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「ポーの一族」を示唆された日。〜あなたは名水に呼ばれているの〜①

旅の時の話。


次の宿は、前日か、その日、気分が向いた時に決めるのだけれど、

ある土地へ行ったときに、平日なのに軒並み宿が満員で、もしくは今日だけやっていない?など謎の展開が続き、唯一空いていたゲストハウスに吸い込まれるように入った日があった。

そんな日は、“会うべき人がいるサイン“。
このゲストハウスを基点として、私が会うべき人がいて、その人と必ず話すことになるのだが、、、。


その日は、その人が待てど暮らせど来なかった。話すべき人は、オーナーか?と思って、訪ねたが、オーナーも明日まで不在だという。

ゲストハウスには私以外に数人いたが、誰とも話すアクシデントも起こらずにその日が終わろうとしていた。

私はずっーーーとその日は、その会うべき“人”とのアクシデントを待っていた。


「おかしい。いつもの設定と違う、、。もう夜になる。おかしい。」


“いつも”と違うことに動揺を隠しきれずに、ひとり、ソワソワしながら外の散歩に出た。実のところ、散歩に出ても、誰とも会わず、人っ子一人おらず、ますます、
この“いつも”ではない設定外の状況に不自然を感じていた。

いつもであれば、午前に1人、午後に1人はでくわしたり、何もないなと思って外に出たら、突然に何かに巻き込まれて、ずぶ濡れになるとか文無しになるとか、そんなことが起こるはずなのに、


何も起こらない。
おかしい。


今日は、おかしいぞ、おかしいぞ、と、思いつつも、なぜか安全に散歩も終了し、
腕組みして、下を向いて、おかしいおかしい、と唱えながら、
また、首を傾げながら、ゲストハウスに帰る際、
一瞬、西の空を見た。

もう、夕暮れの終わりかけだった。



だけど、日も暮れかけた空を見て、何故かその時、まだだ、と思った。

「いや、今日が終わるまでにまだ数時間ある。これからだ・・・。」


お昼も過ぎておやつ時も過ぎ、もう、1日が終わってしまったと思っていたことに、反省する。24時間をフルに使ってくるんだ。(誰が?www)

まだだ。
今日は終わっていない。ゲストハウスへ帰る道すがら、気を引き締める。


そんな無駄によく分からない引き締めをしたものの、道中は何もなく、無事にゲストハウスまで帰ってきた。

なんとまあ、今回は、初の思い過ごしだ。
そんなこともあるもんだ。私の人生に、布石は置かれても、点と点が引かれない、平穏な日もあるのだ。

そう思って、1階のリビングで好きな紅茶でも入れてくつろごうかと、湯を沸かすためヤカンに水を入れた瞬間だった。


「あなた、ここの水は好き?」
「へっ???」


振り返れば、帰ってきた時は、誰もいないと思っていたゲストハウスのリビングに
ショトカット見た目50代くらいの長身のスラリとした女性が立っていた。

「ここの土地の水は、素晴らしい。名水100選にも選ばれているの。知ってた?」
「いえ、存じ上げませんで・・・。」

ここの土地は水に恵まれ、ただ恵まれているだけでなく、その質と量、共に認められた“平成の名水100選“なるものに選ばれているという。

「ところで。あなたは、何しにこの土地へ来たの?私は、親戚に誘われたのよ。」
「あ、私は・・・。」

私は、いつものペラペラと、色んな土地を思いつくままに巡って歩いている人間で、気になったところには何回も何十年単位で訪れて潜っていくタイプの旅人だと伝えた。そして、私が、この前は会社勤めをしていて、自分が旅人だと自覚できないでいたことや、体調不良を起こしたことなど。


とにかく、目下、目的の好きな紅茶を淹れたかったので、ある種、自動的に話せることは話すことで主導権をこちらに持っておきたかった狙いもある。

お決まりの自己紹介と共に、お湯は沸き上がり、紅茶をコップに注ぐと共に、その女性にも、お裾分けして私のターンは終わった。


「ねえ、あなたの話を聞いていて、思い出した漫画があるの。ご存じかしら? 


“ポーの一族”よ。」



萩尾 望都 作品 1972年〜全54話


“ポーの一族”という漫画は、日本文化(マンガ含む)の専攻のくせに知らなかったことは不勉強極まりないが、

“ポーの一族”このセリフを聞いて、紅茶カップを持ちながら私は確信した。


今日、私が朝からずーーーーーーーーっと待っていた人はこの人だと。

夜20時前。
今日この1日が終わる4時間前に、
私は、出会った。

今日のキーパーソンに、だ。


つづく…!

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