ機能はあるけど、さらに単体のアンプを噛ませるとさらに。という。はあ。

ついでにいうと、「ZEN DAC」からヘッドホンアンプの機能を抜いて完全にDACだけに特化したのが「ZEN DAC Signature」だそう。わからんよ。


なおZEN CANの「CAN」は、俗語でヘッドホンのことです。
(基本的にcansと複数形でいうようなので、イヤーカップ1つがa canってことでしょうか)

余談終



DAC、ヘッドホンアンプ、というのは、再生したいひとが探す機器ですが、
実は同じ機能を持っている別の機械もあります。
それが「オーディオインターフェース」です!

これは、マイクを繋いでパソコンなどに音を入れるための機械。さらにそこからスピーカーやヘッドホンに出力もできる、インターフェース、です。

もう一度いまの言葉を振り返ってみましょう。

”マイクを繋いでパソコンなどに音を入れる” 
 = Analog to Digital
な工程
”そこ(パソコン)からスピーカーやヘッドホンに出力も” 
 = Digital to Analog
な工程

つまり、DAC機能と、ADC機能をもつ機械となる。
ただ、制作者や配信者じゃないと使わない機能が入ってるので、聴く専には情報が上がって来づらいかもしれません。
でも作る人向きだから、音質も当然ちゃんとしてるはずですわね。

なお「I/O(アイオー)インターフェース」という呼び方もあります。インプット・アウトプットのインターフェースという意味。



4-2 ポタアン/ポタオデ(ポタオー)/ドングル

ポタアン」は、ポータブルアンプの略。サイズ小さめ、充電式などでコンセントに挿さなくていい、DAC内蔵アンプ等のこと。
スマホの出力を強めたい、外出先でも音を強くしたいときなどに。


ポタオデ」は何のむずかしい言葉でもなく、略したせいでわかりにくくなっただけの、ポータブルオーディオの意。「ポタオー」と略すひとも。
このカテゴリの中にヘッドホンも入っている構図です。

単に持ち歩きを指すこともあれば、「ピュアオーディオ」に対しての呼び名になることもあるかもしれません。


ドングル」はパソコン用語で、差し込んで使う小型機器のこと。USBメモリとかもそうです。
そのようにUSB口に挿してイヤホンジャックを作る小型DACを、ドングル型、ドングルDACと呼んでたりするよう。

似たサイズ・用途で、スマホなどに挿して使うスティック型DACというのもあります。ケーブルDACもあります。形の違いですね。

なお、ドングルDAC、とくりかえし唱えると・・
なんだかいい気持ちになります。



4-3 DAP/Dappi

「DAP」(ダップ)は、DACとは全然ちがうことば。

こちらは「デジタル・オーディオ・プレーヤー」のことです。昔のiPodやデジタル化以降のウォークマンなどなど。とにかく音楽データを入れて・あるいはストリーミングで、聴ける、音楽特化の機器のこと。
特化してるだけあって、単体ですさまじい出力となるものがあったり、また接続端子や対応するファイル、コーデック(なんだそれは)、などなどにおいて、音楽を楽しむための能力・機能が充実していることでしょう。

自分の話ですが、iPhoneが出てシェア拡大の初期のころ「これでiPodの立場がなくなるじゃないか。自社製品を・・あほな」と言っていたのは大間違い。
音楽聴ける小機械、の中にも、どえらい機能の差はあるのです。

というわけでポタオデ界を進むならこちらの道も。
凄まじい進化がおこなわれているわけですが、話はフットボールアワー後藤さんがDAPに感動した話にとどめましょう。


つづいて
Dappi(ダッピ)は、旧ツイッター上で自民党などの応援、また他政党への批判・自作のデマ(フェイクニュース)拡散をしていたアカウント。
使用していたネット回線が開示請求により明かされ、回線を持つ会社「ワンズクエスト」は自民党の取引先と判明。
ではその活動は自民党みずからの発注による「仕事」だったのではないか?と疑念が上がった。
インターネット時代の倫理の底割れ、ルール無用を考えさせる存在、騒動である。

2023年3月13日、東京地裁の新谷祐子裁判長は、ツイートの投稿者名を開示するようワンズクエストに命じる決定を出した[59]
同年10月16日、新谷裁判長は「投稿は会社の業務」と認め、ワンズクエストと代表に計220万円の賠償と投稿の削除を命じた[48]。新谷裁判長は、業務時間の大半が投稿に充てられていたことなどから「代表の指示の下、会社の業務として行われていたというほかない」と指摘。投稿者が代表自身である可能性も「相応にある」とした[60][18]

https://ja.wikipedia.org/wiki/Dappi

まちがえないようにしましょう。だれが。



4-4 Bluetooth/コーデック/レイテンシー

さて、ここから先はBluetoothのこと、なので、基本はワイヤレス対応ヘッドホンだけに関わる話です。


Bluetoothは今さら説明が要りませんが、無線通信の共通規格のことですね。日々進化して今はバージョン5.xの代まで来てますが、下位互換性があるので古いものでもべつに大丈夫。
「でも、最新バージョンが一番音質いいんでしょ?」
かと思うと、とにかく色んな事に使うのがBluetoothなので、
そこじゃない面でバージョンアップしてってるようです。

音質に影響するのはBluetoothのバージョンよりも「どんな方式でデータを送るか」
という「コーデック」(Codec)のほうでしょう。

例えると
「Bluetooth」が、発信側と受信側に見えないトンネル(無線通信)をつくる技術としたなら
送るファイルをどう小さくパッキングするか、が「コーデック」
このなかで、荷造りがいわゆる「圧縮」荷ほどきが「伸張」という工程になります。

