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俳句「鶯」

惚け去と鳴く鶯は山へ往ね

 「惚けて去れ」。あるとき鶯の鳴き声がそう母を誘っているような妄想に囚われた。高齢者の認知機能は、春が最も低下するという調査結果があるらしい。始終母といる私はそれほど季節による違いを感じたことはないが、離れて暮らしている姉は、早い時期から、母は春になるとおかしくなると言っていた。

 それにしても鶯の鳴き声は「ほう、ほけきょ」(法、法華経)であって「ほうけきょ」ではないが、母や父が病み始めてから、山川草木、花鳥風月が何かを語っているような幻想をしばしば抱くようになった。擬人法は、修辞法と言われるが、私には意識してつかう技法というよりは、感じたことを素直に表現したもののように思われる。

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