映画レビュー(105)「トレジャーハンター・クミコ」(2014年)

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 東京で働く29歳OL・クミコ(菊地凛子)は仕事にやる気がなく恋人もおらず鬱屈とした生活を送っている。ある時、海辺の洞窟から映画『ファーゴ』のVHSを見つける。クミコは実話だと信じる。やがて同僚や上司に疎まれるようになった彼女は、飼っていたウサギに別れを告げアメリカにわたる。
 この物語は、実際にあったタカコ・コニシ事件をモチーフに描くドラマである。コーエン兄弟の「ファーゴ」の内容を信じて一人の日本人女性がはるばる米国の田舎町まで来た末、凍死体で発見されたという都市伝説だ。
 実際には、うつと失恋による自殺だったのだが、この映画では都市伝説通りに映像化している。
 周囲になじめず孤立する心理は、私らの心理の延長線上ではある。
 この作品でも、雪の中で目覚めて以降は、死んだ久美子の見た幻影なのだろうと思う。冒頭のVHSを掘り出すシーンもクミコの症状を暗喩する幻影であろう。
トレジャーハンター・クミコ」(期間限定)
コニシ・タカコの自殺(Wikipedia)
(追記)
 日本で撮影されデビッド・ゼルナーが監督したインディペンデント映画である。このモヤっとした孤独感ややるせなさに既視感があり、何だろうと思っていたが、これは1970年代のATG映画の匂いなのだなと思い至った。
 菊地凛子さんの演じるクミコだが、当時なら森下愛子さんが演じそうな感じである。


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