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連載『オスカルな女たち』

《 ギフト 》・・・11

「真実(まこと)には言わなかったけど…。あたし、思い切って幸(ゆき)に『なんで抱かないのか』って聞いたの」
「ほぉ…」
 それは意外な展開だった。夫(=男)のいない真実には、当然なことながらそんな行為を嗜む相手もなければ、離婚して以来男と交わることなど一切なかった。それどころか今では男女の営みを良しとしない自分さえいる。

 旦那がいるかいないかの違いだけで、夜の生活は織瀬(おりせ)とほぼ変わらない。自分にとってその時間がそれほど重要でないように、織瀬にとっても半ば諦めたうえでのカミングアウトだったのだと勝手な解釈をしていた真実には、そこまで話がひっ迫しているとも思っていなかったのだ。
(迂闊だった…)
 自分にその行為が必要ないからといって、他人も同様なわけはなかった。

 ましてや自分には娘がいる10年でも、織瀬には子どもを切望しての10年なのだ。まったく同じわけがない。
頭では解っていたはずだった。
気づかない振りをしていたのだ。

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