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恋愛体質:étude

『カフェテラス』


3.circumstance

「カフェモカどうすんのよ」
「結局奢らされちゃったね」

「慌てちゃってまぁ。まるで彼氏にでも会いに行くようじゃないの」
頬杖を突き、和音かずねの背中を見送る藍禾あいか
「あのバイオリンケースも、お兄さんのプレゼントなんでしょう?」
自分たちの楽器ケースより、明らかにつややかに輝くケースに毒づく結子ゆうこ
「彼氏がいるあたしたちより、はるかにリア充よね」
「なんだかんだ大事にされてるってことだものね~」

「実際さ~。和音に彼氏ができないのって、ブラコンのせいだと思うんだよね」
「え、イケメンなの?」
急に興味を示す結子に、
「イケメンっていうか、強面?」
「怖いけど、モテるってこと?」
「本気で言ってる?」
「違うの?」

「まぁいいわ。イケメンかどうかは置いといて。バイオリン弾いてる時のお兄さんはまぢすごかった」
「すごかった…ってことは、今はかっこ悪いの?」
「もう! 結子。そこからイケメン離れて」
「ごめん、ごめん」

「和音の両親、知ってるよね?」
「お母さんがピアニストで、お父さんがオペラやってるのよね」
「そうよ。だから和音もお兄さんも、小さい頃からピアノとバイオリン、その他をやってたわけ」
「お兄さんも音大出身てこと?」

「それがねー。和音のお兄さん、バイオリンでいいとこまで行ったんだけどさー。遅く来た反抗期っていうか、大学進学で両親と揉めて進学やめちゃったんだよね」
「へぇ~ワイルドー」
「ワイルドどころじゃないでしょ。そのせいで絶縁状態らしい」
「よく知ってるわね」
「中学から一緒だからね。それに、和音の両親。有名だからネット叩けば出てくるし」
「あぁ」

話し始めて止まらなくなった藍禾は、和音の残していったアイスカフェモカを自分の手前に引き寄せ、
「お兄さんが彼女と長続きしないのも、絶対! 和音のせいだと思う」
と、続けた。

「え、和音もお兄さんのデートにくっついていくってこと?」
「もう、結子…。でもまぁそういうこと。お兄さん以上に、お兄さんの彼女に固執するんだよねぇ」
「なにそれ、嫌がらせ?」
「本人は邪魔してる自覚ないみたいだから、なんとも言えないんだけど。多分、さみしさの現れなんじゃないのかな」
「さみしい? お兄さんが離れてるから?」
「それもあるだろうけど。子どもの頃から両親は海外に行くことが多かったし、自分にはお兄さんだけだったじゃない? 放っておかれるのがイヤなんだと思う」
「なるほどねぇ。それにしても、先が思いやられるねぇ」
「そういうこと」



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