「軍拡NO!女たちの会・北海道」声明

2023年3月24日

 「軍拡NO!女たちの会・北海道」は、女性の国会議員比率が先進国最低レベルの日本で、政治に目にみえる形で軍備拡大反対の声を届けるため、結成します。平和への願いを共有する、あらゆるみなさんに賛同を呼びかけます。

1.5年で43兆円、GDP比2%の防衛費増額を盛り込んだ安保3文書の撤回を求めます。

 岸田文雄政権が戦後日本の安全保障政策の大転換をはかり、世界第9位の軍事費を、一気に第3位まで増やそうとしています。歴代政権が憲法違反と答弁してきた「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換えて保有を明記し、2023年度からの防衛費を5年で総額43兆円、国内総生産(GDP)比2%まで防衛費を増やす方針を盛り込んだ安保関連3文書を、国会にはかることも、選挙で民意を問うこともなく昨年12月に閣議決定。23年度政府予算に、防衛費の大幅な増額を盛り込みました。
 アジアへの侵略戦争で国内外3000万人ともいわれる犠牲を出した反省から、歴代政権は憲法9条の解釈として、他国からの攻撃があった場合にかぎり必要最小限度の武力を行使できる「専守防衛」の考え方をとり、「自衛のための必要最小限度の実力」として自衛隊を憲法が禁ずる「戦力」ではなく合憲としてきました。しかし相手国が攻撃をする前、準備に入った段階で、先にミサイル発射拠点などを攻撃する「敵基地攻撃能力」の保有は、憲法の趣旨に反して先制攻撃を容認し、専守防衛の原則を破るものです。世界3位の防衛費はとても「必要最小限度の実力」とはいえず、相手国にさらなる軍拡の口実を与え、アジアの軍事的緊張が一層高まるのは避けられません。さらに限られた財源で、女性、子ども、非正規労働者、ひとり親家庭、障害者、性的マイノリティーなど、社会的経済的に弱い立場に置かれた人たちへの公的支援にしわ寄せがいくのは必至です。私たちは命、暮らし、経済を脅かす軍拡に強く反対します。 

2.自衛隊員の7人に1人は道産子で、自衛隊施設の4割は北海道に集中しています。道内にミサイルを配備し、周辺国との緊張を高めて隊員、道民を危険にさらさないでください。

 この大軍拡に関して、元自衛隊現場トップでさえ「身の丈を超えている」と批判しています(注1)。自衛隊員の出身地別で北海道は全国最多、7人に1人は道産子です(注2)。北海道には全国の自衛隊施設(土地面積)の4割が集中し、米軍の軍事演習にも使われています。「敵基地攻撃」のための新型ミサイル配備が検討されているとの報道もあります(注3)。軍事的緊張が高まれば、道産子隊員、北海道が標的になりかねません。

3.23年度予算で、子ども予算の増額は防衛予算の14分の1です。武器ではなく、物価高や貧困対策、子ども予算を増やし、平和のための産業や技術、人材に投資をしてください。

 23年度予算で、防衛費を1兆4000億円も増やすのに、子ども予算の増額はたった1000億円にとどまっています。「敵基地攻撃」を想定して、米国から巡航ミサイル「トマホーク」400発を買うため2113億円を計上しました。40年ぶりの物価高で国民も企業も苦しんでいるのに、軍拡のために増税し、国の借金である国債を増やして、武器を「爆買い」です。
 日本の子ども・子育て支援に対する公的支出は先進32カ国平均を大きく下回り、教育への公的支出も先進国で最低レベル(注4)。労働者の4割、働く女性の過半数を占める非正規労働者、子ども・子育て支援のための財源議論は手付かずで、大学までの教育無償化、給食費無償化も、3兆円でできると言われながら先送りされています。
 人への分配より、軍拡を優先する岸田政権のやり方は、この国を衰退させ、諸外国に敵を作るだけです。他国に攻められる以前に、暮らしと経済が疲弊してしまいます。軍拡ではなく、外交で平和を模索してください。軍需産業ではなく、平和のための産業や技術、人材に投資してください。私たちの税金を、暮らしと経済、平和を守るために使ってください。

(注1)5年で総額43兆円の規模について、防衛費増額を求めてきた元自衛隊幹部からも批判がでています。海上自衛隊現場トップの自衛艦隊司令官を務めた香田洋二氏は「本当に日本を守るために、現場が最も必要で有効なものを積み上げたものなのか。43兆円という砂糖の山にたかるアリみたいになっていないか」と効果を疑問視しています(22年12月17日付朝日新聞)。

(注2)全国23万人の自衛隊員を本籍地の都道府県別にみると、北海道は最多の3万人超。7人に1人は道内出身者で、2位の福岡県(1万2千人)を大きく引き離しています。一方、人口が北海道の2・6倍いる東京出身の自衛官は9500人しかいません。都市部に比べて就職先が限られる地方の若者にとって、自衛隊は有力な就職先になっています。

(注3)毎日新聞が昨年11月25日、1面トップで伝えたスクープ記事によれば、政府は、島嶼防衛のため、射程を伸ばそうと開発中の地上発射型ミサイルを、南西諸島→富士山周辺→北海道の3段階で配備する検討に入りました。北海道への配備は、射程3000キロ程度の国産ミサイル完成後、2030年代半ばまでを目指し、敵基地攻撃で使う想定といいます。

(注4)経済協力開発機構(OECD)によると、日本の子ども・子育て支援に対する公的支出(2017年)は、GDP比で1・79%と、先進32カ国平均(2・34%)の3分の2程度。子育て支援策で出生率を上げたフランス(3・6%)の半分の水準です。教育機関への公的支出(2019年)は、日本はGDP比2・8%と、データのある加盟37か国中36位。前年は同率最下位で、奨学金返済の負担の重さが指摘されています。

「軍拡NO!女たちの会・北海道」呼びかけ人
(五十音順、19人) 23年3月24日時点                   

雨宮処凛(作家・活動家)
石神博子(戦争への道を許さない女たちの会・札幌)
乾淑子(元東海大学教授)
沖山美喜子(平和憲法を未来へつなぐ会・小樽)
小内ゆい(医師)
影山あさ子(ドキュメンタリー映画監督)
黒岩萌実(教員)
清末愛砂(室蘭工業大学大学院教授、憲法)
佐々木かおり(札幌地域労組)
高崎裕子(弁護士、元参院議員)
竹田桃子(ヴィンテージショップMémoire店主)
田中綾(北海学園大学教授、歌人)
中野葉子(編集者)
七尾寿子(イラク・チョコ募金の会札幌)
西千津(札幌市民)
東由佳子(NPO法人ほっかいどうピース・トレード)
本庄十喜(北海道教育大学准教授、日本現代史)
益子美登里(看護師)
山口たか(戦争させない市民の風・北海道)

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