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総合格闘技、ジャンルの成熟とだからこそ期待する日本人選手

はじめに

いつもはフィットネスや健康の話題を書いているこのnote。
しかし僕はもともと10歳の時から現在まで武術・格闘技を学び続けており、プロの世界でキックボクシングの指導者をした過去があり、現在も様々なジャンルの格闘競技者のフィジカルトレーニングを担当しています。
(さらにいうと武術雑誌「秘伝」で1年以上連載をしていたこともあります)

そして今でもジャンルを問わず武術・格闘技のファンで、現場でもそしてネット配信でも観戦をしています。

昨日も仕事の合間に世界のMMA(総合格闘技)の最高峰「UFC」で「 Fight Night」というイベントをネット配信で観戦しました。

それを観て感じたことを書こうと思います。
(それにしても今日 のnote、「スキ」が圧倒的に少ないんだと思うんです。できたら今日こそ「スキ」をしてくださったら、いつもよりもさらに喜びますので、よろしくお願いいたします!)


今日のメインの選手の経歴

昨日のメインイベントは「女子フライ級」のランカー同士の試合。
次期挑戦者決定戦と言っても良い試合でした。
その試合の選手の一人に僕は注目していました。
それが「マノン・フィエロ選手」です。

現在、UFCレコード6連勝中(!)でこの試合以前のランキングではフライ級4位。
今日のメインでは同級3位のエリン・ブランチフィールド選手と戦いました。
僕がマノン・フィエロ選手に注目していたのはその経歴です。

フィエロ選手は少女時代に空手を始め黒帯、空手のフランス全国王者に3回
そしてムエタイは12勝0敗、ムエタイのフランス全国王者に2回
さらにブラジリアン柔術は黒帯

対戦相手のブランチフィールド選手も柔術黒帯で寝業の極めの強い選手です。
しかしこのブランチフィールド選手のタックルには一切付き合わず、カウンターの打撃で距離をとり続けました。
そして時折、自ら距離を詰め、タックルやクリンチを仕掛け、1度はタックルからのテイクダウンを成功させました。

さらにアンマッチスタンス(サウスポーvsオーソドックスのような喧嘩四つ)の鉄則のアウトを取る(オーソドックスの相手の前足である左足の外側に回る)のがうまく、接近して自分の攻撃が終わると後ろに下がるか右に回るので、相手はタックルに行くチャンスすらない。

試合の流れはあえていうなら先日の「RIZIN ランドマーク9」での久保優太 vs. 高橋遼伍での久保優太選手の戦い方に近いかもしれません。

この試合との違いはフィエロ選手の場合、自分からタックルや組みを仕掛けることもあったこと。
これでジャッジの印象も含めて、試合を有利に進めていました。

そして勝ったのはフルマークでフィエロ選手でした。

世界のMMAの現状

もう一度勝ったフィエロ選手の格闘技歴を思い出してください。

少女時代に空手を始め黒帯、空手のフランス全国王者に3回
そしてムエタイは12勝0敗、ムエタイのフランス全国王者に2回
さらにブラジリアン柔術は黒帯

このフィエロ選手だけでなく、現在のUFCでは子供の時から格闘技に取り組んでいたのは当たり前。
特にこれからチャンピオンになろうという選手には格闘エリートと言って良いようなニュースターがゴロゴロいます。

たまに日本でのMMA界では
「ボクシング、キックボクシング どちらが有効か?」
「ブラジリアン柔術は必要か?」

などの議論が起こることがありますが・・・

現在の世界のMMAではそんな議論はあまり起こりません。

打撃では蹴りもパンチもディフェンスも出来て当たり前。
組みから寝業では「レスリング」「柔術」などジャンルに特化せず、必要な全ての技術を持っている。

多くのトップ選手は突出した1ジャンルでの実績があり、MMAの全ての技術ができる上で、自分のバックボーンを活かしたスタイルを磨き上げ、戦っているか、もしくは子供の時からMMAをやるべく「レスリング」「ボクシング」「柔術」などに取り組み、それぞれのジャンルで好成績を残しつつMMAにも取り組んできたか、どちらかのタイプがほとんどです。

だって上記のフィエロ選手は「子供の時に空手を始め」「空手チャンピオンでムエタイでも12戦全勝」な上に「ブラジリアン柔術 黒帯」ですよ!
しかも毎日3部連で練習している。

つまり子供の頃の格闘技経験が無く、ある程度の年齢になってからMMAだけを練習しているのでは勝てない。

成熟した世界のMMAではそれが当たり前の時代になっていると言って良いでしょう。

だからこそ僕は一人の日本人選手に期待し、応援しています!

僕が期待する「スーパーノヴァ」とは?

それがこの平良達郎選手です!

24歳の平良選手はプロとしてのMMAの戦績は15戦15勝0敗、UFCではデビュー以来5連勝中。
現在UFCフライ級ランキング13位。
次戦5月18日にはフライ級9位のティム・エリオットとの戦いを控えています。
当然これに勝てばランキングは9位以上に。
そうなるとタイトルも見えてきます。

僕がなぜ平良選手に注目し、応援しているのか?
それは・・・

平良選手の凄さとは?

なんと言っても中学卒業まで野球少年で格闘技経験がないこと。
高校に入り初めて「パレエストラ沖縄」(現BLACK BELT JAPAN)で松根良太会長の元、MMAを始めたこと。
その後、ボクシングやキックボクシング、レスリングなどを専門のジムに行って出稽古するのではなく、あくまでも沖縄在住のまま、松根良太会長の指導のみで日本国内で「修斗世界チャンピオン」になり、UFCと契約をし、そしてランカーまで上り詰めたこと。

前述の通り、世界のMMAのトップ選手の主流はこんなキャリアではないんです!

いや、日本でも
「アメリカのジムでトレーニングしなければ」
「とにかく東京を練習拠点にしないと」
「ボクシングやレスリングを専門のジムや大学でスキルを磨かないと」
という考え方が主流なのです。

いや、それが間違っているとは全く思いません。
逆にそれが当然だと思っています。

それぐらいMMAも含め、あらゆるスポーツにおいては「技術」「練習内容」「練習環境」が重要だから。
そしてそれらは最新の情報をもとに最善の方法で構築されたものであることで、「勝利の確率」は当然高まるのです。
ましてや常に技術の進歩のスピードが速いMMAではなおさらなのです。

しかし平良選手は・・・
・幼少からの格闘技経験はゼロ
・高校から現在まで一人の師匠のもとでMMAを学ぶ
・沖縄出身で現在も沖縄在住
・MMAジャンル以外の専門ジムでの練習もない
それなのに負けなしでUFCランカーにまで上り詰めたのです。

極めて異例中の異例

それが平良達郎選手なのです。

でも僕はそれを「地方在住でも強くなれる」「子供の頃の格闘技経験が無くても世界のMMAで成功できる」などというつもりはありません。

あくまでも平良達郎選手だから。

平良選手の持つ素質、人間性、人との出会い、運命・・・
全てが一致して起こった一種の奇跡。
だからこそ見たことの無い、そしてこれからも見ることの無いかもしれない唯一無二の景色。

だからこそそれに強く惹かれます。

でもだからと言って平良選手以外の、平良選手のような境遇の選手は成功できないと言っているわけではありません。
逆に決しておきらめず、平良選手を超えてやる!という意気込みと野心を持って、世界のトップを目指してほしいと心から思っています。

そして格闘技ファンとしてだけでなく、トレーナーとしてもそんな選手に出会ってみたいと心から思っています。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!




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