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私は世界など、もっていない

 

穏やかな笑み、気温、中島らもは面白い。
確かに中島らもは面白い。

低音で燻したユーモアは腹の底をフツフツと煮らしたようで愉快、不愉快のギリギリ一歩手前を過る危なっかしさ、故、シニカルはいつだって面白い。
果てる、果て、心が削れた夕方は傷付く。
なんで傷ついているのかイマイチ理解できないまんま、ハサミを進める。

手垢のついた哀しみ。行き場の無い咆哮。
異性からのつめたい視線は、同性のつめたさとは違う痛みが伴う。
特に、高い踏み台に登り作られた笑顔を捨てた人間の0.2秒の揺らぎが吐くほど恐ろしい。
人から見下される事は恐ろしい。
傷付くこと、理解して放つ人の残忍さ、それは多分老婆に席を譲る優しさ、モラル、親切とは全然違う場所に存在する。
人を見下し、軽んじる人は怖い。いつだって怖い。
何となく伝わってくるから。

「それって女はそう思われてるからってことだよ」
私があの人を思い出すと、サッと脳裏を掠める印象、何年付き合いがあろうと一瞬の衝撃や痛みを私は忘れられずに、その人は意識してそれを言い放っている。
私の心の脆さや、弱さを熟知し掌握する人間が見せる見せ掛けの優しさに何度も騙されては痛みを抱えている、通じ合える人間よりも通じ合えない人間の方が遥かに多いのに、未だに私は人の善意を信じている。
こんなものを捨てた方が傷つくことは無くなるだろうし、
人に期待や希望を抱くほど吐くほどの現実性に頭を痛めることはもうとっくに、それは人よりも遥か多く信じる機会があったはずなのに、未だに私は馬鹿の一つ覚えのように善意を信じている。苦しい。

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二人だけの秘密だよ

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