見出し画像

将来英語を使って仕事をしたい皆さんへ:インバウンド営業ってこんな仕事

英語で仕事をするってどんなこと?

今、高校や大学で英語を学習されている方は、カリキュラムが工夫され、英語に触れる機会や学習する時間が多いですね。今習っている英語を活かして将来どんなことができるか想像したことはありますか。今日は英語を使って仕事をすることについてお話ししてみたいと思います。
私は2021年に学校教員になるまで、旅行代理店でインバウンド営業のお仕事をしていました。インバウンド(inbound)、というのは海外から日本に来る外国人旅行者を指す言葉です。
営業、という言葉は一度は聞いたことがあるかと思います。営業、というのは簡単に言えば、お客さんの関心のあるもの、好きなものを見つけてそのお客さんに売ってお金を得るお仕事です。
旅行会社の仕事の場合、2,3名の家族旅行から皆さんも知っている修学旅行、国際会議など依頼と内容によって計画・提案する旅行の内容は様々です。ちなみにサッカーのワールドカップのように世界規模の大きなスポーツ大会の運営をしているのも実は旅行代理店です。
共通しているのは、お客様の求めている依頼から、想像力と知識を駆使してお客様の求めているものを海外の旅行代理店と一緒に作り上げていくことです。
 インバウンドの仕事の奥の深いところは、提案しているのは日本のことなのに、全然知らない日本が沢山あること、海外の方の方が日本に精通しているなと感心させられる場面が沢山あることです。例えば、岐阜県の白川郷という場所を知っていますか?ここには合掌造りという古くからの様式で建てられた建物が点在していて、多くの訪日旅行客に人気があります。タイの旅行者はここがとても好きで、冬になると沢山の団体客が白川郷のライトアップを見に訪れます。
今から約10年前にJNTO(日本政府観光局)がタイで白川郷をPRした後、爆発的な人気が出て、タイだけではなく多くの訪日旅客がここを訪れるようになりました。今では多くの日本人の旅行客もここを訪れますが、海外の方が発見した日本の魅力を、後になって日本人が「再発見」することも多いのです。インバウンドの仕事は、言ってみればまだ知られていない日本の魅力を海外に発信し、実際に来日してもらう仕事なので、PRと実際の外国人の方のお世話の両方に関わることができるとても面白い仕事です。
さて、海外の旅行代理店とはどうやってコミュニケーションするのでしょうか。勿論使う言語は世界共通言語の英語です。私が仕事をしていた代理店のお客様はアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった英語圏の国だけではなく、シンガポールやタイ、マレーシアなどのアジア圏、デンマークやスペインといったヨーロッパ圏の国もありました。各国では時差がありますから主なコミュニケーションツールはメールです。英語圏出身のお客様だけではなく、英語が母語でないお客様と英語で意思疎通を図るには工夫が必要です。ビジネスメールは読みやすさ、簡潔さが重要なので箇条書きを含め、誤解がないように伝えることが重要です。
 メールだけではなく、仕事をしているとお客様に実際に会う機会もあります。まず、海外出張に行った時です。1年に何度か、新しい企画の提案や、新規顧客開拓、既存顧客のフォローのため海外に出張に行きます。ここでは、実際に会って英語で色んな話をします。この場合、私もお客様も英語が母語でない人同士が英語でコミュニケーションすることがあります。多少文法が間違っていても、発音が違っていても大きな問題ではありません。大事なのは、誠実に自分の持っている言葉を使って相手の気持ちと自分の気持ちを擦り合わせることです。「どう英語を話すか」よりも「何を相手に伝えるか・何を相手から受け取るか」が重要なんですね。実際に海外から来た代理店のお客様や旅行者の方と日本の観光地を巡る時に、お客様が楽しんでいる様子を見るととても嬉しいものです。また、国籍が違っても英語を使って海外の代理店の方と一つの旅行を作っていく過程で強い絆ができていきます。
 一方で、海外の代理店のお客様は日本人相手ではないので、そのリクエストにびっくり、困惑することも沢山あります。アメリカ・カナダからの修学旅行をメインで扱う代理店と仕事をしていた時のことです。カナダから来日する中学校の修学旅行を企画することになったのですが、その中で50万円で歌舞伎座を貸切にして観劇したいのでなんとか実現できないか、という要望がありました。歌舞伎座を貸し切って鑑賞するには予算がとても足りません。
そこで、色々調べた結果、以前に歌舞伎役者をしていて、今は個人で歌舞伎の演目の出張パフォーマンスを行っている方に連絡を取って交渉することを思いつきました。最初はその方もびっくりしていましたが、初来日の高校生たちに歌舞伎の面白さを伝えたい気持ちを伝えて交渉したところ、了解してくれました。結局、彼らの宿泊しているユースホステルのレストランを貸切にして、そこで歌舞伎のパフォーマンスを見せてもらいました。修学旅行生も引率の先生たちも大盛り上がりで、最後は役者さんと修学旅行生で記念写真を撮って終わりました。この時の動画や写真は今でも大切な思い出です。余談ですが、歌舞伎役者の方の衣装が商談で伺っていたものとは全く違う、素晴らしいものだったので演技が終わった後に質問したら、「初来日の学生さんだから一番いい衣装で演技しようと思ったんです」とのこと。海外の代理店の無茶ぶりから始まった計画は、結果的にお客様も旅行に来たエンドユーザーの旅行者にも満足してもらえる旅行となり、良い思い出を作ることができました。
 今回は英語をツールとして使って仕事をするインバンド旅行のお仕事についてご紹介しました。実は、旅行のお仕事はホテル、航空会社、レストラン、通訳案内士等様々なパートナーとの協力で成り立っています。また、機会があれば違う視点から「英語で仕事をする」ことの実際の様子をご紹介したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?