中岡 始

南大阪在住。 ミラーレスで色々撮っています。 関西のお寺や神社、花などを撮るのが好きで…

中岡 始

南大阪在住。 ミラーレスで色々撮っています。 関西のお寺や神社、花などを撮るのが好きです。 1976年生。夫を溺愛する変態。 今再び近畿36不動を巡礼中。 写真ACにも素材をアップしています。https://www.photo-ac.com/profile/23992544

マガジン

  • 春の終わり、夏の始まり

    note創作大賞2024参加小説です。

  • 寺社参拝記

    私の、これまでの参拝の記録です。 おもに近畿の寺社を訪れています。 寺社の風景、空気感などをお伝えできればと思っています。

  • 中岡始の写真

    出かけた時に撮った写真、詣でた寺社、花など… 私が撮った写真の記事をまとめています。

  • 旬杯川柳

    • 93本

    旬杯川柳部門の参加記事

  • 2023年3月19日 快晴の高野山へ 記事まとめ

    2023年3月19日、うりぼうさんと訪れた高野山の記事をまとめています。 寺社、風景、コケなど。

記事一覧

固定された記事

春の終わり、夏の始まり 1

晩秋の雨が窓を叩く音が、夜の静寂を破る。 唯史はリビングのソファに座りながら、ぼんやりと外を眺めていた。 最近、美咲の行動に変化が見え始めていた。 唯史が美咲と結…

中岡 始
13日前
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企画参加:浮気のライン

さて、今週も珈琲次郎さんの企画に参加させていただきます。 浮気のライン、かぁ…。 難しいなぁ。 さて。 私が考える浮気のライン。 珈琲次郎さんの記事によると、 ま…

中岡 始
7時間前
13

春の終わり、夏の始まり 23

初めて公園で写真を撮ってから、唯史の写真への興味は深まっていった。 義之はそれを見逃さず、構図の決め方、光のとらえ方、被写体との距離の取り方など、写真の基礎を少…

中岡 始
10時間前
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5/10 京都・貴船 その1

5月10日、夫と京都・貴船を訪れました。 5月7日に53歳になった夫への、ささやかなプレゼントです。 11時ごろ、貴船に到着。 11時半に川床を予約してあったので、お店に車…

中岡 始
1日前
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春の終わり、夏の始まり 22

6月第1週の末、唯史と義之は近場の公園に出かけた。 広々とした敷地は自然が豊かで、池や遊歩道、ベンチが整備されている。 あいにくの曇り空であったが、時折風が吹くと…

中岡 始
1日前
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春の終わり、夏の始まり 21

6月に入った、最初の週末。 唯史は義之の自宅へと移り住んだ。 唯史の荷物は、それほど多くはなく、衣類少々と愛用のノートパソコンのみ。 これまでの生活で多くの物を手…

中岡 始
1日前
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春の終わり、夏の始まり 20

義之から同居の提案を受けた夜。 唯史は部屋の灯りを落とし、窓際に座って月明かりを眺めながら中学3年生の頃の自分を思い返していた。 窓から柔らかな光が部屋に差し込み…

中岡 始
2日前
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春の終わり、夏の始まり 19

結論を出した義之の行動は早かった。 翌日は平日であったが、「急で悪いけど話がある」と唯史にメッセージを送信した。 ほどなく唯史から「OK」との返事があり、唯史の勤務…

中岡 始
3日前
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春の終わり、夏の始まり 18

その日の、夜。 義之は唯史が本格的に帰郷した喜びにひたっていたが、内心は複雑なものがあった。 中学時代、義之にとって唯史はただの友達ではなかった。 あのクラス写真…

中岡 始
4日前
22

春の終わり、夏の始まり 17

東京での生活に別れを告げた唯史は、南大阪の実家に戻った。 新たな勤務地でる大阪支社への通勤は実家からでも十分可能で、唯史は両親の温かい支えを受けながら、少しずつ…

