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物語 イヤな想いと袋【イヤな想いを味方にできたら、毎日もっと生きやすいですね】


むかしむかし、
人はイヤな想いを
感じることはありませんでした。

なぜなら、
イヤな想いは、
1つの大きなイヤな想いとして、
自由に空の上を飛んだり、
大地を駆けたりしていたからです。

住む世界が違うといか、
イヤな想いは、
人間の心に入ることなんて
考えたこともありませんでした。


ある日、
イヤな想いが、日向ぼっこをしていると、
一人の、心のきれいな優しい少年が、
走ってきました。

その、心が透明でとてもきれいだったので、
イヤな想いは、もっと近くで、
少年の心を、見てみたくなりました。

少年に近付こうと、
イヤな想いが、びゅんと少年の心に近付いとき!

中に入ってしまいました。



少年の心に入った、
イヤな想いは、成長し、
少年の心の中は、
いつしか、
イヤな想いでいっぱいになりました。

少年は、
お母さんから頼まれた薬を買いに
町に行く途中に、
突然、倒れてしまいました。

倒れた少年は、
自分がなぜ倒れたのかに、
思い当たることがありました。


最近、
心の中でどんどん、
重たくなっている感情があることを、
知っていたからです。

この、言葉にならない重たい感情を、
減らすことができたのなら、
またいつものように、
動けることも知っています。

少年は、倒れたまま悩みました。

悩んだ結果、
道行く人に、
「少しづつでいいので、
自分の心にある重たい感情を
もらってくれませんか?」
と、聞きました。

しかし、
誰ももらってくれませんでした。

でも、
少年は、それでよかったと思いました。

だって、
皆に自分みたいな、
イヤな想いをしてほしくありませんから。


1つ気になるのは、
お母さんに、頼まれた薬のことです。

自分が、このまま動けないでいると、
お母さんが困るなと、思いました。



少年が、
地面で倒れたまま、
夜になりました。

少年は、
夜空の星を見ていました。

そこに、突然、
山賊があらわれました。

山賊は、
少年の服や、
お金や、
持っているものを全て盗みました。

少年は、
薬を買うお金がなくなると困ると、
山賊に言いましたが、
それは、
聞こえていないかのように、
何もなくなっていしましました。

しかし、なくなったのは、
少年の持ち物だけではありませんでした。


そうです。
心の中の、
イヤな想いも
盗まれて、なくなりました。


山賊は、
市場で、
盗んできたものを売りました。

盗んだものは、
市場で、
あっという間に、売れました。

イヤな想いは、
少年と過ごした数日間で、
人間のことが、
もっと知りたくなりました。

これは、
チャンスだと思った
イヤな想いは、
少年の物に、
少しずつ、くっつき、
小さくバラバラになって、
世界中に散らばっていきました。


イヤな想いは、
人の心に入ると、
個数は変わりませんが、
体積が変わります。

人の心の中で、
大きくなっていった
イヤな想いは、
自然と、人の口から溢れだして、
相手の、耳から中に入ります。


そうです。

それが、
愚痴や悪口です。

その後も、
イヤな想いは、
世界に広がっていきました。



あの後、
少年はどうしたかというと、
裸のまま、
走って家に帰りました。

家で、
心配していたお母さんに、
心が重くなり、
耐えられずに、
倒れていたことや、

山賊に襲われ、
お金が、
なくなってしまったことを、
謝りながら、
話をしました。

お母さんは、
一言だけ、

「あなたが、いまここにいて、
その話をしてくれたことで、
お母さんは充分です」
と、言った。


お母さんの言葉で、
少年の、
空っぽになっていた心が
ぱあっと、満たされました。


少年が、
服を着ながら、
これから、どうしていけばよいかと
悩んでいたら、

四足あし(よんそくあし)の
生き物に乗った、
小さなおじさんが、
お母さんと、
少年前に現れました。

そして、
「そんなこと、何てことない」
と、使いきれないぐらいのお金と、
1つの袋と、
1匹の黄色いトカゲをくれました。


黄色いトカゲは、
すばしっこく、
寝ていたお母さんの上に乗りました。


すると、
お母さんは、
元気になりました。

次に、
黄色いトカゲは、
少年の頭の上に飛び乗りました。

少年は、
頭ではなく、
肩に乗ってほしいなと、
心の中で思いました。

すると、
黄色いトカゲが、
ケッと小さく言い、
少年の肩に、
飛び降りました。

小さなおじさんは、
言いました。

「いまや、
1つだったイヤな想いは、
世界中に広まった。
この、黄色いトカゲが、
イヤな想いの場所を
教えてくれる。
そして、
この袋に、イヤな想いを
回収していくのじゃ。
この袋は、
すべてのイヤな想いが、
ぴったり収まるようにできている」

