映画レビュー(60)「デンデラ」(2011年)

「姥捨山伝説」と「熊嵐」(吉村昭)の融合で描かれる寓話。である。

エンターテイメントとしても秀逸

男社会の共同体から捨てられた女たちの戦い

 物語は老婆・斉藤カユ(浅丘ルリ子)の目線で描かれる。「お山参り(姥捨て)」で息子に背負われて雪山に送られたカユは、以前に同様に村から追われた老婆達の村・デンデラに救われ、そこの50人目の村人になる。
 老婆達は、三つ星メイ(草笛光子)に率いられ村の男達への復讐を目指している。一方、マサリ(倍賞美津子)たち反対派は、デンデラの維持をこそ重視する平和主義者だが少数派である。
 次の満月に村を襲おうと決めたあと、村は熊に襲われる。十数人の犠牲者を出しながら熊を倒した後、熊鍋を食べ勝利を誓い意気上がるメイたち。
 復讐の襲撃の夜、途中で発生した雪崩でメイ達はほぼ全滅。カユ達数名がデンデラに戻る。マサリたちと村の立て直しを始めた矢先、再び熊が村を襲う。
 ラストは、村を守るため熊に追われながら村を離れるカユのモノローグ、「まだ、追っかけてくるのか」と。

優れた寓意

 人間ドラマ、サバイバル・アクションドラマとしても優れているが、底に込められた寓意やメタファの巧みさに舌を巻く。
 メイとマサリの対比は、フェミニズムのアプローチの違いを想起させる。さらに二度目に襲撃してくる熊は、雄熊と子熊を殺された母熊である。どこまでも追いかけてくる母熊とは、逃れようのない「女性性」もしくは「母性」というジェンダーの暗喩なのだ。
 最後のカユの問いかけは、観客への問いかけにもなっている。エンターテイメントでここまでやれるのだ、と示した作品。
 すごいなと思って、監督の天願大介氏を調べたら、「楢山節考」の今村昇平のご子息だとのこと。濱マイクの脚本も書いてるし、上手いはずだよ。

原作小説

「デンデラ」(原作・佐藤友哉)
「デンデラ」(映画)

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