保険業界の問題意識に対する考察
こんにちは、Sasuke Financial Lab株式会社のカサマツです。
生命保険に関する記事を書こうと思いつつ、何か良いテーマがないかなと探しておりますが、保険業界といえば、とにかく問題意識に対する感度が高いなと感じています。
保険業界の勉強を進めていく中で、特に、他業界と違うなと感じる点が「苦情」に関する感度の高さではないかなと感じました。
今回はこの部分を少し掘り下げてみたいと思います!
保険業界の「苦情」事情
保険業界は競争優位性を作りにくい業界と言われています。
詳しくは別の記事で掘り下げてみたいと思いますが、生命保険の記事を漁っていて、生命保険ワーストランキングという記事を見つけました。
この記事では、苦情件数、支払い能力、格付け会社の評価の3つの観点で生命保険会社を評価していますが、その中で気になった項目が「苦情」でした。
苦情件数の集計
日本の生命保険会社の「苦情」について、さらに詳しく調べてみると、一般社団法人生命保険協会が期間ごとに苦情の件数を集計しており、各会社の苦情に関する情報が事細かにまとめられています。
※損害保険に関しても、一般社団法人損害保険協会にて、同様のレポートがまとめられています。
また、各生命保険会社のIR資料には必ず、「お客様からの苦情について」という項目が存在しています。
苦情件数を取りまとめるのは保険業界だけ?
企業としては公表しづらい、苦情の件数を律儀に報告している(しなければならない)保険業界の取り組みは独特だなという印象を持ちます。
たとえば、銀行や証券でも同様に「銀行 苦情」「証券 苦情」などとキーワードを叩いてみますが、苦情件数がまとめられているような資料は見当たらず。
苦情やクレームと言えば飲食業界や小売業が思い当たりますが、もちろん苦情件数の集計などは行っていません。(集計ができないほど件数が多いと思われる)
海外の生命保険業界では?
海外(アメリカ)の生命保険業界ではどのようになっているか、同じようにIR資料や記事を漁ってみましたが、とくに苦情に関する件数は報告/集計されておらず、ブログページに低評価の口コミが掲載されている程度でした。
日本の保守的な国民性が出ているのかなとつくづく感じますが、そもそも、海外の国々では保険会社数が多く(米国837社、英国379社、フランス109社、ドイツ84社、日本41社)把握/集計することが難しいという事情もあるのかもしれません。
苦情の件数がまとめられるようになった背景
なぜ、苦情の件数がまとめられるようになったのか、その背景を考察してみます。
生命保険協会の過去の集計資料を見てみると、苦情件数の取りまとめが開始されたのは2006年(あくまでWebにUPされているもの)であり、「失われた15年」や「平成の大合併」とは直接関係がなさそうです。
明治安田生命の2002年当時(安田生命)ディスクロージャー資料を見てみると、当初はお客様懇親会において寄せられた意見や質問を取りまとめて発信するという相互のコミュニケーションは行っていたものの、明確に「苦情」という形で集計が行われるようになったのは2008年ごろからのようです。
つまり、2000年中盤ごろまでは「苦情」という明確な形での報告や件数の集計は行っていなかったものの、2006年から生命保険協会により、苦情件数の集計が行われるようになったため、それに引きずられる形で、苦情件数のまとめを各社が行うようになったのではないかと思います。(あくまで推測に過ぎないですが)
社内の詳しい方に聞いたところ、2005年頃、保険業界では保険料の不払いが社会問題になったことがあり、保険業界の信頼回復を目指すべくこのような集計が行われるようになったとのことです。
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2007pdf/20071026039.pdf
ランキング記事が登場する背景
日本において「保険 選び方」など生命保険に関するgoogle検索を行うと、熾烈なSEO対策競争を勝ち抜いたアフィリエイトブログ記事などが多く目に留まります。
そのようなアフィリエイターたちは当然ながら様々な情報をネタにして、記事を書いていますが、生命保険協会や損害保険協会がこのような集計を行なっているような絶好のネタを取り逃がすはずがなく、隙あらば「ロングテールSEO対策」のもとに料理されていきます。
生命保険の苦情それ自体が、消費者が保険選びをする際の決め手にはなり得ないとは思えますが、参考情報としては有益なものではないでしょうか。
まとめ
今回は生命保険会社における問題意識に対する背景について考察してみました。
保険会社は各期間の苦情件数をまとめており、日本国内の苦情件数は、生命保険協会の苦情件数一覧から確認することができます。
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