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【短編小説】鬼灯の花言葉

燕子花(カキツバタ)姉さんは今日も
あの男と絡み合っている…と思う

上客や、どうでもいい客の時は
「お前も、いずれは客をとるんだから見てなんしっ」
とか言って禿(かむろ)のアタイを
部屋の中に招き入れるのにさっ

あの男との絡みは、アタイを部屋には入れずピシャっと襖(ふすま)を閉めてしまう

べつに見たいわけじゃない!!
どっちかと言うと…そうゆうの嫌いだから…

でも姉さんの絡みは天女が踊っているようなんだ!
姉さんみたいな人を『高貴な人』
って言うんだろうなぁ


襖が開かれ、あの男が出てきた

姉さんは…泣いていた
1人取り残され泣いていた


ああ、姉さん姉さん姉さん
アタイの姉さん


次の日あの男は来なかった
その次の日も、また次の日も…

あの日以来、姉さんは食事も
ろくすっぽ取らず泣いてばかりいる

他の客の相手も、うわの空になって行く姉さんに愛想つかして寄り付かなくなって行った


姉さんは…おかしくなって行った


――3ヶ月後――


姉さんの部屋の襖(ふすま)を
叩く音がした

姉さんは、ひょろひょろになった
カラダを起こし声にならない悲鳴のような声を出しながら駆け寄る

そこには、あの男がいた
姉さんが愛してやまなかった男が…


翌朝、姉さんは…あの世に逝った
幸せそうな顔をして…


姉さん、ごめんね
あの男が来たんじゃないんだ
来れるわけないんだ…
アレはアタイ
アタイなんだよ…


姉さんの愛しい男の命を奪ったのもアタイさっアタイなんだよ…


…それとさっ…アタイは…
アタイは男なんだ!オスなんだ!

偽って…ごめんなさい…
愛してます姉さん

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鬼灯の花言葉の一つに 偽りというのがあります。そこからヒントを得て書きました。

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