先に「コーデック」という言葉の由来を知っておきましょう。
これは、Coder(コーダー)とDecorder(デコーダー)の頭をとってつけた呼び名です。
「コーダー」によりデータを別のかたち(符号)に変えて=「エンコード」(Encode)
「デコーダー」で元に戻す=「デコード」(Decode)。

面倒くさいですね。

荷造り=圧縮=エンコード して
 
 ↓↓送信↓↓
荷ほどき=伸長=デコード 
する
そのやり方のことが「コーデック」
と、ざっくりまとめておきましょう。理工的にいえばちょっとちがうのでしょうが・・。


さて問題は、このコーデックにも種類があり、音質や、データの届く速度が微妙に違うということです(それを 微妙 と思う人はこだわらないわけですが)。
音質の差とはなにか? 「劣化」度合いの違いです。
たとえのつづきですが、荷造りをすれば、荷物はぐねったり、後がついたりしますよね。そのデータ損失を「劣化」と呼びます。圧縮をすれば劣化はつきもの。

ジュースが好きな方は濃縮・還元というワードもいいかも。やっぱり、元の味とはちょっと変わってしまう。
そこで、どのコーデックがどんな音質変化をするか、気にする人は気にすると。

前提として
送り手の機器と、受け手のヘッドホンと、どっちもそのコーデックに対応していないと、使えません。
送る側で荷造りできなきゃ、荷ほどきだけわかってても仕方ない。
まずはいま持っている再生機器(スマホやDAP)がどのBluetoothコーデックに対応しているかを確認。
そこからヘッドホンの絞り込みに入りましょう。


なお、Bluetoothのことで目にするかもしれない「レイテンシー」は、情報が来るまでにかかる時間。待ち時間、遅延時間ということ。
無線で送る手数のぶん、かかるのは仕方ないですが、まあゼロコンマ何秒。
動画の音声がちょっとずれたり、反射神経のいるゲームだと反応が遅くなってしまったりはあるかもしれません。用途的にシビアなら、お店で試しましょう。


というわけで、圧縮音質と遅延時間が、コーデックでは重要かと思います。

それではいよいよコーデックの種類。
次項で確認しましょう。




4-5 Bluetoothコーデックの種類│SBC/AAC/aptX/aptX LL/aptX HD/aptX Adaptive/aptX Voice/aptX Lossless/LDAC/Samsung Scalable Codec/HWA(LHDC)/UAT/LC3


きゃああああああああああ。



現状、どんなBluetooth機器も使えるのが「SBC」(エスビーシー)
ハイレゾ音質が伝送できてAndroidスマホなどでシェア多めなのが「LDAC」(エルダック)

ま、それくらいで・・。


4-6 コーデックはあちこちにある/非可逆(Lossy)圧縮/可逆(Lossless)圧縮

まとめますと
前提として、スマホからピピピー(無音)とワイヤレスイヤホンに送られる間で、圧縮と元に戻す作業がおこなわれてるわけで。
そうしないとBluetoothで扱える容量を越えちゃうわけで。
ただ多くの方式では完全に「元に戻す」ことはできないので、「劣化」が起きるというわけで。


そして
これはBluetoothだけの話ではなくて。

スマホにiTunesで音楽を入れるときにMP3AACコーデックを選び、圧縮して容量小さくしたり、
音楽ストリーミングサービスもふつうは圧縮音源で送られていたり、
配信で購入した曲が圧縮音源だったりと
コーデック、また圧縮データ(音源)は、あらゆる場所にあります。

※画像データでいえば、よく見るJPEGやPNGは、圧縮データです。
非圧縮データはRAWファイルという形式で、写真撮る人じゃないとあまり扱わない。

ネット上は圧縮したファイルだらけです。ふつうです。


音楽も
ネット経由での音楽は圧縮されてCDより音質落ちてるのがふつう・・だったんですよね。
とくに注意書きなく。
だからむかし「データで買うとCDより安い」と喧伝してるのを見て、音質落ちてんだよね?当たり前だろ! とムカっ腹を立てていた自分は、どうも正しいようです。なんの話。

もちろん、ケータイの料金はデータの使用量で決まってきますから、サブスクで聴き放題契約して、浮かれて非圧縮を聴きまくったらプランが繰り上がり支払いが大変・・というのもあるでしょう。

でもこの「音質の基本ラインを落としといて知らんぷり問題」は、また次に考えなければいけません。


ともあれ
そうして、劣化が起きる圧縮のことを「非可逆圧縮
 ・・逆行不可な圧縮・・Lossy(ロッシー)
なんと劣化が起きない圧縮もあり、それは「可逆圧縮
 ・・逆行可能な圧縮・・Lossless(ロスレス)と呼びます。


ロ・・・・「ロスレス」だって!!??




周辺機器を抱き合わせで売りつけられそうな、ひろし君とおじさん!
そんななか、話はいつのまにか無線電波の中へ・・

次回  ロスレスでハイレゾのロハスなエイジング、あるいは庭に電柱を立てる派  につづく。




今回までのとりこぼし

・「フィールド・レコーディング」
・「ハイレゾ」
・「ダイナミックレンジ」
・「Hi-Fi」(ハイファイ)
・「バランス」
・「ロスレス」
・「解像度」
・「MQA」
・「DSD」
・「イマーシブオーディオ」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?