少年は、
世界中のイヤな想いを集めに、
黄色いトカゲと、
旅に出ることになりました。



その旅は、
長い長い旅になりました。
思ったよりも、大変でした。

しかし、
辛いことだけではありません。

イヤな想いを、
回収しにまわった国々で、
少年は、持ってきた、
使いきれないほどの
お金を使い、
たくさんの人に、
希望を与えました。

少年は、
使いきれないほどのお金で、
たくさんの人の、
喜ぶことをしました。

危ない目に、
合うこともありましたが、
黄色いトカゲが、
うまく誘導してくれました。

世界中に広がった、
イヤな想いのかけらを、
どんどん袋に、
集めていきました。


ある国で、知り合った、
年配の女性に、
『親孝行の大切さ』を
教えてもらいました。

少年の頭に、
お母さんが、
温かい家で暮らす
映像が浮かびました。

故郷の友達が、
大工さんになっていることを思い出し、
友達に、
お母さんへ、あたたかな家を
建ててもらうように頼むため、
一度、
家がある国に、
戻りました。

そのとき、お母さんが、
自分の畑で作った、
野菜をたくさん使い、
料理を作ってくれました。

どれも、
とてもおいしかったです。

中でも、
少年が気に入ったのは、
山盛りのジャガイモ料理でした。

黄色いトカゲも、
ジャガイモ料理を気に入り、
すごい量を平らげました。

少年は、これが、
旅に出てから、一番の驚きの瞬間でした。



一度、
家に帰り、力をつけた少年は、
イヤな想いのかけらを、
どんどん集めました。

人の中に入った、イヤな想いは、
大きなかけらや、
小さなかけら、
とがった物や、
温度の低い物、
さまざまな、イヤな想いがありました。


とうとう、
最後のひとかけらを、
袋に、回収する日が、
やってきました。

いつものように、
黄色いトカゲが、
イヤな想いが、心の中にある人の
居場所を教え、
少年は、
袋を手にして、
その人が、いま感じているイ
ヤな想いの話してもらいます。

イヤな想いは、
形を変えている場合もありあります。

人の口からは、出てくるものは、

怒り、

悲しみ、

苦しみ、

不安、

そして、妬み。


袋片手に、
少年は、それを
ただただ、受け止めます。

最後のひとかけらも持った女性は、
少年に、話を聞いてもらい、
モヤモヤした心が、
ふわっとしました。

あたりまえです。
心を重くしていたのは、
イヤな想いなのですから。

女性が悪い訳でも、
家族や、
友人が悪いわけでもないのです。

心の中に、
イヤな想いが入っているというだけ。
それだけが、
事実なのですから。

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最後のイヤな想いが、
袋には入った瞬間、
突然、袋がやぶけて、
中から、
今まで少年が集めてきた、
すべてのイヤな想いが
放出されました。

飛び出した衝撃で、
イヤな想いは、かけらより、
もっと小さく、
もっと数多く、
粒子となって、
世界中にまき散らかされてしまいました。


そこに、
四足あし(よんそくあし)の
生き物に乗った、
あの、小さなおじさんが現れました。


少年は、
今起きたことを伝えました。

しばらく考えて、
おじさんは言いました。

「もしかすると、
もともと、人の心に備わっていた妬みが、
外から入ってきた
イヤな想いと結合して、
量が増えてしまったのかな?
怒り、
悲しみ、
苦しみ、
不安、
妬みの中で、妬みだけは、
人間自らも生み出すせるものだからな」

少年は考えた。

人間に、もともとあると説明された、
感情の『妬み』
これが、
人の心にうまれた瞬間、
イヤな想いが、
それに、くっ付くきに来るってことか?

と、言うことは、
自分たちが、感じてしまう、
モヤモヤ、ザワザワした感情とは何か?


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少年が、
自分の頭で一生懸命考えても、
答えが出なそうだと、
あきらめようと決めたとき、

おじさんは、
オーバーオールの胸ポケットから、
新品の袋を出すと、
申し訳なさそうに、
「もう一度、回収してほしい」
と、伝えた。


少年は、
少し考えました。

それは、
大変だから、もう行きたくない
と、いうことではなく、
旅で、出会った人や、
たくさんの出来事を思い出していたからです。

その中で、
少年は、
1つの仮説をたてました。

それは、
人からイヤな想いを
全て取り除いてしまったら、

人の心は、
成長しないのではないか?
と、いうことです。

旅を続け、
心のきれいな少年が見たものは、
次のようなことです。

怒りから、
相手の痛みがわかるようになる。

悲しみから、
優しい心が生まれる。

苦しみから、
希望の光を探し出せる。

不安から、
努力や挑戦する心が育つ。

これらは、
すべて、
人にとっての成長だ。
少年はそう思ったのです。

少年の中では、まだ、
上手く言葉にできない部分もありましたが、
旅での出来事と、
感じたことを、
そのまま、
おじさんに説明しました。


その話を聞き、
おじさんは、しばらく沈黙しました。

おじさんと、
少年と、
黄色いトカゲは、
沈黙の中で、同時に、
こう思ったのです。

『人間は、
いい想いと、
イヤな想いを
両方使わないと、
成長できない生き物なのか』

おじさんは、大発見だと言い、
『イヤな想い』について、
研究してみると言い、
黄色いトカゲと一緒に、
姿を消しました。


つづく 【イヤな想いを味方に、成長できたら、毎日もっと生きやすいですね】


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