中岡 始
5日前
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春の終わり、夏の始まり 16

4月の終わり、唯史はこれまで勤めていた会社に退職届を提出した。 その決意は固く、新しい人生を歩むためには、今の環境から離れることが必要だと、強く感じていたからだ。…

中岡 始
6日前
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春の終わり、夏の始まり 15

唯史も2次会には参加せず、まっすぐ実家に戻った。 母の佳代子が、客間に布団を敷いてくれている。 唯史はゆっくりと布団に身を横たえながら、義之からの提案である「帰郷…

中岡 始
6日前
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春の終わり、夏の始まり 14

同窓会が終わった後、2次会へと流れる者も多かったが、義之はそのまま帰宅した。 義之は、祖父から譲り受けた平屋一戸建てに住んでいる。 畳敷きに寝転がり、天井を見なが…

中岡 始
7日前
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春の終わり、夏の始まり 13

遅れてやってきた参加者も増え、同窓会はさらに盛り上がっていた。 あちこちで交わされる昔話、そして近況報告。 少々酔いを覚えた唯史は、義之を誘って居酒屋の裏手にある…

中岡 始
7日前
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春の終わり、夏の始まり 12

同窓会は、地元の居酒屋で行われた。 入り口の引戸には「本日貸し切り」と書かれた札がかけられている。 カラカラと軽い音を立てて引戸を開けると、唯史を包み込んだのは…

中岡 始
8日前
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春の終わり、夏の始まり 11

同窓会、当日。 12時に羽田空港を発った漆黒のスターフライヤーの機体は、定刻通り関西国際空港に到着した。 関西空港のターミナルに足を踏み入れると、即座に懐かしい匂…

中岡 始
9日前
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固定された記事

春の終わり、夏の始まり 1

晩秋の雨が窓を叩く音が、夜の静寂を破る。 唯史はリビングのソファに座りながら、ぼんやりと外を眺めていた。 最近、美咲の行動に変化が見え始めていた。 唯史が美咲と結婚したのは3年前、お互い26歳の頃である。 結婚当初の美咲はいつも明るく、仕事の話も積極的にしていたが、ここ数週間は様子が一変していた。 唯史が「今日はどうだった?」と尋ねても、「忙しかった」という一言しか返ってこない。 さらに詳しく聞こうとしても「特に何もないわ」と話をそらされてしまう。 美咲は広告代理店で仕

企画参加:浮気のライン

さて、今週も珈琲次郎さんの企画に参加させていただきます。 浮気のライン、かぁ…。 難しいなぁ。 さて。 私が考える浮気のライン。 珈琲次郎さんの記事によると、 ま、確かにそうですね。 浮気の認識は人それぞれ。 二人で食事くらいなら大丈夫、という人もいるでしょうし。 駄菓子菓子。 私が考える「浮気のライン」とは、「浮気になりそうな行為はすべてアウト」です。 どこまでが大丈夫、ではなく。 浮気に発展しそうな行為はすべてアウト。 具体的にどういうことかというと、「楽し気

春の終わり、夏の始まり 23

初めて公園で写真を撮ってから、唯史の写真への興味は深まっていった。 義之はそれを見逃さず、構図の決め方、光のとらえ方、被写体との距離の取り方など、写真の基礎を少しずつ教えた。 梅雨の晴れ間を狙って、唯史と義之はカメラを持って色々な場所を訪れていた。 特に、寺社の静寂と荘厳に魅力を感じた唯史は、その美しさを写真に収めることに夢中になっていた。 「唯史、ここの光がいい感じになってる」 義之が指摘すると、唯史はモニターをのぞき、シャッターを切る。 寺の石段に映る光と影、苔むし

5/10 京都・貴船 その1

5月10日、夫と京都・貴船を訪れました。 5月7日に53歳になった夫への、ささやかなプレゼントです。 11時ごろ、貴船に到着。 11時半に川床を予約してあったので、お店に車を置かせてもらい、貴船神社に向かいました。 貴船散策は、とても気持ちがいいです。 この日の気温は24度ほどだったでしょうか。 川のせせらぎ、木々の緑、心地いい空気… 五感が癒されます。 お約束。 つつじがまだ咲いていました。 スローシャッターで撮りたくなるやつ。 貴船の川床は、早いところでは5月

