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展覧会めぐる記録

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自分の書いた記事の中からなんらかの展示にいっためぐりめくる記録 未熟でも
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記事一覧

写真を受けてわたしが生きさせられる

 先日、京都国際写真祭2022の一環として行われている、KG+ SELECTを見に行きました。既に活躍している写真家というより、これから活躍が期待される若手写真家たちの展示でした。  わたしは普段、趣味で写真を撮っているのですが、自分の行為をただ趣味としかとらえていませんでした。写真は自分にとってただの趣味。表現の方法としては考えたことがありませんでした。だから今までも、写真展があっても惹かれたりせず、写真の前を素通りしてきました。だって、写真は、ただ目の前で起こった出来事を

わたしはどこにある?―六甲ミーツ・アート2021

 また今年も六甲ミーツ・アートへ行ってきた。2021年11月14日。今年は去年よりあまり作品数は見ることができなかったけれど、心に残るものがやはりあった。友だち二人とわたしでワイワイ見回った。 山々を泳ぐ方舟 わたしたちは小屋へ誘われる。大通りから外れた小道を抜けたところに小屋がある。看板には「パルナソスの休憩小屋」とある。満月がわらっているその口の中に「パルナソスの休憩小屋」という文字がある。満月はわらっているようで三日月を喰っている。けものだ。  小屋に入るまでも、け

わたしの読む久保田成子と私

 見るってなんだと思いますか。目の前にりんごがあったとして、それを目でとらえたときに、これはりんごだなって思うことでしょうか。それとも、それをりんごだと認識したうえで、このりんごはよく熟していて赤いなあ、などと思うことでしょうか。  先日、国立国際美術館で久保田成子展を観に行きました。少し日をあけてこの記事を書こうとしていて、わたしは何を書こう、と少し迷いながら書きます、書くことと思います。その逡巡の中で、過去を思い出すこと以上に、過去を現在からどう見るのかを、自分の中では

ふたつの宇宙空間をみている

 ピピロッティ・リスト展、わたしはもう行くのをあきらめていたんです。ところが昨日の二限終わり、ふとTwitterを開くとこんなつぶやきがありました。  これを見てわたしは猛烈な行きたいという気持ちに襲われました。平日の昼間から京都に遠出なんて、不安症で電車が苦手なわたしではありえないことです。それでも、行こうと思ったのです。  案の定わたしは地下鉄に乗るのに苦労します。閉鎖空間として地下鉄は最高の空間ではないでしょうか。トンネルに閉じ込められ、さらに電車にも閉じ込められる

コシノヒロコ展でじぶんだけが充満する

 ちょうど先週に兵庫県立美術館で開催されている「コシノ ヒロコ展 EX-VISION TO THE FUTURE 未来へ」を見に行きました。 試行を重ねる わたしはひとつ、強く思ったことがありました。自分には試行が足りない、と。思考ではなく試行です。じっと考えていても、今の自分から何かを発展させることは難しいんじゃないかと思います。だから、手を動かし、試してみる。それが本来の考える姿なのかもしれないなと思ったのです。  ちょうど先日、こんな言葉を見かけたばかりです。  考

【海になれ】東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展に行ったら飛べました

2021年5月12日、神戸市立博物館にて開催されている「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」に行ってきました。元町駅に着き、方向音痴のわたしは長い時間をかけて旧居留地を練り歩きました。あいにくの雨で、わたしは右手に傘、左手にGoogle Mapをひらいたスマホを持って窮屈に歩いていました。ルイヴィトンとPRADAのあいだを通り抜けた先に、神戸市立博物館はありました。 展覧会概要 この展覧会は、東山魁夷が鑑真和上のためにふすまに描いた絵を展示するというものでした。といっても鑑

六甲ミーツ・アート2020行ってきたよ!

2020年10月16日、六甲ミーツ・アート芸術散歩2020に行ってきた。その中から印象深かった作品をピックアップして語っていこうと思う。 コリー・フラー「Lighthouse」 映画館、コンサート……わたしが受ける音はいつも特定の方向から発され、その音の場所が分かるようになっていた。一方でこの、風の塔の中でうなる音たちは一体どこから鳴っているのか。すべての方向から鳴っているようでもあり、またわたし自身が音で、わたしが音を発しているのかもしれないと思わせられる。音に包まれると

はじめての日本画~美しNIPPON展を観て~

 先日、京都駅にある美術館「えき」にて公開されている、水の美術館コレクション「美しNIPPON」展に行ってきた。横山大観や菱田春草、上村松園など、近代日本画の数々の画家による作品が展示されている。 洋画対日本画  そもそもわたしは日本画に興味はあったものの、日本画について特に詳しいわけではなく、日本画とは昔の日本人が描いた絵なのだろう、という理解をしていた。しかしその認識は違っていた。日本画は、西洋の文化が流入してきた時代に、洋画に対するものとしてつけられた名前なのだ。日本