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郡上訪問記③〜継承〜


郡上訪問記①②の続きです。
どうぞ〜!

寿司で〆る


昔ながらの引き戸をカラカラと開けたら、
左に4畳くらい座敷、右には6人掛けのL字のカウンター。
木目調の店内は少し薄暗く雰囲気は小料理屋。

カウンターの向こうには80代のおやじさんがねじり鉢巻を頭に巻いて白い作務衣を着て立っている。ここは夜中も寿司を握り続け、店に入れば人数分の寿司屋のあったかい粉茶を着物の女将さんが持って来てくれる。


そんな寿司屋に、

「お前が次の踊りを引っ張っていくんだろう?」

の声が響く、、、。




この日。やっと、私の中の郡上が踊り始めたこの日。(なにそれ)

開始はカフェに入った昼の11時頃からだった。
カフェの定員さんとの会話から、郡上の面白い人に会える兆しが見えた。そこからフラフラしていたら郡上が誇る芸術家と出会い、作品を直近で作ってもらい郡上のアーティスト性に触れた。
そして、民謡リサイタルに向かったら、踊りと共にある"唄"と言うものが、この地にいかに根付いているかを感じた。そこから、美味しい夕食を食べつつ郡上の人がどんな気質なのか聞いたりして、ここのシメは寿司なんだと教えてもらって夜0時。寿司屋に来た。



「お前が次の踊りを引っ張っていくんだろう?」


その声がする方向を向けば、かの仏壇屋さんが居た。
コンパクトな城下町である。夜中といえば行き着く店はみんな同じだった。
仏壇屋さんは、メイン通りにある店の店主2人と計3人でいた。地元の先輩方だという。

「あの方々の後を継ぐのは、お前だろう。」
「俺もそう思うよ。」

仏壇屋さんは、2対1で先輩方に言われていた。
聞けば、私が訪れた2週間前に、郡上踊り(徹夜踊り)の巨匠方が立続けに亡くなったんだそうだ。みんなご高齢であったが、最後の最後まで唄を愛し、踊りを愛し、心の底から郡上を愛していた。

ずっとそこにあるんじゃないかと思っていた、その大きな大きな背中が急に消え、ポッカリと空いた大きな穴、その悲しみとは如何程かと思う。
しかし、生きている人間に残されたことは、ただ前を向いて生き続ける事である。



その状況下で今、その後を継ぐのは、仏壇屋さんだと言っているのだった。



「他に誰がいるんだよ、地元にいてずっとやって来てくれてたのはお前だろ!」
「真剣な話するけど、本当に適任だと思う。」


そんな急な推挙に、仏壇屋さんは困っていた。
「自分は、まだまだそんなんではないから。」


郡上踊りとは、400年の歴史がある。城下町城下町と言っているが、郡上にはお城があり、説はいくつかあるが、遥か昔、江戸の青山から来た敏腕お殿様が郡上来て統治し、「郡上踊り」を始めた。最初は、一向一揆などの町民の鬱憤を踊りや祭りに向けることで晴らす狙いもあったのかもしれない。時は過ぎ、そこから幾度の繋がりを経て、踊りは弔いの意味も伴うようになった。踊りは、近年の戦時中も途絶えることがなかった。資料によれば、第二次世界大戦終戦日の8月15日にも郡上の人たちは踊った。(資料には役人の目を気にしてだろうか“踊ったかも“というような記述だ。)その数日後の、8月17日から22日まで徹夜踊りをして、戦死者を弔った。



我々が、桜といえば春を思い出し出会いと別れを連想するように、郡上の人たちにとって、郡上踊りとは夏を思い出し弔いを連想するのではないか、と思う。


そして、郡上踊りには“保存会”が存在し、郡上踊りをきちんと守り後世に伝える多くの方々がいる。また、全国そして世界から郡上おどりが大好きで夏に集まる方々がいる。



仏壇屋さんは、ここには書ききれない程の、郡上踊りの背景を感じ考え、
先輩が、ビール5本に日本酒3合を飲み真っ直ぐ歩けるのか?ぐらいの、言ってしまえば酔っ払いの戯言にも、真剣に、「自分は、まだまだ。」と答えているのであった。


「まだってなんだよ?」
「あの人(巨匠)も、一人酒で俺の店にきてカウンターで飲んでたけど、あいつ(仏壇屋さん)はよかなってきた、日々精進してるの知ってるから。って言ってカウンターで酒飲んでたんだよ、爺さんは!それでもやらんのかよ!!!」


と言って、立ち上がり、一触即発!殴り合いかと思ったら、先輩と仏壇屋さんが抱き合っていた。

郡上はそんなところである。


私はそんな3人を見ながら、カフェの子とmog mog と美味しい寿司を頬張っていた。
そう、郡上は山間だがなぜか寿司がうまいのである。

そして、人が良いのである。

夜3時、この日が終わった。
正直にいう、長かった。とても楽しかった。

夜中の郡上八幡。





あとで、

郡上踊りは、みんなのもの。
引っ張っていくとか、いかない、とかもないんだ。
とにかく、郡上踊りがみんなで好きなんだ。

という話を聞いた。

郡上の人は、郡上を愛している。




余談だが、次の日は昼過ぎに起きて、近くの神社に参拝しに行った。
神社仏閣巡りが趣味の私は新しい土地に行ったら必ず神社に行く。




実は、最終日はカフェに行く前に神社に行った。
「どうか、この土地と人を教えてください。面白い人たちに会いにきたんです。」と。

帰りはお礼参りに、
「こんなこともあんなことも、あの後あって大変に郡上を満喫しました。ありがとうございました。」

お礼を言って、境内を背に、神社の鳥居をくぐって、すぐ左の軒先に目がいった。

今年の郡上踊りのポスターである。


このポスターのデザインは、私がカフェを出て偶然出会った芸術家・水野政雄先生の作品だ。

そして、この郡上踊りは、私が今回、出会った人々そして郡上の人々、郡上おどりが大好きな人々の想いによって、確実にこの地に継承されている。

「継いてるんだ・・・。」

そう呟いて、顔を上げれば、目線の先には、山の一番高い位置にある郡上城が初夏の太陽に照らされてキラリと輝いて見えた。

郡上踊りポスターと千羽鶴


2023年7月 郡上踊り初参戦!!こちらからどうぞ!郡上市公式観光Twitterも!

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