ブックガイド(120)「狂乱廿四孝/双蝶闇草子 」(北森鴻 創元推理文庫)

 江戸末期~明治初期に一世を風靡した歌舞伎の名女形、三世澤村田之助。
 舞台の最中の怪我から脱疽となり結果として四肢を切断せざるを得なかった悲劇の名優である。明治3年、猿若町を震撼とさせたのは、異彩の画家・河鍋狂斎の描いた幽霊画を発端とした連続殺人事件だった。幽霊画に隠された歌舞伎界を揺るがす秘密とは?
 戯作者見習いのお峯の目を通して滅び行く江戸風情とともに、その事件の顛末を丁寧に描いている。第6回鮎川哲也賞受賞作『狂乱廿四孝』。さらに、その後のお峯たちの姿を描いた未完の長編ミステリ『双蝶闇草子』がカップリングされている。
 デビュー作にしてこの完成度か! 思わず平服してしまった。未完の作品『双蝶闇草子』の方は、お峰と同時に、現代の大学生・早峯水鳥(みどり)の目線で、現代の事件と明治の事件がリンクするように表裏一体で進んでいく。映画向きな物語だが、それだけに未完のまま終わっているのが残念。
 物語的には「起承転結」の「結」の途中で終わっている。
狂乱廿四孝/双蝶闇草子

(追記)
この作品も映像化が観たいと思った。舞台が歌舞伎界、今は若くて才能ある歌舞伎役者が大勢いるじゃないか。誰か名乗りを上げてくれんものか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?