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Wの喜劇@成田/連載エッセイ vol.54

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.56(2010年2月)」掲載(原文ママ)。

親愛なる読者の皆様、毎度毎度の『今更感』ながら、あけましておめでとうございます。
新年早々の豪雪に各々無事、打ち勝つ事が出来たであろうか?

私と言えば、そのあまりな雪の降りっぷりに少々心細くなり、同じ市内に住む他院のオーナーと結託し、それぞれの院の雪かきを協働で行う『共闘同盟』を結成。

さあ取り掛かる前に腹ごしらえだと、元旦から焼肉店へ駆け込み、近年流行りの『草食系男子』ならぬ『肉食系カイロプラクター』として新年のスタートを切る始末。

いやはや北国の正月は『肉体労働』と切っても切れない関係にある事を再認識した次第である。

(しかし…元日において
 焼肉店が他の飲食店に比べて
 かなりの高確率で営業しているのは
 何故なのだろう…?)

そんな訳で、ここ数年はお馴染みの状況から始まった今年も、これまた例年に漏れず、三が日を過ぎれば忙しい日常が始まり、数日の施術日と2回の地元セミナー、そして関東への講師出張1回を乗り切ると、例の『恒例行事』が待ち構えていた。

そう、このコーナーの熱心な(マニアな!?)読者であればお判りであろう、1月はアメリカ研修の季節である!! 

と、ここまで読んで、それこそマニ…熱心な読者の方は軽い違和感を覚えるかも知れない。
例年は表面の記事と合わせて、『アメリカ研修ネタ』は4月号に掲載されるのが常であるからだ。

しかし今年は趣向を変えて、なんと2号連続でアメリカネタを扱おうと思う。
と言うか…今号は正確には『アメリカ研修・出発前ネタ』とでも表現しようか…。

出国手続きを終え、飛行機に乗り込むまでのその僅か1時間という時の狭間に、私は2つの悲劇(喜劇?)に襲われる事になる。

今回はその一部始終を公開しよう!!

突然ではあるが極論から言えば、如何に私が国内外問わず業界の発展の為に動き回っていようと、院へ施術を受けに来る患者さん達にとっては、何ら関係ない話である。

私自身もその事を殊更アピールするつもりもない。
いつでも目の前の患者さんとの時間を大切にする『臨床家』をベースに活動していきたい。

これは偽らざる『本音』である。

本音ではあるが…、たまにはその頑張りを患者さんにも見て頂きたいと考える事も当然ながらあり、その傾向は特に海外研修&出張の際に顕著で、結果として院には写真をふんだんに使用した少々懲り過ぎの掲示物がその都度増えていく事となる。

そんな私の心強いパートナーが、昨年春のカナダ出張の際に購入したコンパクトデジカメである。

クラス最小のコンパクトボディは、海外での街歩きの際『手ぶら』が基本の私にとって、ジーンズのタイトなポケットにも収まりが良く、長い付き合いになるであろう事が予想された…あの時あの瞬間までは…。 

時は離陸の1時間前、場所は搭乗口での事だった。

全参加者中、『カイロプラクター・CA(カイロプラクティックアシスタント)・セラピスト』の『院三役』が揃って参加している院は、私の院ともう1院だけであり、今回はその辺を強調した掲示物を作ろうと、出発前から様々なカメラ構図を想像しては悦に入っていた私であったが、そろそろ実行に移さなければならない。

まずは『出発を待つ3人』ってなアンバイの写真からスタートしよう。

私は他院のオーナー院長であるU氏を呼びつけ、離陸準備をする機体をバックに輝ける1枚目の写真撮影に臨んだ。

U氏は手馴れた様子でシャッターを押し、構図にうるさい私を気遣って、画面確認の為に早速カメラを手渡そうとする…
受け取ろうと手を伸ばす私…
ところが…
U氏の手から不意に滑り落ちるカメラ…
届かない私の手のひら…
引力に従順なカメラ…
引力に反して眉と口角を引き上げる私&U氏…
床に叩きつけられるカメラ…
レンズの先端が弾け飛ぶカメラ…
虚ろな目で天井を見上げて転がるカメラ…
カメラ…
カメラ…。

のおぉぉォォォォぉぉ~!!!! 

それから約30分間、私がまともに口が利けなかったのは言うまでもない…。

(心のBGMは勿論
 短調の名曲『ドナドナ』である。)

幸いな事に、先代のデジカメを予備で持って来ていた私は、この悲劇を『ネタ』として扱う事で心の均衡を回復すべく、事件の再現写真(例:床に転がる壊れデジカメに慄く私の図 etc)を一心不乱に撮影し続けた。

その先に、更に心を乱す出来事が待っていようとは露知らず…。

さて、いよいよ搭乗である。

CA(こちらは『キャビンアテンダント』ね!)に搭乗券をチェックして貰い、いよいよ飛行機に乗り込まんとする私の行く手を、4人の屈強な男女が仁王立ちで遮った。

そう、昨年末、米国にて起きた旅客機爆破テロ未遂事件の影響で、昨今、搭乗者全員に厳重なボディチェックが実施されているのだ。

よし!!
コチトラ日本男子、逃げも隠れもせん!!
如何様にでも調べるがいい!!
私は虎視眈々と自分の番を待った…。

『NEXT!!』

私を呼び付けたのは中肉中背の女性係員。
彼女はやや横柄な態度で

『ジャケットのマエをアケテクダサ~イ』

とオーダー。

ダウンジャケットのボタンを外し、戦いに備えて翼を広げる闘鶏の様に身構える私。
2人の視線が交錯した刹那…。

『OH~!!スゴイですネ~!!』

恥ずかしそうに顔を背ける彼女。

『…??』

そのリアクションに思わず『何かしら』がはみ出してやしないかセルフボディチェックをする私。

大丈夫だ、そこには正月の不摂生が祟ってややラインを崩した中年の胴体があるだけだ。
ホッと胸を(腹を?)撫で下ろす…。

しかし、考えてみれば彼女達も不憫だよな~。
テロ対策とはいえ、1人1人の、しかも場合によっては異性の身体をここまで念入りにチェックしなきゃなんないんだもんな~。
誰も好き好んで、こんな中年アジアンの胸や腹を『OH!!WOW!!』言って顔赤らめながら弄りたくはないよな~。

されるがままになりながらも、そんなパトリオットな姿にすっかり感服した私は、チェックが終了し満面の笑みで見送る彼女に敬礼で別れを告げたのであった…。

さらば勇敢なる戦士よ…。

狭いエコノミー席の通路を辿って、ようやく座席に着いた私が隣席の友人に早速振った話は、もちろん先程のボディチェックの話。
その念入りな様に甚く感動した旨を伝えると…。

『俺…そこまでされてねぇよ…
 …ってか胸とか触られてねぇし…。』

『…????』

いやいやそんなハズはない…。
私はその証言を否定すべく、他の複数人にも『証人喚問』を請求するが…

『ありえん!!』

『ムリ!!』

…そして決定的な一言が…。

『俺…お前の後に
 同じ人にボディチェック受けたケド
 そんなコトされなかったぜ…。
 ジャケット捲った時
 「NICE BODY!!」
 とは言われたケドな…』。

なあぁぁァァァァぁぁ~!!!!

あれは…『趣味』だったんすかぁぁ…!? 

こうして『お嫁に行けない身体』になりながらも始まった今年のアメリカ研修であるが、続きは次号。
乞うご期待!!
(新年早々『下ネタオチ』かよ…苦笑)


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