『アデル、ブルーは熱い色』で、熱い愛を目撃する


この映画をひとことで表すとすれば、「一瞬の熱さ」。



『アデル、ブルーは熱い色』は、アブデラティフ・ケシシュ監督の作品。

主人公のアデルが、ある日エマという女性と出会い恋に落ちるという物語。

セリフではなく空気で登場人物の心情を描写していたり、映画全体をとおしてブルーが散りばめられていたりするのが印象的だ。



この映画をみて考えさせられるのは、こんなにも情熱的な愛を経験することができる人はなんて幸運なのだろうということ。

アデルとエマは、出会いの瞬間からひと味違う。

道路ですれちがった瞬間、なぜかお互いから目が離せなくなり、「あれ?」と思って振り返る。

その後、偶然会って話してみると、やっぱりなにかの予感がする。

言葉にはしないけれど、目と目で語りあう。

いっしょにいることがなぜか「正しい」と思え、違和感がまったくないのだ。



でも、アデルたちは結局生涯を共にすることはない。

ちょっとしたすれ違いからもめごとが起き、お互いを求めあっているのにもかかわらず、別々の人生を送ることになる。

ハッピーエンドを期待していた人からすれば、肩透かしをくらった気分だろう。



それでも、この映画は最高に美しい。

それは、どうしようもなく熱い愛が、あふれんばかりの熱量をともなって盛大に輝く一瞬を、しっかりと捉えているからだろう。

その一瞬が大切なのであって、永遠につづくかどうかは問題ではないのだ。



だから、この映画をみたあとはとても疲れてしまう。

全力の愛のもつ熱量にやられてしまうのだ。

でも、しばらくするとまたみたくなる。

こんな愛が存在するのなら、この世界もわるくないと思えるから。




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アデル、ブルーは熱い色(La vie d'Adele)

アブデラティフ・ケシシュ

2013年/フランス/カラー/179分