春の終わり、夏の始まり 22

6月第1週の末、唯史と義之は近場の公園に出かけた。 広々とした敷地は自然が豊かで、池や遊歩道、ベンチが整備されている。 あいにくの曇り空であったが、時折風が吹くと木の葉がさわさわと音をたてていた。 花壇には色とりどりの花が咲き乱れ、歩いているだけで心が癒されるような雰囲気だ。 まず二人は、人気の少ない遊歩道を歩くことにした。 唯史は先日借り受けたカメラを、義之も愛用のフルサイズカメラを首からかけている。 「とりあえず、好きなように撮ってみたらいいよ。要はモニター見ながらシ

春の終わり、夏の始まり 21

6月に入った、最初の週末。 唯史は義之の自宅へと移り住んだ。 唯史の荷物は、それほど多くはなく、衣類少々と愛用のノートパソコンのみ。 これまでの生活で多くの物を手放してきたことを物語るように、その荷物は小さなスーツケースに収まっていた。 義之の自宅は、祖父から譲り受けた平屋一戸建てである。 唯史のために用意された部屋は和室で、壁際には座卓と座椅子が置かれている。 部屋の隅には、洋服をかけるためのハンガーラックも用意されていた。 「必要なものがあったら、また買いに行こう。

春の終わり、夏の始まり 20

義之から同居の提案を受けた夜。 唯史は部屋の灯りを落とし、窓際に座って月明かりを眺めながら中学3年生の頃の自分を思い返していた。 窓から柔らかな光が部屋に差し込み、唯史の記憶の中にも淡い光を投げかけていた。 あの頃の唯史は、その整った容姿から常に注目され、それが重荷になっていた。 同級生たちはその見た目を称賛する一方で、内面を理解しようとはせず、表面的な関係に唯史は疎外感を感じていた。 しかし、義之は違っていた。 義之は外見を超えて、唯史の内向的な性格を受け止め、理解して

春の終わり、夏の始まり 19

結論を出した義之の行動は早かった。 翌日は平日であったが、「急で悪いけど話がある」と唯史にメッセージを送信した。 ほどなく唯史から「OK」との返事があり、唯史の勤務が終わった後、自宅近くのカフェで落ち合うことに決めた。 先に到着していた唯史に合わせ、義之もアイスコーヒーを注文する。 5月中旬、そろそろ冷たい飲み物が欲しい季節だ。 運ばれてきたアイスコーヒーを一口飲んで、義之は切り出した。 「唯史、前に実家出て部屋見つける、て言うてたやん?」 「うん、いつまでも実家の世話に

春の終わり、夏の始まり 18

その日の、夜。 義之は唯史が本格的に帰郷した喜びにひたっていたが、内心は複雑なものがあった。 中学時代、義之にとって唯史はただの友達ではなかった。 あのクラス写真撮影の日、桜の花びらが唯史の黒髪に舞い落ちた瞬間、義之の心は強く動かされた。 その美しい光景は、今も義之の記憶に鮮明に残っている。 中学3年生の夏が訪れる頃、唯史への想いはさらに強くなっていた。 唯史のちょっとした表情、仕草、セリフ、すべてが義之の心を揺さぶった。 だが義之は、恋愛というものを理解していなかった。

春の終わり、夏の始まり 17

東京での生活に別れを告げた唯史は、南大阪の実家に戻った。 新たな勤務地でる大阪支社への通勤は実家からでも十分可能で、唯史は両親の温かい支えを受けながら、少しずつ新しい環境への適応を図っていった。 大阪支社への仕事にも徐々に慣れ、食事もきちんと摂るようになった。 以前よりは健康的な生活を送ってはいるが、離婚のダメージは未だ唯史の心に影を落としている。 美咲の不倫・離婚による自己否定のトラウマは大きく、なかなか抜け出せそうにはない。 そんな中、かつて同窓会を行った居酒屋で、唯

