9.秋雨は申し訳程度に

「おい風神」
「なんだ雷神」
「貴様、風を吹かせることは得意かもしれないが、雨を降らせることはできないのではないか?」
「かくいうお前は、雨が降っていないと雷も起こせぬのではないか?」

風神は不意の雷神の言葉に、ムッとして言った。

「青天の霹靂という言葉があるだろう」
「それは慣用句だ。天界では禁じられているのをお前が一番知っているはずではないか」

雷神は、背負う太鼓を小刻みに指で弾き始めた。

「秋雨が降らないんだ」
「秋雨?」

不穏なものを感じ、風神は尋ねた。

「前線は頻繁に出ていたではないか」
「それが前線で毎回撃退されているらしい」
「秋雨が、前線で、撃退?」

ますます分からず風神は首を傾げた。

「一体何が起きているのだ」
「検討もつかんが、俺たちの秋の稼ぎである秋雨が降らんことには、今月の飯もままならないだろう?」
「確かに」

風神もぶら下げている袋に目をやった。

まだスーパーのビニール袋の方が役に立ちそうである。

「前線に出向くことは可能か?」
「馬鹿を言うな、戦地だぞ」

雷神がとんでもないというように、首を振った。

「しかし、雷神よ」

風神は冷静に言った。

「我らは風と雷を司る神ではないのか?」

秋雨を救うべく、前線に赴任した風神と雷神。

そこで見たものは、下界の人類による技術革新により、雲を吹き飛ばし、雨を晴れにする機械であった。

根本から雲を無くされては雨など降らせることなど到底できない。

天界での協議の末、「ならば雨を降らさない」という審判が下された。

申し訳程度にパラリパラリとふる奇妙な秋雨は、恵みの雨とは程遠い。

テクノロジーはお天道様には敵わないのではないかな。

風神と雷神は、また今日も、日雇いの絵のモデルで日銭を稼いでいる。

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お題:奇妙な秋雨 必須要素:周囲とのレベルの違いを見せつけるような巧みな描写 制限時間:15分 文字数:764字

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