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転職もいいけど異動、出向もありだよ〜得意、不得意で考えるストレスの少ない業務への転換〜

 お疲れ様です。今日は自分の経験から、今の職場で仕事が嫌になっていたり、転職を考えている方に向けて書きたいと思います。
 私は2018年に元々の所属していた会社から親会社に出向することになりました。当時私は東京から名古屋の支店へ社内異動中で満3年が経とうとしているところでした。勤務期間が満了し、本社へ戻るつもりでした。ところが、内示を確認すると、まさかのグループ本社への出向命令。しかもそれまでやってきた海外営業とは異なる仕事だということがわかりました。
 この新天地での勤務は3年で終わるのですが、この想定も期待もしていなかった社外への出向経験が、ビジネス・交流産業(旅行産業)の面白さや「自分の得意領域を活かして稼ぐ」ことの素晴らしさに気づくターニングポイントとなったのでした。また、この出向の経験を通して痛感したことがあります。それは、人には本領を発揮しやすい働き方と、自分らしさを発揮しづらい働き方がある、ということです。働き方、というのは例えば裁量の大きさ、スピード等様々ですが、具体的な私の業務内容に触れながらイメージしてもらいやすいように書いてみます。

出向前の業務
●自分にとってストレスであったこと (自分に合わないと感じていたところ)
①マルチタスク
担当しているクライアント=旅行会社は複数あります。そこから来る旅行の見積や旅行サービスの手配の依頼が毎日来ます。するとこんな風になります。

●クライアントへ提出する見積や企画を作成する
●来日を控えたお客様の手配に関する調整や金券等の関係者への発送を行う
●来日中のツアーにおける旅行中のトラブルに対応する
●請求書の処理やツアーにおける収入計上などの会計処理を行う

このような作業が4月や11月の繁忙期に特に毎日発生します。特に4月初旬から半ばは一年で最も忙しく、1日に4組、5組と来日するお客様がいらっしゃいました。団体旅行なので、1団体で大体30名程度。私1人で4月は15グループほど受け入れ、対応していました。

この受け入れをしながら、手配の漏れやチケットの発送漏れにも気をつけつつ、新しく来た見積にも作成し、トラブル発生の際には同行している通訳案内士さんやエージェントとコミュニケーションしながら解決する毎日です。私はこのマルチタスク+トラブル対応がとても辛く感じました。

②ツアーのオペレーションをひたすらこなすメリハリのない働き方
 特に4月や11月の繁忙期で、ひっきりなしに来日するお客様のツアーを運行するというメリハリのなさもストレスでした。閑散期も量は減るもののこなす内容は大きく変わらないため、あまりやり切った感、達成感を得ることが難しかったです。

③忙しすぎると増える業務上のミス
 業務の中で、色々なミスが出てきます。手配するべきレストランの予約時間が違っていたり。ツアーで手配しているホテルの客室数を実人数に合わせて減らす作業が遅くなってお客様の来日する2週間前に慌てて連絡したり。旅行の手配に関する仕事は細かな調整事項が多いんですよね。ミスが続くと凹むし、自信をなくしてしまいます。特に私はタスクが立て込んで忙しくなるとそのミスが増える傾向がありました。

●自分らしさを発揮できていた業務
 一方でこの仕事で私が好きだったことがあります。それがお客様と交流できる添乗業務です。お客様への案内は通訳案内士さんに任せて、ツアーが安全に運行されているのを確認しながら現地の観光地を巡る、同行しているクライアントと新しいコンテンツを作る話し合いをする、などが業務です。これは人と話すのが好きだった私にとって貴重な経験でした。

 これらのことを勘案すると、この海外へのエージェント営業、特にマルチタスクや短時間で沢山のものをこなさないといけないことに大きなストレスを感じていました。でも出向する前はあまりそのことに疑問を感じたり、強く場所を変えないといけないと感じることはありませんでした。そんなことを考えるほどの余裕がなかったのです。

出向後の業務とそこで気づいた自分の強み
 さて、13年に渡って海外旅行会社との仕事に関わってきた私に転機が訪れました。2018年の4月。前述した本社への出向です。異動先はそのタイミングで新設された事業部。特定の自治体に正対し、公務案件や地方創生事業に取り組むことで収益を確保するビジネスモデルでした。

ここで発見した自分の特性と強みは以下の通りです。

●旅行の枠に囚われない、旅行に頼らない交流事業の創出
 旅行、というとホテルとバスとレストランと会議室・・・これらを組み合わせたものが一般的ですが、この事業部は「旅行業に頼らない交流の創造」がコンセプトでした。このコンセプトに私はとても魅力を感じました。と同時に、気づいたことは自分は既存のものではない何かに取り組むことにモチベーションが上がるのだ、ということ。実際に初めて取り組んだことは、地域の離島で使える旅行商品券の事業の運営でした。一定の金額に対してプレミアムがつき、スマホ上で決済ができる仕組みでした。この事業への加盟店を増やす営業活動をしつつ、色んな工夫をして多くのお客様に商品券を利用しつつ離島への訪問客を増やすことがミッションでした。
●地域の観光事業者とのコミュニケーション
 離島の事業者さんへの営業活動が、実はかなり楽しかったのです。それまでも、お客様が来日した際にお会いして接客することは好きでしたが、この商品券の事業に取り組むようになったから、ほば毎月離島に出張するようになりました。そこでは、島の人たちと食事をしたり、地域や事業の課題に耳を傾けたり、という活動を通して、地域の観光振興のリアルを体験できました。業務の後、観光協会の方とカラオケに行って歌ったこともありました。
事業って利益やモチベーションだけではなくて、圧倒的に周囲の人間関係が大切で、ここを蔑ろにすると事業はうまくいかない、というのも学びました。こんな風に旅行の現場の当事者の方たちとの交流も、人好きな自分に合っていました。

