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「名刀お加代」先月ラヂオつくばで放送された作品です。

実際に伝わる明治初期の伝承を元に、加筆脚色いたしました。先月、ラヂオつくばで放送された作品です。


「名刀、お加代」  作・ 夢乃玉堂

年号が、慶応から明治に変わって間もない頃。
薩長を中心とした新政府は、
「鎮撫使(ちんぶし)」と呼ばれる使節を全国に派遣した。

この鎮撫使、表向きは、各藩の石高を確認するのが役目であったが、
本当の目的は新政府に対する忠誠心を探ることにあった。

日本海に面した山陰の小藩、松波藩。
折しも若干22歳の勘定方末席、西門伊織(にしかどいおり)が
筆頭家老古川幸右衛門から
鎮撫使接待の大任を仰せつかったところであった。

「良いか、伊織。我が藩はこれまで、
倒幕か佐幕か、態度を明らかにしてこなかったゆえ新政府の目が厳しい。
余計な疑いをかけられぬよう、出来得る限り、鎮撫使をもてなすのじゃ」

「しかしご家老様。大きな宿場も無い我が藩には、
音曲を生業にするものが少なく、まして芸者などは・・・」

「黙らっしゃい! 芸者がおらねば、酌女、飯炊き女、とにかく集めて来るのじゃ。此度の接待は、藩の命運がかかった剣が峰じゃ!」

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