映画レビュー(97)「メタモルフォーゼの縁側」

2022年作品

 カドカワのWEBコミックの映画化。鶴谷 香央理の原作である。
高校生うららと、老女の雪がBLマンガを接点に同志のような友情を抱く物語。
 うららとの友情で生きがいを得る雪。同時にうららは雪の励ましで初めてマンガを描き始め、自分を見つけていく。王道とは言え、何とも爽やかな物語ではないか。
 主演の芦田愛菜さん、いい女優さんになったなあと、胸が熱くなった。一途に頑張れる他人を観て、何者でもない自分に劣等感を抱く若者の気持ちが伝わってきて、若いころの自分の背中を見つめるような気持ちになった。まさに雪が縁側で、うららの姿に昔の自分を重ねて眺める気持ちと同じなのだ。いい作品に出合えた。
 うららが参加する同人誌の即売会・コミティア。
 これは、作者の鶴谷 香央理さん自身のコミティアに関する「マンガを描く人、売る人、買う人、読む人としての、全部の自分を育ててもらったと思っている」というが言葉に現れているように、単なる即売会ではなく、創作する人達が、「同志を見つける」場なのである。
 作中の人気漫画家、コメダ優自身、コミティアに出かけてうららのマンガを手に入れるのだ。この気持ちが私には痛いほどわかる。そして、創作に壁を感じ始めた彼女自身が、ファンであるうららと雪に力をもらうくだりも、「うん、うん」と頷きながら観ていた。

 実は、私は地方コミティアである名古屋コミティアに出店側として二回参加している。一回目は、「不死の宴 第一部終戦編」のPOD(プリントオンデマンド)版を携えて長女と参加した。二回目は、当時やっていた「小説指南」の生徒さんと一緒に作品を出して参加した。同じような創作界隈の人たちと出会えるだけで、一人ぼっちじゃないという勇気をもらえるのだ。
 京都の文芸フリーマーケットもエントリーしたことがあったのだが、残念なことにコロナ禍で中止になってしまった。その後、抽選に当たらなかったりして、最近は出展できていない。機会を観て再挑戦したい。今度は東京の文フリを考えているが、いつになることかなあ。

メタモルフォーゼの縁側


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