●小さな案件を沢山こなす<大きな案件を大切にこなす
 この案件数の変化は、私にモチベーションを与えてくれました。それまでは数多く、次々に来日するゲストのツアーに対峙する日々でしたが、年間で抱える案件はツアーからプロジェクトに代わり、事業スパンも2週間程度で完結するものから概ね一年をかけて取り組むものに変わりました。変化により、一つ一つの案件は取扱額や業務規模は大きくプレッシャーはあるものの、腰を落ち着けてじっくりとそれぞれの事業に向き合えるようになりました。イメージですが、年間120件ほど対応していたものが、10件程度にまで減りました。

●主体的に利益を獲得する
 業種、業界によっては「そんなん当たり前やん」と言われそうです。私が元々やっていた海外旅行会社への営業は、実質向こうから依頼が届くので、それを受けて対応する大変受け身なビジネスモデルでした。ラッキーですよね。だからどれくらい稼げるかは向こうからの依頼するによるし、これ以外のことは実質しなくてよかったのです。
 ところが出向先は新設の部署で、とにかくコンプラに抵触しない形であれば基本的には何をやってもOK、お金を稼げ!というところでした。ですので、自治体から出る公務案件=プロポーザル案件に挑戦しつつ、自分たちで助成金や様々なお金をタネ銭として新しいモデルで作って業績を上げる必要がありました。これは大変なのですが、狙っていたプロポーザル案件で競合他社に買って入札できた時の喜びは大きなものでした。目に見える形で努力が収益に結びつくこと、能動的に取り組むことでお金を稼げることの楽しさを、なんと会社員になって10年後に味わいました。
コロナ禍の時は、オンライン旅行やオンライン料理体験などのコンテンツの開発に取り組んだり、バイオームという生き物の情報を調べられるアプリを使った環境学習と地域誘客を組み合わせたイベントの企画を練ったり・・・と主体的にお金を稼ぐことに注力していました。
ちなみに、私はここでインバウンドに関わって来た経験と語学力、自治体との繋がりを活用して自治体における調査事業を通じたコンサルティングを行うことで対価を得る経験を得られました。

●専門領域の異なる先輩たちからの学び
 出向先では私とは全く異なるバックグラウンドを持つ先輩たちと仕事をする経験ができました。例えば官公庁との大きな案件の経験が豊富な人。コンベンションやイベントのプロ。デザインのプロ。外資系コンサルから転職してきた人。など、お互いに専門が異なるからこそお互いにリスペクトしながら専門性で助け合う風土がありました。まあ、みんないきなり寄せ集められて不安なのと結果出したいから必死だったんですよね。そこでは自分の専門も重宝してもらえ、リスペクトの念を持って接してもらえたことも自己肯定感を上げられるきっかけになりました。

 大変長々と書いたのですが、この出向先での体験を通じて仕事って自分の適性や得意不得意によってこんなにモチベーションが変わるんだ、と言うことを痛感したのでした。

 整理すると・・・私が生き生きと能動的に働ける環境や働き方は以下のようなものでした。
☆件数をたくさんこなすことよりも、少ない案件を丁寧にこなしたい。
☆人と接する機会が多く、その人たちと信頼関係を築いていける。
☆ルーティンをこなすよりも新しいことに挑戦することに関心がある。
☆業務のメリハリが欲しい。
☆努力の成果が目に見える。

 余談ですが、この体験を通して私は後輩に出向の内示が出て悩んでいたりすると、出向先で今まで気づいていなかった自分の強みや特性に気づくチャンスだよ、と伝えています。また、異動・出向を通じて不満だったり疑問に感じている今の職場の良さに気づくかもしれないよ、とも伝えます。

 私自身は、自分の経験を通じて、同じ業界でも業種や働き方を変えれば自分らしく能動的に働ける可能性があるという教訓を得ることができました。
たまたま出向したことで自分の得手不得手や得意領域を発見できたのですが、皆さんがもし今の職場で成果が出すくすぶっているようなら、転職で大きく環境を変える前に、同じ会社の中で環境を変えることを提案したいと思います。その異動先・出向先で新しい自分の可能性に出会える可能性があるからです。そして、できるならば、自分の得意なこと、不得意なこと、働き方のスタイルで納得していること、していないことを文字におこして言語化してみると更に良いと思います。
 異動や出向などのイメージが整ってきたら、実際にそこで働いている人に話を聞いてみるとよいでしょう。他部署であれば同僚や同期、後輩、先輩に聞く方法がありますね。出向先であれば、社内メールやチャットで相談してアポを入れちゃえばいいですよね。出向や異動の経験、もしそんな機会が降ってきたら自分を知るチャンス、可能性を広げるチャンスだと捉えて挑戦してみてください。

 また、今の職場が嫌で、転職を意識していらっしゃる方は是非今の職場や働き方について一度振り返ってみるとよいでしょう。その上で、転職するのか、留まるのか、異動や出向願いを出すのか考えて行動してみてください。なお、そもそも今の会社が本当に嫌で転職一択の方はこの限りではありません。でも、今の職場で何が嫌なのか、どんな点が変われば自分の気持ちが前向きになるのか、この自分の心の声に向き合うことはとても大切です。

 仕事の向き合い方の一つの例として参考になれば幸いです。

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