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安定感がない

安定感がない。ずっとない。なんでこんなに落ち着かないんだろう。

落語研究会の現役メンバーをフォローしているので「策伝大賞」の情報が飛び込んでくる。岐阜で行われる学生落語の全国大会。イメージしづらいかもしれませんが、ちゃんと熱くなれる落語の甲子園的な存在です。前日に大規模な予選があって、そこで勝ち抜いた8名がM-1グランプリよろしく決勝進出する。
策伝ファイナリストは桂文枝さんや立川志の輔さんに審査される。落研の中で全国的な知名度を得るし、なんかチヤホヤしてもらえる。落語会に呼ばれる機会も増えて、なんならモテる。夢があった。

でも僕は策伝大賞にはほとんど出場しませんでした。大学時代の思い出といえば落研しかないうえに、5年も通ったのに。参加したのは最後の一年だけ。出場しなかった理由は色々あったつもりだけど。旅費をケチったのと、勝負したくない・採点されたくない。いわゆる駄サイクルから出たくなかったんだと思う。もう古いですかね駄サイクル。


僕が出場した時は「ちりとてちん」という落語を大会予選用に6分に縮めた。ただ縮めるだけだとパワーダウンする気がしたので、台本を結構いじりました。未熟だから恥ずかしいけどちゃんと覚えてる。最初にサゲ直前を演って、なぜその展開に至ったかを残り5分でメメント方式で解き明かす構成だった。

まず、若旦那がギャーギャー苦しんでのたうち回ってる。「なぜこんなことになっているかと申しますと・・・話は5分前に遡ります!」古典で聞いたことのない入り。時計が逆回りする落語らしからぬ所作。変なことやってんなぁ、というウケが起きたのは覚えています。
くすぐりもちゃんとハマって、さぁ最後のパート。序盤と同様にやるだけで笑いが起きるラッキー伏線回収ゾーンに差し掛かったところで。景色がぐるんと暗くなった。
緊張なのか運動不足なのか、普段の半分以下の時間にもかかわらず息が切れて呼吸がもたなかった。のちに観客に聞いたところ。僕の様子がおかしくなったかと思うと、みるみる顔が赤黒くなっていたらしい。
当人は呼吸困難で死にそうだった。伏線回収なんてできるはずもなく。殺虫剤をかけられた虫みたいにジタバタしてしまい、噺なんてめちゃくちゃになった。ちなみにそこが一番ウケた。ああ恥ずかしい。


こんな感じでずっと安定感がない。策伝大賞に始まったことじゃなく、プロになってからも依然として。M-1やキングオブコントでもぜんぜんブレてしまう。土岡には迷惑をかけている。
先日、お昼の番組「ぽかぽか」(フジテレビ)のお笑いコーナーに出演した時もそうだった。生放送でネタ時間が決まっているのに(自分で決められるのに)尺が大幅に余った。スタジオとお茶の間に気まずい静寂が流れる。最終的に僕が咄嗟に「ディヤアアア!!」と奇声をあげて幕が閉じた。放送事故だろ。

昔、K-PROライブの即興コントコーナーで足を攣ってしまい「ギャァ!!痛い痛い!!!」と舞台上でのたうち回って全部ぶち壊しにしてしまったこともある。


もう、全くハマれない。その場の流れ通りに順応できない。上手くやれない。バキバキ童貞のインタビューだってそうだ。報道の真面目な番組で。「童貞」という言葉を使わないために番組側が苦心して「異性間性交渉未経験者」という文言まで用意したのに。僕がバキバキ童貞です、とカメラ目線で話しちゃった。ずっとぶち壊しなのである。

人間のふりをしているだけ、という気分が常にあります。獣人間が化けて、人里に馴染もうとするけどうまくやれない感じ。人狼だ。すぐに吊し上げられちゃうよ。
早く人間になりたい!そういえば学生時代に一度だけテレビに出たことがあるんだけど、登場BGMが「妖怪人間ベム」だったな。許してないぞ、東京カワイイ⭐︎TV!

身に覚えのない慰謝料にあてます。