ブックガイド(119)「天鬼越(北森 鴻/浅野 里沙子)」

蓮丈那智シリーズ最終巻

作者・北森氏の急逝から六年後に、残された二編と新たに浅野氏が書き下ろした四編を加えた一冊。民俗学や伝奇要素の大好きな私にとってはうれしい一冊となった。
印象に残ったのは古文書関係の話。
書の真贋ではなく、その書はなぜ必要とされたのかを問うのが民俗学であり、真贋は歴史学者に任せればいい」という那智のセリフ。
思わず膝を打った。作者は過去や伝承をネタに語りつつ、今を生きる人間の業を描いている。だから心に残るのだ。
最終エピソードの見事な締めくくりは、ミステリ作家・北森鴻への深い敬意と追悼の心が感じられて、読者(私)の心に沁みました。

新たなエピソードは、もう読めない。ならば、民俗学と伝奇に満ちたエンタメ作品を、この俺が新たに書いていこうか。そんな決意もさせられた。

天鬼越(北森 鴻/浅野 里沙子)
(追記)
私の好きなマンガに「村祀り」(山口譲司)がある。日本幽村奇譚と銘打たれたホラーテイストのミステリで、主人公は民俗学者・三神。これ那智やん、稗田礼次郎やんとニヤニヤしながら読んだ。これも傑作だったなあ。
村祀り


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