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自分の中の乙女心を解放してみた話


 そもそも、乙女心とは。

 辞書によると「少女の純情で感じやすい心」とあるが、ここで言う「乙女心」とは、メルヘンチックで可愛らしいものにキュンとする気持ちのことである。いわゆる「乙女心をくすぐられる」というアレだ。私はそういった乙女心をくすぐるアイテム、食べ物、建築が大好きだ。

 しかしそう言えるようになったのはつい最近のこと。きっかけは「名建築で昼食を」というドラマを観たことだった。

◆ ◇ ◆

 私は子どもの頃からメルヘンチックでレトロなものが大好きだった。チョコレートが入っていたアンティーク風の缶を宝箱にしたり、祖母の裁縫箱に詰まっていた色とりどりのレトロなボタンを眺めたりするのが好きな子どもだった。赤毛のアンやピーターラビットの物語を何度も読み返してはその世界観に憧れた。

 美しい模様のティーセットで楽しむアフタヌーンティーだとか挿絵に描かれている可愛らしい家は私の心をがっちりと捉え、私はその素敵な世界観のとりこになった。そして憧れのあまり小学生にして西洋アンティークや洋館に興味を持つようになっていったのだ。

 今にして思えばずいぶん変わった子どもだった。もちろん周囲に同じ趣味を持つような友人はおらず、家族からも変わっていると呆れられた。だからひっそりと地元の図書館でそういった本を借りてはひとりでうっとりと眺めていた。

 しかし中学に上がると、他人に理解されない自分の趣味が徐々に恥ずかしいもののように思えてきた。アンティークが好きだって言ったらクラスメイトに引かれて馬鹿にされるんじゃないか。思春期特有の過剰な自意識により私はあんなに好きだった世界を遠ざけるようになった。大人になったらなったで、コスパや機能性や目的を考えてものを選ぶようになった。かつて憧れていた世界からは遠ざかる一方だった。

 例えばアップル社の製品のようなミニマムで機能美を追求したものも私は大好きだ。身につけるもの、家のインテリアはそういったデザインのものがほとんどだ。しかし同じように乙女心をくすぐるアイテムも大好きなのだ。それは小学生だったあの頃から変わらない。きっとこの先もずっと大好きなままだろう。しかしコスパなどを都合の良い言い訳にして、乙女心をくすぐる世界からは遠ざかったままだった。

 そんなある日、ドラマ「名建築で昼食を」に出会った。


 

 このドラマはノスタルジックでどこか可愛らしい名建築、通称「乙女建築」を主人公たちが訪れるお話だ。見どころはやはり毎回登場する実在する数々の乙女建築なのだが、「好きなものは好き」という姿勢を貫き、人生を楽しんでいる主人公たちの姿が私の中で非常に印象的だった。

 趣味の楽しみ方は人それぞれだ。「漫画が好き」とひとくちに言っても、漫画を読むことが好きな人もいれば描くことが好きな人もいる。そして趣味というものは無駄なように見えて無駄ではない。好きなものに情熱を注いだり、ときめいたりすることはいわば心の栄養なのだ。そしてその栄養は人生を豊かで幸せなものにする。私は私なりに乙女心をくすぐるものたちを愛でていけば良い。このドラマを見終わったあと、まるでお告げを受けたかのようにそう思えた。

 例えばメルヘンチックなものを身につけることはなくても、それらを集めた写真集や図鑑を眺めるだとか。乙女心をくすぐるものたちの素敵さをこうやってnoteで発信するだとか。こうして私は大好きだったあの世界とようやく程よい距離感で付き合えるようになったのだ。

◆ ◇ ◆

 よってこのアカウントでは私の中にずっとしまい込んでいた乙女心を解放し、乙女心をくすぐるものたちへの愛をつらつらと語るアカウントにしようと思う。

 ちなみに乙女心と散々言ってきたけれど、メルヘンチックでレトロなものを愛することに年齢や性別は関係ないと私は思う。
 私はおばあさんになっても、乙女心をくすぐるものにときめきを持ち続けていたい。
 
 

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