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希望が持てる時代に生まれたかった。

取引先の担当の人が産休に入るので、明日から担当者が変わると連絡がきた。その電話を受けた先輩は「それはそれはおめでとうございます〜」と言っていた。たぶんなんらかの事情があって、直前での連絡になったのだろう。おめでたいことには違いないけれど、電話してきた人は心苦しかっただろうなと思って少し同情した。

私自身、婚約者と同棲していて今年中には入籍する。知人友人にも、結婚したり出産したりする人がポツポツと出始めて、結婚と妊娠と出産、さらにその先の現実を目の当たりにする機会が増えた。

いくら産休や育休が整備されていようが、妊娠出産育児と仕事を同時にこなすのは本当に大変なことだと思う。そして、妊娠出産で仕事に穴をあけるのは絶対に女性なのだ。運良く産休入るまでは問題なく過ごせたとしても、産休育休を経て問題なく職場復帰できる保証はどこにもない。子供に障害があったり、自分が働ける状況ではなかったり。無事に職場復帰をできたとしても、育児と仕事の両立は本当に大変そう。子供は産みたいが、現実を見ると産みたくないなと思ってしまう。

仕事のキャリアだってある。私はギリギリZ世代に含まれる年代だが、今まで男女の差別なく勉強して進学して就職して働いてきた。女の子だからお茶くみコピーをしてるだけでいいよ、寿退社がスタンダードだからお嫁さん候補として頑張ってね、なんて言われたこともない。重いものを持ってもらうことはあったし、お茶くみだってしたことはあるが、男性に混じって営業にだって行ったしプレゼンもした。まだまだやりたいことはたくさんあるし、もっと結果を出して社内での立場を確立しておきたい。ただ、子供を望むのであれば20代も半ばを過ぎた私にはもうあまり時間はない、という現実。

共働きが当たり前の世の中で、専業主婦になろうなんて思ったこともない。社会人になって数年経ち、先輩たちを見ればもう庶民は専業主婦を養えるほど豊かではないのは身に染みて感じている。

そんな中で、妊娠出産という大きなブランクとリスクを背負うことの恐怖は計り知れない。ただ、子を産まなければ私たちの生きる社会はさらにどん詰まっていくだけだ。もうそうなってもいいや、と思えないくらいには私は人間の文明や文化や歴史を愛している。人間が時に殺し合い、時に愛し合いながら作り上げてきたこの社会をまだ愛している。
男性がなんだ女性がなんだと言うつもりはない。男性が妊娠できないのは太古の昔から変わらぬ事実だし、それならばできる人がするしかない。この愛すべき社会を維持していくためには。

分かっている、分かっているけれど、それでもこれからもっと良くなっていくという希望を持てる時代に生まれたかった。

生まれた時から不況で、失われた10年が20年になり30年になっていくのを見て育った私たちは、いくら頑張っても高度経済成長期のようには稼げないことも、自分の親世代のようには給料が上がっていかないことも、もうよく分かっている。私たちが高齢者になる頃には、年金だって大してもらえないだろうことも。

数年前に「保育園落ちた日本死ね!!!」という文章がバズったのを覚えている。当時まだ大学生だった私はこの文章を読んでもどこか他人事に思っていたけれど、今は少しは理解できる。
これから経済や環境がよくなっていく希望もなく、寿命は伸びて人生の時間ばかり長くなっていく、生きているだけでお金はかかる、物価は高騰し続け、少子化がグングン進んでいるから子供産め産めっていうわりに産んでも今の生活がさらに苦しくなるとしか思えなくて、でも産まないともっと悪くなっていくことも分かっている。

繰り返しになるが、これからもっと良くなっていくと希望が持てる時代に生まれたかった、と思う。
今年より来年、来年より再来年と給料(手取り)も上がり景気も良くなっていくと思えたら、そして子供を産んで育てて1人前にすることができるだろうと思えたら、こんなに人生が長いことを不安に思わないですんだのに。

それでも、今、私が生きているのはこの時代だから、できることをやるしかないのだろう。

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