「野良球(のらたま)」・・・道端にあるもの。
最近、「野良球(のらたま)」が目に付く。
いつも通る道の植え込みの中に、ポツンと佇んでいる。
意志も無く転がっているのではない。
それは確かに佇んでいるのだ。
冬場はいない。春先になると、ひょっこりとやって来る。
テカテカとした肌を光らせ、言葉を発する事も無く、ただひたすら
その場に立ち尽くしている。
だが二日三日と見ていくと、いつの間にか居場所を変えている。
「あれ? 昨日は植込みの右端だったのに、今日は真ん中だ」
「おや。今日は端っこだ」
などと感心させられる。
どうやって移動しているのだろうか、
手足があるようには見えない。それとも
伸縮性のある手足を隠していて、私の見ていない間に
移動するのであろうか。
そう考えた時、
ひとつの疑念が浮かんだ。
「この野良球の故郷はどこだろうか?」
だが、すぐにその疑念は消え去ってしまった。
それは本当にどうでも良い事なのだ。
今、ここに居る事が大事なのだ。
余計な事を詮索するのを止め、私は又、
その野良球を見つめ続けるのだった。
おわり
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