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恋愛体質:BBQ

『唯十と友也』


1.minute waltz

「ばーべきゅー?」
グラスを運ぶ友也ともなりの視線を遮るように、クルクルと後を追う唯十ゆいと
「なーに素っ頓狂な声出してんだよ」
「だぁって。ユウヤさんが変なこと言うから」
「なにも変なことは言ってない。BBQに行くって言っただけ」
唯十を避けるようにカウンターに入る。
「だれと!」

ここは、友也が深夜にバーテンダーのバイトをしているBAR。今は開店前で薄暗く、店内は前日の閉店後のまま散らかり放題だ。足元にはたくさんのピーナッツの殻が落ちている。それを踏み鳴らしながら、
「ねぇ、だれと?」
カウンターに手を置いて、しゃがみ込む友也を覗き込むようにして何度もジャンプする。
「ガキかよ。転ぶぞ」
立ち上がり、呆れ顔の友也に、
「だ~か~ら~。だれと?」
「だ・か・ら。最近会ってる女の子たち、、と」
言い放ってすぐにまたカウンターを出る。
「なんで。なんでそこまでする必要あるの」
それを追う唯十は、
「そういう話になったから」
そう言って立ち止まる友也にぶつかりそうになり、のけ反った反動で両手をあげる。ただじっと友也を見据え、次の言葉を待つ。

友也は観念したようにため息をつき、
「こないだ、ファミレスでサギに会ったんだよ」
言いながらテーブルにのっているグラスを、すべるように回収してはまたカウンター内のシンクに向かう。そのあとを子犬のようについて回る唯十。
「サギ? サギってあの、和音かずねのガミガミお兄さん?」
足元の子犬はついに、カウンターから出てくる飼い主の真正面を捉えた。
「ガミガミお兄さん?」
友也は吹き出し、すぐさま唯十を肩で交わして次のグラスを取りにテーブルに向かう。
「おまえ、ホンっと苦手な、サギ」
「苦手っていうか、嫌い…怖い」
再び子犬の追いかけっこが始まる。

「あいつ、そんなに悪いやつじゃない」
友也はシンクにグラスを運び終えると、カウンター越しに唯十を見据える。
「知ってる。けど、ダメ」
「おまえの好きなタイプだろ?」
蛇口を持ち上げ、水を出す。
「それは偏見! 僕はユウヤさんだけ!」
「それも偏見。おまえの偏食」
「はいはい」
「はいはい」

「じゃぁ、お前も来る? BBQ」
それは当然「拒絶」を想定しての言葉だった。
「行く! ひとりくらい増えたって問題ないでしょ」
待ってました…と、満面の笑み。
「マジ、かよ?」
友也は再びため息をつきながら、カウンターにあるダスターを取り上げた。


4.heartbreak   2.relationship



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