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こないだのつまみ #17 サメハツ

「ハクオーさんは髪が伸びるの、早いねえ……」
美容師のTさんがしみじみ言う。Tさんにお願いするようになって1年ちょっとだが、どうやらずっと思っていたようだ。

やっぱりなあ。
私は髪も爪も伸びるのが早い(らしい)。自分でも「こないだ切ったばかりじゃん」とか言いながら、毎月2~3回は爪を切っている。ああ……なんというのか、生命エネルギーを無駄遣いしてるように思えてならない。若い頃は気にならなかったけど、40代も後半になると「そんなことにエネルギー使わないでよ」なんて気持ちになってしまう。

たとえば朝、7時間ぐらいしっかり寝てるのに疲れが残ってるときなど、ふと爪が伸びてることに気づき「そっちにエネルギー使わないでくれ!」なんて我が体にツッコみたくもなる。髪も心なしか細く頼りなくなってきたこの頃、伸びるほうにパワー使わないで頼むよとお願いしたくなる。まったく体というのは融通がきかないねえ。

なんてことをブツクサ心で言いつつ、神田駅近くの居酒屋でサメハツをつまみに飲んでいた。サメハツ、つまりはサメの心臓である。これがね、うまいんだ。臭みの一切ない極上のモツ刺しのようなおいしさ。良質の牛レバに近似する食感とコクがあるんだが、さすが海の生きもの、軽やかさと清澄感が段違い。もっと注目されていい食材だと思うんだがな。

大衆酒場『五の五』神田南口店、サメハツ 539円

こちらのお店では牛レバ風にごま油と塩でいただくスタイルだったが、しょうが醤油もいいだろうな。軽く炙ってもうまそう。うーん、やってみたい。

宮城県の気仙沼(けせんぬま)というところはサメハツが名物で、「モウカの星」の名前で知られている。モウカザメ(ネズミザメ)というサメの心臓で、「星」とは漁師さんたちの呼び方で心臓のことだそうな。一度気仙沼でサメハツで一杯やりたいと思いつつ、まだ果たせていない。



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