春の終わり、夏の始まり 16

4月の終わり、唯史はこれまで勤めていた会社に退職届を提出した。 その決意は固く、新しい人生を歩むためには、今の環境から離れることが必要だと、強く感じていたからだ。 しかし、上司は唯史の能力とこれまでの貢献を高く評価しており、また状況の変化も理解していたため、退職ではなく大阪支社への異動を提案した。 唯史もそれなら、と異動に同意し、ゴールデンウィークを利用して住んでいたマンションを引き払うことにした。 とりあえず実家に身を寄せることにし、家財道具などはすべて処分することに決

春の終わり、夏の始まり 15

唯史も2次会には参加せず、まっすぐ実家に戻った。 母の佳代子が、客間に布団を敷いてくれている。 唯史はゆっくりと布団に身を横たえながら、義之からの提案である「帰郷」について、深く考えていた。 目を閉じ、自分の現在の状況を冷静に見つめる。 離婚してからの心の空洞、都会で感じる孤独感。 自ら断ち切った人間関係、職場でのプレッシャー…… これらの要素が積み重なり、唯史の心身は明らかに疲れ切っていた。 「義之が言うように、いっそ何もかも投げだして、こっちに帰るのも手かもしれない」

春の終わり、夏の始まり 14

同窓会が終わった後、2次会へと流れる者も多かったが、義之はそのまま帰宅した。 義之は、祖父から譲り受けた平屋一戸建てに住んでいる。 畳敷きに寝転がり、天井を見ながら、義之は唯史のことを考えていた。 「何があった、唯史……」 久しぶりに見る親友の姿は、中学時代から大きくかけ離れていた。 いや、見た目はそれほど変わっていないのかもしれない。 他の同級生は、唯史の変化に気づいていない様子であったが、義之は一目でわかった。 唯史はもともと、色白の美少年であった。 だが今の彼は、

春の終わり、夏の始まり 13

遅れてやってきた参加者も増え、同窓会はさらに盛り上がっていた。 あちこちで交わされる昔話、そして近況報告。 少々酔いを覚えた唯史は、義之を誘って居酒屋の裏手にある河川敷へと移動した。 春の夜風が二人の頬を優しく撫で、遠く関空の誘導灯が見える。 上空には無数の星がきらめき、喧騒を離れた穏やかな時が流れていた。 「ここは変わらんな」 と唯史がつぶやくと、義之は、 「そやな。でも人は変わる。唯史、その顔色の悪さとガリガリに痩せた体、俺が気づいてないと思ってるんか?いったい何があ

春の終わり、夏の始まり 12

同窓会は、地元の居酒屋で行われた。 入り口の引戸には「本日貸し切り」と書かれた札がかけられている。 カラカラと軽い音を立てて引戸を開けると、唯史を包み込んだのは暖かな照明と賑やかな声の波だった。 中学卒業以来、15年ぶりに見る、懐かしい顔ぶれ。 彼らは唯史の姿を見つけると、いっせいに歓声を上げた。 「唯史やん!めっちゃ久しぶりやなぁ!」 大学進学とともに東京に居を移した唯史は、中学時代の同級生と顔を合わせる機会がほとんどなかったのだ。 同級生たちは唯史を囲み、昔話に花を

春の終わり、夏の始まり 11

同窓会、当日。 12時に羽田空港を発った漆黒のスターフライヤーの機体は、定刻通り関西国際空港に到着した。 関西空港のターミナルに足を踏み入れると、即座に懐かしい匂いと音が唯史を包み込んだ。 有名な大阪土産の豚まんの匂い、そして関西ならではの勢いのある大阪弁。 故郷に帰ってきたという実感とともに、唯史の心の中には安堵感が広がっていった。 関西空港駅から、唯史は電車に乗った。 窓の外は、南大阪の田園風景が広がっている。 田植え前の田んぼからは、春先の土の匂いが漂ってくるように